今回は平成19年度 電力科目 B問題16、容量の異なる単相変圧器2台(T₁=75kV・A、T₂=50kV・A)をV結線し、三相平衡負荷45kW(力率角π/6進み)と力率1の単相負荷Pを同時に供給する問題です。(a)でベクトル図、(b)でT₁が過負荷にならない単相負荷の最大値を求めます。
この問題の仕掛けは「進みπ/6」という絶妙な設定。相順a-b-cのときVabはVaよりπ/6進むので、三相負荷の電流Ia(Vaよりπ/6進み)はちょうどVabと同相になります。力率1の単相負荷電流I₁もVabと同相——つまり3つのベクトルが一直線に並び、電流は代数和でOKになるのです。
平成19年度 電力科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題16
電験3種 電力科目 【変電】 平成19年度 B問題16
2台の単相変圧器T₁(容量75〔kV・A〕)とT₂(容量50〔kV・A〕)をV結線し、三相平衡負荷45〔kW〕(力率角π/6〔rad〕進み)と、a-b相間に接続した力率1.0の単相負荷P〔kW〕に電力を供給している。相順はa、b、cとし、Vabはa-b相間の電圧、Iaは三相負荷の線電流、I₁は単相負荷の電流である。次の(a)及び(b)に答えよ。
(a) Vaを基準として、Vab、Ia、I₁の大きさと位相関係を表す図として、正しいのは次のうちどれか。ただし、|Ia|>|I₁|とする。
※選択肢は5種類のベクトル図です(本記事では図を省略し、解説で正解の位相関係を説明します)。
(b) 変圧器T₁が過負荷にならない範囲で、単相負荷P(力率1.0)の最大電力〔kW〕の値として、正しいのは次のうちどれか。
(1)23 (2)36 (3)45 (4)49 (5)58

(a) Ia と I₁ が同相になる
本問の鍵は、2つの電流の位相が一致することです。
| 量 | Va を基準とした位相 | 根拠 |
| ★Va | ★0 | ★基準 |
| ★Vab | ★+30度 | ★Va−Vb は30度進む |
| ★Ia | ★+30度 | ★Va より π/6 進み |
| ★I₁ | ★+30度 | ★Vab と同相(力率1.0) |
三相負荷の力率角が π/6 進みなので、Ia は Va より30度進みます。
一方 Vab は Va より30度進む——星形の線間電圧の性質です。
だから Ia と Vab が同相になる——偶然ではなく、問題がそう設定しているのです。
単相負荷は力率1.0 なので、I₁ も Vab と同相——結果として Ia と I₁ が同相になります。
Vab、Ia、I₁ の3つがすべて同じ向きに並ぶ図が正解です。
(b) 同相だから単純に足せる
変圧器T₁には、Ia と I₁ の両方が流れます。
ふつうはベクトル和が要りますが、同相なので数値のまま足せます——それが(a)を先に問う理由です。
三相負荷が使う容量
★1台あたり30 kV·A
V結線では、三相負荷の容量を2台で分け合います——1台あたり √3 分の1です。
T₁の残り容量が単相負荷の上限
★答え
単相負荷は力率1.0 なので、kV·A と kW が同じ値——換算が要りません。
T₂(50 kV·A)は三相負荷の30 kV·A だけを負担します——まだ余裕があります。
制約になるのはT₁のほう——単相負荷が乗るからです。
⚠️ よくある間違い
ベクトル和を三平方で計算してしまう——√(30²+P²)=75 から P=68.8。同相なので単純に足すのが正しい。
(a)を解かずに(b)へ進むと、この誤りに落ちます——(a)は(b)の準備です。
三相負荷の容量を√3で割り忘れる——75−51.96=23 となり、選択肢(1)へ。
T₂の容量50 kV·A で計算してしまう——50−30=20。問われているのはT₁です。
力率0.866 を掛けてしまう——45×0.866=39。単相負荷は力率1.0なので不要。
選択肢(1)23と(4)49は、√3の扱いを誤った値です。
⏱️ 本番での進め方
①★Vab は Va より30度進む。三相負荷も30度進み。
②★だから Ia と I₁ が同相になり、単純に足せる。
③★V結線では三相負荷の容量が1台あたり √3 分の1。
④★T₁の容量75から30を引いて45 kW。
💡 覚え方
「同相だから引き算だけ」——75−30=45です。(a)で同相と分かれば、(b)は暗算で解ける——そういう作りの問題になっています。
V結線の出力と利用率は平成30年度 A問題12(変電:変圧器のV結線方式)にあります。
V結線に単相負荷を乗せる形
本問の構成を、配電の実際に照らして見ましょう。
| 変圧器 | 接続 | 担う負荷 | 容量 |
| ★T₁ | ★a-b相間 | ★三相負荷+単相負荷 | ★75 kV·A |
| ★T₂ | ★b-c相間 | ★三相負荷のみ | ★50 kV·A |
容量が違うのは、担う負荷が違うから——T₁のほうが重いのです。
これが柱上変圧器の電灯動力共用方式そのもの——T₁が共用変圧器にあたります。
実際の配電でも50 kV·A と20 kV·A のような組合せが使われます——本問は75と50。
なぜ容量に差をつけるのか
両方を75 kV·A にすれば余裕はできます——けれどもT₂は遊んでしまうのです。
T₂は三相負荷の30 kV·A しか担いません——50 kV·A でも十分になります。
必要な容量に合わせて選ぶのが経済的——電柱に載せる重量も減ります。
要点をもう一度
(a)で同相と分かれば、(b)は引き算だけです。
| 順 | やること | 値 |
| ★① | ★三相負荷の皮相電力 | ★45÷0.866=51.96 kV·A |
| ★② | ★T₁が分担する分(÷√3) | ★30 kV·A |
| ★③ | ★T₁の容量から引く | ★75−30=45 kW |
ベクトル和が要らないのは、位相がそろっているから——問題がそう設定しています。
力率角 π/6 進みという条件が、その仕掛け——Vab の30度進みとちょうど一致するのです。
もし力率が違っていたら
Ia と I₁ の位相がずれるので、ベクトル和が必要になります。
★余弦定理
θ=0 なら、これは単純な足し算に戻ります——本問がその場合です。
だから(a)を確実に解くことが、(b)の前提になる——B問題らしい構成だと言えます。
V結線の容量計算をまとめる
本問で使った関係を、一般形で整理します。
★√3で割る
| 三相負荷 | 1台あたりの分担 |
| ★30 kV·A | ★17.3 kV·A |
| ★51.96 kV·A(本問) | ★30 kV·A |
| ★100 kV·A | ★57.7 kV·A |
2台で分けるのに、半分にはなりません——√3 分の1=約58 %です。
2台合計では116 %——だから利用率が86.6 % にとどまるのです。
V結線の利用率√3/2 は、この関係から出てきます——1÷1.155=0.866。
本問の30 kV·A も、51.96÷√3 で求めた値——同じ関係を使っています。
進み力率の負荷という設定
三相負荷が「力率角 π/6 進み」なのは、珍しい条件です。
| 負荷の種類 | 力率 | 電流の位相 |
| ★誘導電動機 | ★遅れ | ★電圧より遅れる |
| ★白熱灯・電熱 | ★1.0 | ★同相 |
| ★コンデンサ | ★進み | ★電圧より進む |
ふつうの負荷は遅れ力率です——電動機や変圧器が誘導性だから。
進み力率になるのは、コンデンサを入れすぎたとき——実際には過補償と呼ばれる状態です。
本問がこの条件を選んだのは、計算を簡単にするため——Ia が Vab と同相になるからです。
遅れ力率なら位相差が60度つき、ベクトル和が必要になります——問題としては難しくなるのです。
まとめ
| (a)位相関係 | Vab・Ia・I1がすべて同相(Vaよりπ/6進み) |
| (b)三相負荷分 | S3=45/cos30°=52.0kV・A→Vab·Ia=30kV・A |
| (b)容量条件 | P1+30≦75kV・A |
| (b)最大単相負荷 | P1=45kW |
| 答え | (a)-(2),(b)-(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・V結線の出力比√3/3と利用率√3/2(変電24):【電力】平成30年度 A問題12
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