今回は平成22年度 電力科目 A問題11、地中電力ケーブルの送電容量を増大させる方法の誤り選択問題です。冷却・材料・導体サイズという現実的な対策の中に、物理的にあり得ない方法が紛れ込んでいます。
送電容量(許容電流)を上げる王道は「冷やす・耐える・太くする」:水冷管による間接冷却、OFケーブルの絶縁油循環冷却、耐熱絶縁材料、導体の大サイズ化。しかしCVケーブルの絶縁体(架橋ポリエチレン)の中に冷却水を流すことはできません——固体絶縁体に水路はなく、そもそも水分はXLPEの水トリー劣化の天敵(cb2)です。
平成22年度 電力科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題11
電験3種 電力科目 【地中送電】 平成22年度 A問題11
地中電力ケーブルの送電容量を増大させる現実的な方法に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。
(1) 耐熱性を高めた絶縁材料を採用する。
(2) 地中ケーブル線路に沿って布設した水冷管に冷却水を循環させ、ケーブルを間接的に冷却する。
(3) OFケーブルの絶縁油を循環・冷却させる。
(4) CVケーブルの絶縁体中に冷却水を循環させる。
(5) 導体サイズを大きくする。

誤りは(4):CVの絶縁体に水は通せない
「CVケーブルの絶縁体中に冷却水を循環させる」——固体なので通り道がありません。
| ★OFケーブル | ★CVケーブル | |
| ★絶縁体 | ★★絶縁紙+絶縁油(液体を含む) | ★★架橋ポリエチレン(固体) |
| ★油通路 | ★★もともとある | ★★ない |
| ★内部を流す冷却 | ★★油を循環できる | ★★できない |
OFケーブルには、もともと油の通路があります——だから油を循環させて冷やせるのです。
CVケーブルの絶縁体は、すきまのない固体です——そこに水を通す道はありません。
しかも水は絶縁体の大敵——水トリー劣化を招きます。
だから絶縁体の中に水を通すことは、そもそもあり得ません——(3)のOFの油循環と対比させた引っかけです。
送電容量を増やす4つの道すじ
| 方向 | 方法 | 本問の選択肢 |
| ★発熱を減らす | ★★導体を太くして抵抗を下げる | ★(5) |
| ★熱を逃がす | ★★水冷管でケーブルを間接冷却する | ★(2) |
| ★内部から冷やす | ★★OFの絶縁油を循環・冷却する | ★(3) |
| ★耐えられる温度を上げる | ★★耐熱性の高い絶縁材料を使う | ★(1) |
許容電流は、温度が上限に達するまでの電流です——だから発熱・放熱・上限温度の3つで決まる。
発熱を減らすか、熱を逃がすか、上限を上げるか——やれることはこの3方向です。
4つの正しい選択肢が、それぞれに対応しています——よく組まれた問題。
誤りの(4)だけが、物理的に成り立ちません——方向としては正しくても方法が不可能なのです。
(2) 水冷管による間接冷却
| 項目 | 内容 |
| ★方法 | ★★ケーブルに沿って水冷管を布設し水を循環させる |
| ★効果 | ★★周囲の熱抵抗を実質的に下げる |
| ★増える容量 | ★★1.2〜1.5倍程度 |
| ★短所 | ★★ポンプなどの設備と動力が要る |
ケーブルの外側から熱を奪う方法です——絶縁体には触れません。
だからCVケーブルでも使えます——(4)との違いはそこです。
すでに布設されている線路の容量を増やせるのが利点——ケーブルを替えずに済むから。
ただし常に水を回す動力が要ります——その分の費用がかかることになります。
⚠️ よくある間違い
(4)を(3)と似ているので正しいと判断する——OFは液体を含み、CVは固体です。通り道の有無が決定的に違います。
水は絶縁体の大敵でもあります——水トリー劣化を招くから。
(1)の耐熱材料を疑ってしまう——上限温度が上がれば容量も増えます。
(2)の水冷管を疑ってしまう——外側から冷やすので問題ありません。
(5)の導体サイズを疑ってしまう——最も基本的な方法です。
「現実的な方法」と問われている——物理的に不可能なものを探します。
⏱️ 本番での進め方
①★CVの絶縁体は固体なので内部に水を通せない。
②★OFには油通路があるので油を循環できる。
③★容量を増やすのは発熱減・放熱増・上限温度増の3方向。
④★水冷管は外側からの間接冷却なのでCVでも使える。
💡 覚え方
「OFは液体、CVは固体」——通り道があるかどうかで決まります。外から冷やすのは可、中に通すのはOFだけ——そこが(2)と(4)の分かれ目です。
ケーブルの種類は平成30年度 A問題11(地中送電:電力ケーブル)にあります。
(1) 耐熱性を高めるという方向
上限温度そのものを上げる方法です。
| 絶縁体 | 常時許容温度 | 短時間許容温度 |
| ★ポリエチレン | ★70 ℃ | ★★— |
| ★油浸紙(OF) | ★80 ℃ 程度 | ★— |
| ★★架橋ポリエチレン | ★★90 ℃ | ★★短絡時230 ℃ |
許容温度が上がれば、そのぶん電流を流せます——材料を変えるだけで容量が増えるのです。
ポリエチレンから架橋ポリエチレンへの変更が、その実例——70 ℃ から90 ℃ へ。
短絡時には一瞬なので、230 ℃ まで許されます——時間が短いからです。
だから(1)は「現実的な方法」として正しい——実際に行われてきた改良になります。
(3) OFケーブルの油を循環させる
絶縁油が冷却材にもなります。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★導体の熱が絶縁油に伝わる |
| ★② | ★★ポンプで油を循環させる |
| ★③ | ★★外部の冷却器で油を冷やす |
| ★④ | ★冷えた油が戻って導体を冷やす |
油通路がもともとあるので、循環させられます——設備を足すだけで済むのです。
内側から直接冷やすので、効果が大きい——外から冷やすより効率がよい。
変圧器の送油風冷式と同じ考え方——油を運び役に使います。
これはOFケーブルだからできること——CVには真似できません。
(5) 導体サイズを大きくする限界
最も基本的な方法ですが、限界もあります。
| 項目 | 太くすると |
| ★直流抵抗 | ★★断面積に反比例して下がる |
| ★表皮効果 | ★★強くなり、中心が使われなくなる |
| ★交流実効抵抗 | ★★期待ほど下がらない |
| ★重量と価格 | ★★増える |
太くすれば直流抵抗は確実に下がります——だから「現実的な方法」ではあるのです。
けれども表皮効果が強まるので、効果は頭打ちになります——2倍太くしても半分にはならない。
だから大容量では分割導体や素線絶縁導体を使います——表皮効果を抑える工夫です。
それでも導体サイズは最初に検討される方法——(5)は正しい記述になります。
送電容量を決めるのは温度
すべての方法が、温度に行き着きます。
| 決まり方 | 内容 |
| ★上限 | ★★絶縁体の最高許容温度(CVなら90 ℃) |
| ★温度上昇 | ★★発生損失×熱抵抗 |
| ★出発点 | ★周囲温度(土中温度) |
周囲温度に温度上昇を足したものが、導体温度です——それが上限を超えないようにします。
だから発熱を減らすか、熱抵抗を下げるか、上限を上げるか——やれることはこの3つです。
本問の4つの正しい選択肢が、すべてここに収まります——だから体系立てて覚えられるのです。
誤りの選択肢だけが、物理的に成り立たない方法——方向は正しくても実現できません。
冷却方式の比べ方
どこから冷やすかで、効果も費用も変わります。
| 方式 | 冷やす場所 | 使えるケーブル | 効果 |
| ★水冷管による間接冷却 | ★★ケーブルの外側 | ★★CVもOFも | ★1.2〜1.5倍 |
| ★絶縁油の循環冷却 | ★★ケーブルの内側 | ★★OFのみ | ★★より大きい |
| ★強制風冷(暗きょ内) | ★洞道の空気 | ★★暗きょ式のみ | ★中程度 |
内側から冷やすほうが効果は大きくなります——熱源に近いから。
けれども油通路がなければできません——だからOFに限られるのです。
外側からの冷却なら、どのケーブルにも使えます——汎用性があるのが利点です。
暗きょ式なら、換気を強めるだけでも効果があります——空気を動かせば熱が運ばれるのです。
まとめ
| 誤り | (4) CVの絶縁体中に冷却水は循環できない |
| OF | 絶縁油を循環・冷却できる(油通路あり)(3) |
| 間接冷却 | 線路沿いの水冷管はOK(2) |
| 材料・サイズ | 耐熱絶縁材料(1)・導体大サイズ化(5) |
| 水トリー | 水分はXLPE劣化の原因——遮水層で対策 |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・水トリーと遮水層(地中送電2):【電力】令和7年度上期 A問題10
・許容電流の増やし方(地中送電10):【電力】令和3年度 A問題11

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