今回は令和3年度 電力科目 A問題1を解説します。水力発電所の種類について、落差を得る方法による分類(水路式・ダム式・ダム水路式)と、流量の利用方法による分類(流込み式・調整池式・貯水池式・揚水式)の空欄を補充する問題です。
水力1(令和7年度下期A問題1)と同じテーマの再出題ですが、空欄の位置と正解の記述が異なります(今回の(ウ)は「建設費が安い」)。分類の2軸と、流込み式=自然流・調整池式=1日〜数日・貯水池式=長期間、の区別が要点です。
令和3年度 電力科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題1
電験3種 電力科目 【水力】 令和3年度 A問題1
次の文章は、水力発電所の種類に関する記述である。水力発電所は(ア)を得る方法により分類すると、水路式、ダム式、ダム水路式があり、(イ)の利用方法により分類すると、流込み式、調整池式、貯水池式、揚水式がある。一般的に、水路式はダム式、ダム水路式に比べ(ウ)。貯水ができないので発生電力の調整には適さない。ダム式発電では、ダムに水を蓄えることで(イ)の調整ができるので、電力需要が大きいときにあわせて運転することができる。河川の自然の流れをそのまま利用して発電する方式を(エ)発電という。貯水池などを持たない水路式発電所がこれに相当する。1日又は数日程度の河川流量を調整できる大きさを持つ池を持ち、電力需要が小さいときにその池に蓄え、電力需要が大きいときに放流して発電する方式を(オ)発電という。自然の湖や人工の湖などを用いてもっと長期間の需要変動に応じて河川流量を調整・使用する方式を貯水池式発電という。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 落差 流速 建設期間が長い 調整池式 ダム式 (2) 流速 落差 建設期間が短い 調整池式 ダム式 (3) 落差 流量 高落差を得にくい 流込み式 揚水式 (4) 流量 落差 建設費が高い 流込み式 調整池式 (5) 落差 流量 建設費が安い 流込み式 調整池式
出題のポイント:落差の得方と流量の使い方を分ける

水力発電所は、落差を得る方法では水路式・ダム式・ダム水路式に、流量の利用方法では流込み式・調整池式・貯水池式・揚水式に分類します。本問は水路式の建設費が安いこと、自然流を使う流込み式、1日〜数日を調整する調整池式を対応させると(5)です。
流量の使い方で4つに分かれる

本問の(エ)(オ)は、調整できる期間の長さで並んでいます——階段として覚えると混乱しません。
| 方式 | 調整できる期間 | 設備 | 出力の調整 |
| ★流込み式 | ★なし | 貯水池を持たない | ★できない(自然任せ) |
| ★調整池式 | ★1日〜数日 | 小さな池 | 日内のピークに合わせられる |
| 貯水池式 | ★季節単位 | 大きな貯水池 | 渇水期に備えられる |
| 揚水式 | 汲み上げ次第 | 上池と下池 | ★需要に応じて自在 |
下へ行くほど調整の自由度が上がり、そのぶん設備も大きくなります——流込み式は池を持たないので最も簡素。そのかわり川が増えれば余り、減れば足りないことになります。
問題文の「1日又は数日程度」=調整池式、「もっと長期間」=貯水池式——期間の言葉がそのまま手がかりになります。
(ウ) 水路式は建設費が安い
本問が問うているのは、水路式の経済的な特徴です——大規模なダムを造らないのが理由になります。
| ★水路式 | ダム式 | |
| ダム | ★小規模(取水堰) | ★大規模 |
| 建設費 | ★安い | 高い |
| 水没する土地 | ★少ない | 多い |
| 落差 | 得にくい | ★大きく取れる |
| 出力調整 | ★不向き | 可能 |
ダムは巨大なコンクリート構造物——建設費の大半を占めます。さらに水没する土地の補償も必要になります。
水路式なら、取水用の小さな堰と導水路だけ——費用も環境への影響も小さく済むのです。小水力発電が水路式を採るのは、この手軽さのためでもあります。
その代わり貯水できないので、出力を調整できません——問題文も「貯水ができないので発生電力の調整には適さない」と続けています。安さと引き換えの制約だと言えます。
⚠️ よくある間違い
令和7年度下期のほぼ同一問題と混同する——空欄の位置も正解の語句も違います。
| ★令和3年度(本問) | 令和7年度下期 | |
| 水路式について問う欄 | ★(ウ) | ★(エ) |
| 正解の語句 | ★建設費が安い | ★高落差を得にくい |
| 答え | ★(5) | ★(3) |
どちらも水路式の正しい特徴——選択肢に用意されているほうを選ぶことになります。「建設費が安い」も「高落差を得にくい」も、両方とも正しいと覚えておけば、どちらが出ても対応できます。
逆に「建設期間が長い」「建設費が高い」は誤り——ダムを造らないぶん、期間も費用も小さいのです。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)落差/(イ)流量。2軸を取り違えない。
②(エ)(オ) 調整期間で並べる:なし→1日〜数日→季節。
③(ウ)★水路式はダムを造らないので建設費が安い。
④★令和7年度下期は同じ問題だが正解の語句が違う。
💡 覚え方
「調整期間の階段」——流込み式(なし)→調整池式(1日〜数日)→貯水池式(季節)。そして「水路式は安いが落差を稼げない」——2つの特徴をセットで覚えておきましょう。
ほぼ同じ問題が令和7年度下期 A問題1にあります(水力:水力発電所の種類)。
電力系統の中での水力の役割
調整のしやすさは、そのまま系統での役割を決めます——1日の需要変化に、どの電源が応じるかという話です。
| 区分 | 担う電源 | 運転 |
| ベース | ★原子力・流込み式水力・地熱 | ★一定出力で運転し続ける |
| ミドル | 火力(LNG・石炭) | 日中の増加に対応 |
| ★ピーク | ★貯水池式・調整池式水力・揚水 | ★短時間だけ全力運転 |
流込み式は調整できないので、ベース電源——川が流れている限り出しっぱなしにします。止めても水は流れていくだけで、何の得にもならないからです。
調整池式・貯水池式はピーク電源——夜のうちに水を溜め、昼のピークに一気に放流するのです。
水力の強みは、起動から全負荷まで数分——火力の数十分〜数時間に比べて圧倒的に速い。だから急な需要増や事故時の予備力として重宝されます。
同じ水量でも価値が違う
調整できるかどうかで、発電した電気の価値も変わります——需要が少ない深夜の電気より、ピーク時の電気のほうが価値が高いのです。
調整池を持つだけで、同じ水量から得られる収益が上がる——建設費をかけてでも池を造る意味がここにあります。
空欄の絞り込み手順
5つの空欄がありますが、2つで確定します。
| 確定させる欄 | 正しい語 | 残る選択肢 |
| (イ) | 流量 | ★(2)(4)(5) |
| (ウ) | 建設費が安い | ★(5)に確定 |
(イ)は「流込み式、調整池式、貯水池式」の分類軸——いつ流すかの話ですから流量です。「流速」「水量の変化」では分類になりません。
(ウ)は水路式の特徴——大規模なダムを造らないので建設費が安い。「建設費が高い」「建設期間が長い」は逆ですから、2手で確定します。
(エ)(オ)は調整期間で判断
(エ)は「貯水ができない」——池を持たない流込み式です。
(オ)は「1日又は数日」——調整池式。この2つは階段の順番どおりに並んでいるので、片方が分かればもう片方も決まります。
穴埋め問題は、全部の欄を埋めようとしないこと——確信のある2欄で選択肢を絞り、残りは検算に使うのが速い解き方です。
流込み式が選ばれる場面
調整できないという欠点があっても、流込み式は数のうえで最多です——それなりの理由があります。
| 条件 | 流込み式が向く理由 |
| ★年間を通じて流量が安定 | ★調整する必要がそもそもない |
| 用地が取れない | 池を造る場所がなくても建設できる |
| ★小規模 | ★池の建設費が出力に見合わない |
| 農業用水・上下水道 | 流量が決まっていて調整できない |
小水力発電はほぼすべて流込み式——数百 kW の発電所に調整池を造っても、費用を回収できないからです。
また既存の水路を使う場合、流量は元の用途で決まっています——発電の都合で増減させるわけにいかないのです。
設備利用率で見る
流込み式は50〜60 % 前後と高め——出しっぱなしだからです。
逆に揚水式は数 % しかありません——ピークの数時間しか動かさないからです。利用率が低いことは欠点ではなく、役割の違いを表しています。
調整池式・貯水池式も、利用率で見れば流込み式より低くなります——溜めている間は発電していないからです。それでも価値が高いのは、出したいときに出せるから——電力量ではなく、供給力として評価されるのです。
まとめ

| (ア) | 落差(水路式/ダム式/ダム水路式) |
| (イ) | 流量(流込み/調整池/貯水池/揚水) |
| (ウ) | 水路式はダム不要で建設費が安い |
| (エ) | 流込み式(自然流) |
| (オ) | 調整池式(1日〜数日)→(5) |
▼あわせて解きたい関連問題
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