今回は令和6年度上期 電力科目 A問題6、ガス絶縁開閉装置(GIS)の空欄補充問題です。GISは変電ユニットの常連テーマ——この年は「長所3つ+弱点1つ」の構成で出題されました。
落とし穴は(エ)。コンパクト・安全・高信頼と長所が並んだあとに「内部事故時の復旧時間」と来たら、答えは長い——密閉された金属容器の中のガスを回収してから分解点検するため、気中絶縁より復旧に時間がかかるのがGISの弱点です。
出題のポイント:GISの密閉構造と復旧時間

GISはSF₆ガスを充填した金属容器内に機器を収め、エポキシ樹脂スペーサで充電部を支持します。密閉により信頼性は高い一方、内部事故時の復旧時間は長くなります。
令和6年度上期 電力科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題6
電験3種 電力科目 【変電】 令和6年度上期 A問題6
次の文章は、ガス絶縁開閉装置(GIS)に関する記述である。
ガス絶縁開閉装置(GIS)は、金属容器に遮断器、断路器、母線などを収納し、絶縁耐力及び消弧能力の優れた(ア)を充填したもので、充電部を支持するスペーサなどの絶縁物には、主に(イ)が用いられる。また、気中絶縁の設備に比べてGISには次のような特徴がある。
① コンパクトである。
② 充電部が密閉されており、安全性が高い。
③ 大気中の汚染物等の影響を受けないため、信頼性が(ウ)。
④ 内部事故時の復旧時間が(エ)。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) SF6ガス エポキシ樹脂 低い 短い (2) SF6ガス エポキシ樹脂 高い 長い (3) 窒素ガス 磁器がいし 低い 長い (4) 窒素ガス エポキシ樹脂 高い 短い (5) SF6ガス 磁器がいし 高い 短い
GISは密閉だから強く、復旧は長い

本問の要点は、長所と短所が同じ原因から生じることです。
| 密閉していることの | 結果 | 評価 |
| ★汚染物が入らない | ★塩害・粉じんの影響を受けない | ★信頼性が高い |
| ★中が見えない | ★事故箇所の特定に時間がかかる | ★復旧時間が長い |
| ★ガスを封入している | ★開けるにはガスを回収する必要がある | ★復旧時間が長い |
密閉が信頼性を生み、同じ密閉が復旧を難しくする——表裏一体です。
だから(ウ)は「高い」、(エ)は「長い」——両方とも密閉から導けます。
気中絶縁なら、目視で焼損箇所が分かり、その場で直せます——GISではそうはいきません。
復旧に数日から数週間かかることもある——だから予備の区分や二重化で備えます。
GISの4つの空欄を埋める

充電部を金属容器の中央に支える絶縁物です。
| 求められる性質 | エポキシ樹脂は | 磁器がいしは |
| ★絶縁性能 | ★高い | ★高い |
| ★成形の自由度 | ★型に流して自由な形に | ★形が限られる |
| ★気密性 | ★金属と一体成形できる | ★接合部が必要 |
| ★重量 | ★軽い | ★重い |
スペーサはガス区画を仕切る役目も持ちます——気密性が不可欠です。
エポキシ樹脂なら、金属の埋込金具と一体で成形できます——すき間ができません。
磁器がいしは屋外の支持には優れますが、気密を保つ内部部品には向きません。
問題文の「スペーサなどの絶縁物」という書き方——絶縁と気密の両方を担う部品を指しています。
(ア) SF6ガスが選ばれる2つの理由
問題文が「絶縁耐力及び消弧能力の優れた」と書いています。
| 性質 | SF6 | 窒素 |
| ★絶縁耐力 | ★空気の約3倍 | ★空気とほぼ同じ |
| ★消弧能力 | ★空気の約100倍 | ★空気とほぼ同じ |
| ★温室効果 | ★CO₂の約23,900倍 | ★ない |
窒素も不活性ですが、絶縁も消弧も空気並み——GISには使えません。
SF6分子はふっ素が電子を捕らえるので、放電が発達しません——それが絶縁耐力と消弧能力の源です。
その代わり温室効果が大きい——環境面が唯一の弱点になります。
近年は窒素との混合ガスや代替ガスの研究が進んでいます——脱SF6の動きです。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「窒素ガス」としてしまう——選択肢(3)(4)がそれです。窒素は絶縁も消弧も空気並み。
(イ)を「磁器がいし」としてしまう——選択肢(3)(5)。気密性と成形の自由度でエポキシ樹脂です。
(ウ)を「低い」としてしまう——選択肢(1)(3)。汚染物の影響を受けないので信頼性は高い。
(エ)を「短い」としてしまう——選択肢(1)(4)(5)。密閉されているので復旧は長いのです。
(ウ)を「高い」と正しく答えた勢いで(エ)も「短い」としてしまう——長所が並ぶと最後も長所だと思い込みます。
(エ)だけで(2)に確定できます。
⏱️ 本番での進め方
①★密閉だから信頼性が高く、密閉だから復旧が長い。
②★長所が並ぶ中に短所が1つ紛れている。
③★スペーサはエポキシ樹脂。気密性と成形性から。
④窒素は絶縁も消弧も空気並みで使えない。
💡 覚え方
「入らないから強い、開けられないから遅い」——同じ密閉が両方を生みます。①〜③が長所なので④も長所だと思い込む——そこを突いた出題です。
GISの基本は平成24年度 A問題6(変電:ガス絶縁開閉装置)、ガス圧と金属異物は令和7年度上期 A問題6(変電:ガス絶縁開閉装置)にあります。
GISの内部構成
(ア)のガスを充填した容器に、何が納まっているか見ましょう。
| 機器 | 働き |
| ★遮断器 | ★負荷電流・故障電流を遮断する |
| ★断路器 | ★無電流で確実に切り離す |
| ★接地開閉器 | ★点検時に確実に接地する |
| ★母線 | ★各回線をつなぐ導体 |
| ★変流器・計器用変圧器 | ★電流・電圧を検出する |
これらが1つの金属容器に連なって納まります——だからコンパクトなのです。
接地開閉器は、点検する人の安全を守る機器——残留電荷を大地へ逃がします。
ガス区画という考え方
容器全体を1つの空間にはしません。
| 区画を分ける理由 | 内容 |
| ★事故の波及防止 | ★1区画の事故が他へ広がらない |
| ★保守の効率 | ★点検する区画だけガスを抜けばよい |
| ★ガス量の削減 | ★回収する量が減る |
区画を仕切るのがスペーサ——絶縁と気密の両方を担います。
区画が細かいほど復旧は早くなりますが、部品は増える——そのつり合いで設計されます。
要点をもう一度
①〜④のうち、④だけが短所です。
| 空欄 | 答え | 誤答の型 |
| (ア) | ★SF6ガス | ★窒素ガス |
| (イ) | ★エポキシ樹脂 | ★磁器がいし |
| (ウ) | ★高い | ★低い |
| (エ) | ★長い | ★短い(長所だと思い込む) |
①②③が長所なので、④も長所だと思い込みやすい——そこを突いた出題です。
(エ)だけで(2)に確定できます。
復旧が長くなる具体的な理由
| 工程 | 必要なこと |
| ★事故箇所の特定 | ★外から見えないので測定で推定する |
| ★ガスの回収 | ★大気へ放出せず専用装置で回収する |
| ★開放と清掃 | ★異物が入らないよう慎重に行う |
| ★再充填と試験 | ★真空引きしてから規定圧まで充填する |
どの工程も時間がかかります——気中設備なら見て直せるところです。
だから重要な変電所では二重化して備えます——片方が使えなくても供給を続けられるように。
GISが変えた変電所の姿
①のコンパクトさが、立地の可能性を広げました。
| 形態 | 特徴 | 成り立つ理由 |
| ★地下変電所 | ★ビルや道路の地下に設置 | ★面積が10〜30 % で済む |
| ★屋内変電所 | ★建物の中に納める | ★天候の影響を受けない |
| ★洞道内設備 | ★トンネル状の空間に設置 | ★密閉されているから可能 |
気中絶縁では、都心にこれだけの用地を確保できません——だから需要地から遠ざかることになります。
遠ざかれば配電線が長くなり、損失も電圧降下も増える——GISはその問題を解決しました。
②の安全性も、都市部では重要——人が近づく場所に置けるからです。
4つの特徴のうち3つまでが、密閉と小形化から生じています——だから④の短所も同じ原因から出るのです。
SF6の代替に向けた動き
(ア)のSF6は優れていますが、環境面の課題があります。
| 代替の方向 | 内容 | 状況 |
| ★乾燥空気 | ★絶縁のみの部分に使う | ★実用化が進む |
| ★窒素との混合 | ★SF6の使用量を減らす | ★一部で採用 |
| ★フッ素化合物 | ★温暖化係数の低い新ガス | ★実証段階 |
絶縁だけなら、加圧した乾燥空気でも代替できます——容器はやや大きくなります。
けれども消弧能力ではSF6に及びません——遮断部の置き換えが難しいのです。
だから母線など絶縁だけの部分から置き換えが進んでいます——段階的な脱SF6です。
問題文が「絶縁耐力及び消弧能力の優れた」と2つ挙げている——両方を満たす代替が難しい理由がそこにあります。
まとめ
| (ア)SF₆ガス | 絶縁耐力・消弧能力に優れた充填ガス |
| (イ)エポキシ樹脂 | 充電部を支持するスペーサの材料 |
| (ウ)高い | 密閉構造で汚染物の影響なし→信頼性が高い |
| (エ)長い | 内部事故時はガス回収・分解点検→復旧に時間→答えは(2) |
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