今回は平成20年度 機械科目 A問題13を解説します。二次電池の代表格である鉛蓄電池の充電時における正極・負極の化学反応(酸化・還元反応)に関する記述のうち、正しいものを選ぶ問題です。
充電時は放電と逆向きの反応が起こります。正極では鉛の酸化数が+2から+4に増加するため酸化反応(電子を放出)、負極では+2から0に減少するため還元反応が起こる、という酸化数の変化を追うのがポイントです。
平成20年度 機械科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題13
電験3種 機械科目 【電気化学】 平成20年度 A問題13
二次電池は,電気エネルギーを化学エネルギーに変えて電池内に蓄え(充電という),貯蔵した化学エネルギーを必要に応じて電気エネルギーに変えて外部負荷に供給できる(放電という)電池である。この電池は充放電を反復して使用できる。
二次電池としてよく知られている鉛蓄電池の充電時における正・負両電極の化学反応(酸化・還元反応)に関する記述として,正しいのは次のうちどれか。
なお,鉛蓄電池の充放電反応全体をまとめた化学反応式は次のとおりである。
2PbSO4 + 2H2O ⇌ Pb + PbO2 + 2H2SO4
(1)充電時には正極で酸化反応が起き,正極活物質は電子を放出する。
(2)充電時には負極で還元反応が起き,PbSO4が生成する。
(3)充電時には正極で還元反応が起き,正極活物質は電子を受け取る。
(4)充電時には正極で還元反応が起き,PbSO4が生成する。
(5)充電時には負極で酸化反応が起き,負極活物質は電子を受け取る。
(1)充電時には正極で酸化反応が起き,正極活物質は電子を放出する。
(2)充電時には負極で還元反応が起き,PbSO₄が生成する。
(3)充電時には正極で還元反応が起き,正極活物質は電子を受け取る。
(4)充電時には正極で還元反応が起き,PbSO₄が生成する。
(5)充電時には負極で酸化反応が起き,負極活物質は電子を受け取る。
酸化数を追えば必ず判定できる
「酸化」「還元」の判定は、酸化数の増減を見るだけ——感覚で決めないことが大切です。
| 酸化 | 還元 | |
| 酸化数 | ★増える | ★減る |
| 電子 | ★放出する | ★受け取る |
| 起きる電極 | アノード | カソード |
「酸化=電子を失う」——電子はマイナスなので、失えばプラス側へ、つまり酸化数は増えます。この対応さえ押さえれば、機械的に判定できるのです。

充電時の両極を追う
全反応式を右向き(充電)に進めます——2PbSO4+2H2O → Pb+PbO2+2H2SO4。
★増えた=酸化
★電子を放出
★減った=還元
★電子を受け取る
正極は酸化して電子を放出、負極は還元して電子を受け取る——これが充電時です。選択肢(1)の記述と一致します。
PbSO4 の中の鉛はなぜ+2 なのか
硫酸イオンSO42− が−2——全体が中性なので、鉛は+2 です。
PbO2 なら酸素が−2 ずつで計−4——だから鉛は+4。金属単体のPb は0 です。この3つの値を出せれば、判定は自動的になります。

充電と放電で役割が入れ替わる
同じ「正極」でも、充電中と放電中で起きる反応が逆——ここが混乱の元です。
| 放電時 | ★充電時 | |
| 正極 | 還元(電子を受け取る) | ★酸化(電子を放出) |
| 負極 | 酸化(電子を放出) | ★還元(電子を受け取る) |
| 正極の呼び名 | カソード | ★アノード |
| 電流の向き | 電池から外部へ | 外部から電池へ |
「正極」「負極」という呼び名は変わりません——電位の高いほうが正極だからです。ところが「アノード」「カソード」は反応で決まるので、充放電で入れ替わります。
だから「正極=カソード」と覚えると、充電時に間違えます——電池が放電しているときだけ成り立つ対応です。「アノード=酸化」という定義のほうが普遍的になります。
⚠️ よくある間違い
放電時の反応と混同する——これが最大の落とし穴です。
放電時は正極で還元——ところが本問は充電時なので逆になります。設問文の「充電時における」を必ず確認してください。
選択肢(3)(4)は正極を還元としており、放電時の記述——もし設問が放電時なら正しかったことになります。ひっかけとして巧妙です。
(2)の「負極で還元が起き、PbSO4 が生成する」——還元は正しいが、生成するのはPb。PbSO4 は放電時の生成物です。前半が正しくても後半で誤る——記述の全体を確認してください。
(5)の「負極で酸化が起き、電子を受け取る」——酸化なら電子は放出。記述の中で矛盾しているので、それだけで除外できます。
⏱️ 本番での進め方
①★酸化数の増減で判定する。増えたら酸化、減ったら還元。
②充電時:正極 PbSO4(+2)→PbO2(+4)=酸化。
③負極 PbSO4(+2)→Pb(0)=還元。
④★(5)は「酸化なのに電子を受け取る」で自己矛盾。即除外。
💡 覚え方
「酸化数が増えたら酸化、電子は放出」——電子を失うから酸化数が増えるのです。そして「充電は放電の逆」——放電時に正極が還元なら、充電時は酸化になります。
鉛蓄電池の生成物は令和3年度 A問題12にあります(電気化学:鉛蓄電池の充放電生成物)。穴埋め形式で同じ内容を問うています。

二次電池と一次電池
問題文の冒頭にある二次電池の定義——一次電池との違いを確認しておきましょう。
| 一次電池 | ★二次電池 | |
| 充電 | できない | ★できる |
| 反応 | 不可逆 | ★可逆(⇌) |
| 例 | マンガン乾電池、アルカリ乾電池 | 鉛蓄電池、リチウムイオン電池 |
問題文の反応式に「⇌」(可逆記号)が使われている——これが二次電池である証拠です。右向きが放電、左向きが充電になります。
一次電池では反応が一方向にしか進みません——生成物が元に戻らないので、充電できないのです。
蓄えているのは化学エネルギー
「電気エネルギーを化学エネルギーに変えて電池内に蓄え」——電気そのものを溜めているわけではありません。
コンデンサは電荷そのものを溜めますが、電池は物質の形で蓄える——だから桁違いに多くのエネルギーを溜められるのです。
同じ体積なら、電池はコンデンサの数千倍のエネルギーを蓄えられます——その代わり出し入れは遅い。コンデンサは速いが容量が小さい——両者を組み合わせる使い方もあります。
記述の中の矛盾を探す
正誤判定では、記述そのものが自己矛盾していないかを見ると速く絞れます。
| 選択肢 | 記述 | 判定 |
| (1) | 正極で酸化・電子を放出 | ★整合。しかも正しい |
| (3) | 正極で還元・電子を受け取る | 整合だが充電時としては誤り |
| ★(5) | 負極で酸化・電子を受け取る | ★自己矛盾(酸化なら放出) |
(5)は「酸化」と「電子を受け取る」が矛盾——充電か放電かを考えるまでもなく誤りです。これで1つ確実に落とせます。
「酸化=電子を失う」「還元=電子を得る」——この対応が崩れている記述は、無条件で誤りになります。
残りは充電か放電かで判断
(1)と(3)は正極について正反対——どちらか一方が正しいことになります。
設問は「充電時」——正極でPbSO4(+2)がPbO2(+4)になるので酸化。だから(1) です。矛盾チェックと酸化数チェックの2段階で確定します。
まとめ
| 充電・正極 | 酸化反応(PbSO₄→PbO₂、電子放出) |
| 充電・負極 | 還元反応(PbSO₄→Pb、電子受取) |
| 答え | (1) |
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