今回は平成19年度 電力科目 A問題6、ガス絶縁開閉装置(GIS)の特徴を問う誤り選択問題です。GISは令和7年度上期(変電1)・令和6年度上期(変電5)・平成24年度(変電32)と繰り返し出題される変電の超頻出テーマです。
GISのイメージは「SF₆ガス入りの金属容器に主要機器をまるごと密閉収納」。だから小形化できる・塩害や塵埃に強い。さらに工場でユニットごとに組み立てて現地へ運ぶので、据付工期は短い——ここを「長い」とひっくり返すのが本問の引っかけです。
平成19年度 電力科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題6
電験3種 電力科目 【変電】 平成19年度 A問題6
ガス絶縁開閉装置に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。
(1) 金属製容器に遮断器、断路器、避雷器、変流器、母線、接地装置等の機器を収納し、絶縁ガスを充填した装置である。
(2) ガス絶縁開閉装置に充填する絶縁ガスは、六ふっ化硫黄(SF₆)ガス等が使用される。
(3) 開閉装置が絶縁ガス中に密閉されているため、塩害、塵埃等外部の影響を受けにくい。
(4) ガス絶縁開閉装置はコンパクトに製作でき、変電設備の縮小化が図られる。
(5) 現地の据え付作業後にすべての絶縁ガスの充填を行い、充填後は絶縁試験、動作試験等を実施するため、据え付作業工期は長くなる。

誤りは(5):据付工期はむしろ短い
「現地の据え付作業後にすべての絶縁ガスの充填を行い」——実際の手順と違います。
| ★気中絶縁の変電所 | ★GIS | |
| ★組立の場所 | ★現地で1台ずつ据え付ける | ★工場でユニットに組み立てる |
| ★輸送 | ★機器ごとにばらして運ぶ | ★ガスを封入したまま運ぶ |
| ★現地作業 | ★据付・配線・調整が多い | ★ユニットどうしの接続だけ |
| ★工期 | ★長い | ★★短い |
GISは工場で組み立てて試験まで済ませます——現地では並べてつなぐだけです。
ガスも工場で封入した状態のまま運びます——現地ですべて充填するわけではありません。
現地で開ける部分が少ないほど、金属異物の混入も防げます——品質の面でも有利になります。
だから据付工期は短くなる——それがGISの利点の1つです。
(1) GISに納まる機器
| 機器 | 働き |
| ★遮断器 | ★負荷電流・故障電流を遮断する |
| ★断路器 | ★無電流で確実に切り離す |
| ★避雷器 | ★過電圧を大地へ逃がす |
| ★変流器 | ★電流を検出して継電器へ送る |
| ★接地装置 | ★点検時に確実に接地する |
| ★母線 | ★各回線をつなぐ導体 |
変電所に必要な機器がひととおり納まります——だから「開閉装置」という総称です。
1本の金属管に連なって配置される——それがコンパクトさの源になります。
接地装置は、点検する人の安全を守る機器——残留電荷を大地へ逃がします。
(3)(4) 密閉と小形化がもたらすもの
GISの利点は、この2点からすべて導けます。
| 原因 | 結果 |
| ★密閉している | ★塩害・塵埃の影響を受けない((3)) |
| ★密閉している | ★充電部に触れられず安全 |
| ★絶縁性能が高い | ★充電部を近づけられコンパクト((4)) |
| ★工場で完成させられる | ★★据付工期が短い((5)の逆) |
密閉と小形化が、そのまま4つの利点になっています。
唯一の短所は、内部事故時の復旧に時間がかかること——中が見えないからです。
本問はその短所を「据付工期」にすり替えています——復旧と据付を混同させる作りになっています。
⚠️ よくある間違い
(5)を「工期が長いのは短所だから正しい」と判断する——長いのは復旧時間であって据付工期ではありません。
GISは工場完成品なので、現地作業は短い——そこが逆になっています。
(1)の機器の並びを疑ってしまう——いずれも実際に納まる機器です。
(2)の「SF6ガス等」を疑ってしまう——「等」とあるので混合ガスも含みます。
(3)(4)はGISの代表的な利点——疑う必要はありません。
4つが利点で1つだけ短所らしく書かれている——その1つが本当に短所かを確かめるのが解き方です。
⏱️ 本番での進め方
①★GISは工場でユニット化するので据付工期は短い。
②★長いのは内部事故時の復旧時間。据付ではない。
③現地で開ける部分が少ないほど異物混入も防げる。
④密閉と小形化から、利点がすべて導ける。
💡 覚え方
「建てるのは早い、直すのは遅い」——GISの工期はこの2つで正反対です。据付は工場完成品だから短く、復旧は開けるのが大変だから長い——混同させるのが本問の狙いになります。
GISの信頼性と復旧時間は令和6年度上期 A問題6(変電:ガス絶縁開閉装置)にあります。
ユニット輸送という考え方
(5)を判断する鍵は、GISがどう作られるかにあります。
| 段階 | 場所 | やること |
| ★① | ★工場 | ★機器を金属容器に組み込む |
| ★② | ★工場 | ★耐圧試験・動作試験を済ませる |
| ★③ | ★工場 | ★ガスまたは乾燥空気を封入して密閉 |
| ★④ | ★現地 | ★ユニットどうしを接続する |
| ★⑤ | ★現地 | ★接続部だけガスを充填し確認試験 |
試験の大部分は工場で終わっています——現地では接続部の確認だけです。
気中絶縁なら、機器を1台ずつ据え付けて配線し、すべて現地で試験します——時間がかかるのです。
だからGISのほうが据付工期は短い——問題文(5)の記述が誤りである理由になります。
工期が短いことの価値
変電所の建設中は、その分の供給力が使えません。
工期が短ければ、早く運用を始められる——投資の回収も早いのです。
都市部では工事車両や騒音の影響も抑えられます——近隣への負担が減ることになります。
要点をもう一度
4つが利点で、1つだけが短所らしく書かれています。
| 記述 | 内容 | 正誤 |
| (1) | 納まる機器の列挙 | 正 |
| (2) | 絶縁ガスはSF6等 | 正 |
| (3) | 塩害・塵埃に強い | 正 |
| (4) | コンパクトで縮小化 | 正 |
| ★(5) | ★据付工期が長くなる | ★誤(短い) |
その1つが本当に短所かを確かめるのが解き方——GISの短所は復旧時間であって据付工期ではありません。
GISの短所を正しく挙げる
| 短所 | 理由 |
| ★内部事故の復旧が遅い | ★中が見えずガスを抜く必要がある |
| ★金属異物に弱い | ★微小な片でも電界集中を起こす |
| ★SF6の環境負荷 | ★温暖化係数がCO₂の約23,900倍 |
| ★初期費用が高い | ★製造に精度が要る |
据付工期はこの中に含まれません——むしろ短いことが利点です。
短所を正しく覚えておけば、すり替えに気づけます。
GISが普及した背景
(4)の縮小化が、どれほどの意味を持つか見ましょう。
| 電圧 | 気中絶縁の所要面積 | GISの所要面積 |
| ★66 kV | ★基準 | ★約30 % |
| ★275 kV | ★基準 | ★約15 % |
| ★500 kV | ★基準 | ★約10 % |
電圧が高いほど、縮小の効果が大きくなります——気中では離隔距離が電圧に比例して要るからです。
500 kV の気中変電所には、東京ドーム数個分の用地が必要——都市近郊では確保できません。
GISなら10分の1で済む——需要地の近くに置けることになります。
1970年代から急速に普及したのは、この用地問題が理由——日本は特に用地が限られているのです。
絶縁ガスに「等」が付く理由
(2)が「六ふっ化硫黄(SF6)ガス等」と書いています。
| ガス | 使われ方 | 理由 |
| ★SF6単体 | ★最も一般的 | ★絶縁も消弧も優れる |
| ★SF6と窒素の混合 | ★絶縁だけの部分 | ★SF6の使用量を減らせる |
| ★乾燥空気 | ★母線など絶縁専用の区画 | ★温室効果がない |
SF6は液化温度が高いという弱点もあります——寒冷地では低温で液化する恐れがあるのです。
窒素を混ぜれば液化しにくくなります——絶縁耐力はやや下がりますが実用範囲。
だから「等」という書き方になっている——SF6だけとは限らないのです。
近年は環境面から、混合や代替の採用が広がっています——出題当時より選択肢が増えました。
まとめ
| 誤り | (5) 据付工期は長くなる→工場ユニット組立で短くなる |
| 構成 | 金属容器+SF₆+遮断器・断路器・避雷器・CT・母線等(1)(2) |
| 強み | 密閉→塩害・塵埃に強い(3)、小形化(4) |
| 弱み | 内部事故の復旧に時間・SF₆は温室効果大 |
| 答え | (5) |
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