電気化学9【電験3種 機械】固体高分子形燃料電池の発電原理の穴埋め問題!平成26年度 A問題12 完全解説

電験3種 機械科目 電気化学 平成26年度 A問題12 水素と酸素で発電する!燃料電池の反応を追う

今回は平成26年度 機械科目 A問題12を解説します。家庭用などに使われる固体高分子形燃料電池の発電原理(改質器・電子の授受・発熱反応)に関する空所補充問題です。

都市ガスを改質器で改質して水素を作り、燃料極で水素が電子を放出して水素イオンとなり、空気極で電子を受け取って酸素と結合し水が生成される、という電子の動きの向きを追うのがポイントです。発電時は発熱反応が起こります。

目次

平成26年度 機械科目 A問題12:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 電気化学 平成26年度 A問題12 問題文
平成26年度 機械科目 A問題12 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題12

電験3種 機械科目 【電気化学】 平成26年度 A問題12

 次の文章は,燃料電池に関する記述である。

 (ア)燃料電池は80〜100℃程度で動作し,家庭用などに使われている。燃料には都市ガスなどが使われ,(イ)を通して水素を発生させ,水素は燃料極へと導かれる。燃料極において水素は電子を(ウ)水素イオンとなり,電解質の中へ浸透し,空気極において電子を(エ)酸素と結合し,水が生成される。放出された電子が電流として負荷に流れることで直流電源として動作する。また,発電時には(オ)反応が起きる。

 上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)固体高分子形改質器放出して受け取って発熱
(2)りん酸形燃焼器受け取って放出して吸熱
(3)固体高分子形改質器放出して受け取って吸熱
(4)りん酸形改質器放出して受け取って発熱
(5)固体高分子形燃焼器受け取って放出して発熱

燃料電池は「水の電気分解の逆」

水素と酸素から水ができるとき、電気が取り出せる——水を分解して水素と酸素を作るのと、ちょうど逆です。

\( \text{燃料極}:\ \mathrm{H_2}\rightarrow 2\mathrm{H^+}+2e^- \)
①水素が電子を放出
★(ウ)
\( \text{空気極}:\ \dfrac{1}{2}\mathrm{O_2}+2\mathrm{H^+}+2e^-\rightarrow \mathrm{H_2O} \)
②酸素が電子を受け取る
★(エ)
\( \text{全体}:\ \mathrm{H_2}+\dfrac{1}{2}\mathrm{O_2}\rightarrow \mathrm{H_2O} \)
③合わせると
★水素の燃焼と同じ

全体の反応は「水素が燃える」のと同じ——だから当然、発熱反応です。(オ)が発熱だと分かります。

ふつうの燃焼は、いったん熱にしてから発電機を回します——燃料電池は、化学エネルギーを直接電気に変える途中で熱機関を通さないので効率が高いのです。

固体高分子形燃料電池の改質器、燃料極、電解質膜、空気極と発電経路の図
H⁺は電解質膜を、電子は外部回路を燃料極から空気極へ移動します

(ウ)(エ) 電子の向きを決める

電子は燃料極から外部回路を通って空気極へ——水素イオンは電解質の中を通って空気極へ2つの経路が空気極で合流します。

経路運ぶもの通り道
★外部回路★電子(e★負荷を通る=電流として使える
電解質水素イオン(H+膜の中を移動

「放出された電子が電流として負荷に流れる」——問題文のとおりです。電子を出す燃料極が負極、受け取る空気極が正極 になります。

水素は電子を「放出して」イオンになる——H2 からH+ へ、プラスの電荷が増えたのですから、電子を失ったのです。電荷の増減から判断できます。

(イ) 改質器の役割

都市ガス(主成分メタンCH4)から水素を作る装置——「燃焼器」ではありません

\( \mathrm{CH_4}+\mathrm{H_2O}\rightarrow \mathrm{CO}+3\mathrm{H_2} \)
水蒸気改質
★水素を取り出す

燃やしてしまっては電気が取り出せません——化学反応で水素に「作り替える」のが改質です。「改質」という言葉が、そのまま意味を表しています

固体高分子形燃料電池問題の5つの空欄と正解1を示す解答図
固体高分子形、改質器、放出、受取、発熱の組合せで正解は(1)
答え正解は (1)——(ア)固体高分子形 (イ)改質器 (ウ)放出して (エ)受け取って (オ)発熱 です。

(ア) 燃料電池の4つの型

電解質の種類で分類され、動作温度がまるで違います——温度で見分けるのが確実です。

形式電解質動作温度用途
★固体高分子形(PEFC)イオン交換膜★80〜100 ℃★家庭用、燃料電池車
りん酸形(PAFC)りん酸約200 ℃業務用
溶融炭酸塩形(MCFC)溶融炭酸塩約650 ℃大規模発電
固体酸化物形(SOFC)セラミックス★700〜1,000 ℃高効率発電

問題文の「80〜100 ℃ 程度で動作し、家庭用」——この2つの条件で固体高分子形に決まりますりん酸形は200 ℃ なので当てはまりません。

低温で動くほど起動が速く、家庭用に向いています——高温形は効率が高い代わりに起動に時間がかかるので、連続運転する大規模発電向けになります。

家庭用のエネファームは固体高分子形か固体酸化物形——発電しながら排熱で給湯する(コージェネレーション)ことで、総合効率は90 % を超えるものもあります。

⚠️ よくある間違い
(ウ)(エ)を逆にしてしまう——選択肢(2)(5)がそれです。
水素が「水素イオンとなり」と問題文にある——プラスになるのだから電子を失う=放出電荷で判断できます。
(イ)を「燃焼器」とする選択肢(2)(5)——燃やしたら電気になりません燃料電池は燃焼させない装置だという原則から外れます。
(オ)を「吸熱」とする選択肢(2)(3)——全体反応が水素の燃焼と同じなので発熱です。「燃える=発熱」と考えれば迷いません。
(オ)だけで(2)(3)が落ち、(イ)で(5)が落ちる——残るは(1)(4)、あとは(ア)の温度で確定します。

⏱️ 本番での進め方
①(ア) 80〜100 ℃+家庭用=固体高分子形。りん酸形は200 ℃。
②(イ) 改質器で都市ガスから水素を作る。燃焼器ではない。
③(ウ)(エ)★H2→H+ は電子を放出。空気極で受け取る。
④(オ) 全体は水素の燃焼と同じなので★発熱。

💡 覚え方
「燃料電池は水の電気分解の逆」——だから水ができて、発熱するのです。そして「温度で形式が決まる」——80〜100 ℃ なら固体高分子形です。

水の電気分解そのものは令和3年度 A問題12電気化学:鉛蓄電池の過充電)にも登場します。

固体高分子形燃料電池の燃料極反応、空気極反応、全体反応の図
水素と酸素から水が生成し、電気と熱を取り出す発熱反応です

燃料電池の効率が高い理由

熱機関を経由しないので、カルノー効率の制約を受けません——これが原理的な優位点です。

発電方式エネルギーの流れ効率の制約
火力発電化学→熱→運動→電気★カルノー効率の上限がある
★燃料電池★化学→電気(直接)★カルノー効率の制約なし

熱を経由すると、必ず捨てる熱が生じます——高温側と低温側の温度差で上限が決まるのがカルノー効率。火力発電の効率が5割前後にとどまるのはこのためです。

燃料電池は、その段階を飛ばします——発電効率だけで40〜60 %小型でもこの効率が出るのが大きな特徴です。

コージェネレーションで総合効率90 %

発電時に出る熱も使えば、無駄が減ります——給湯に回すのが家庭用エネファームです。

発電40 %+排熱利用50 %=総合90 %——電気と湯を同時に作ることで、燃料をほぼ使い切れることになります。

(オ)が「発熱」であることが、この使い方の前提——もし吸熱なら排熱利用はできません問題文の1語が、実用上の意味を持っているのです。

水素をどこから得るか

本問では都市ガスを改質していますが——水素の作り方はいくつもあります

方法原料CO2 排出
★水蒸気改質★都市ガス、LPG★あり(本問の方式)
水の電気分解水と電気★電源しだい
副生水素製鉄所や化学工場の副産物実質なし

家庭用燃料電池が都市ガスを使うのは、すでに配管があるから——水素を運ぶインフラは、まだ整っていません

再生可能エネルギーの電気で水を分解すれば、CO2 を出さない水素が作れます——余剰電力の貯蔵手段としても注目されているのです。

電気→水素→電気——効率は落ちますが、長期間・大量に蓄えられるのが利点。蓄電池では難しい規模の貯蔵ができることになります。

まとめ

(ア)固体高分子形
(イ)改質器
(ウ)放出して
(エ)受け取って
(オ)発熱
答え(1)

▼あわせて解きたい関連問題
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【機械】平成18年度A問題12(電気化学10)
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