今回は平成28年度 機械科目 A問題12を解説します。二次電池・充放電時のイオンと電子の動き・出力インピーダンスなど、電池に関する一般的な記述のうち誤っているものを選ぶ問題です。
出力インピーダンスが小さい電池ほど大きな電流を出力できるという関係がポイントです。出力インピーダンスが大きいと出力電流が増えるにつれて電圧降下が大きくなり、大電流を取り出せません。
平成28年度 機械科目 A問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題12
電験3種 機械科目 【電気化学】 平成28年度 A問題12
電池に関する記述として,誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)充電によって繰り返し使える電池は二次電池と呼ばれている。
(2)電池の充放電時に起こる化学反応において,イオンは電解液の中を移動し,電子は外部回路を移動する。
(3)電池の放電時には正極では還元反応が,負極では酸化反応が起こっている。
(4)出力インピーダンスの大きな電池ほど大きな電流を出力できる。
(5)電池の正極と負極の物質のイオン化傾向の差が大きいほど開放電圧が高い。
(1)充電によって繰り返し使える電池は二次電池と呼ばれている。
(2)電池の充放電時に起こる化学反応において,イオンは電解液の中を移動し,電子は外部回路を移動する。
(3)電池の放電時には正極では還元反応が,負極では酸化反応が起こっている。
(4)出力インピーダンスの大きな電池ほど大きな電流を出力できる。
(5)電池の正極と負極の物質のイオン化傾向の差が大きいほど開放電圧が高い。
誤りは(4):出力インピーダンスは小さいほどよい
電池は「起電力E と内部抵抗r の直列」とみなせます——この等価回路で考えれば一目瞭然です。
r が大きいほど、電流を流したときの電圧降下が大きい——すぐに端子電圧が下がってしまいます。だから大電流は取り出せません。
| 出力インピーダンス | 10 A 流したときの電圧降下 | 大電流性能 |
| ★0.01 Ω | ★0.1 V | ★良い |
| 0.1 Ω | 1 V | やや落ちる |
| 1 Ω | ★10 V | ★大電流は無理 |
2 V の電池で10 V も降下すれば、そもそも電流が流れません——出力インピーダンスが電流の上限を決めているのです。
短絡電流はE/r——r が小さいほど大きくなります。「大電流を出せる=r が小さい」——式からも明らかです。


最大電力の定理との違い
「内部抵抗=負荷抵抗のとき最大電力」——理論の授業で習うこの定理と、混同しやすいところです。
| 最大電力の定理 | ★実際の電池の使い方 | |
| 条件 | r=R | ★r ≪ R |
| 取り出せる電力 | 最大 | 最大ではない |
| 効率 | ★50 %(半分が内部で熱に) | ★90 %以上 |
| 目的 | 電力を最大にしたい | ★エネルギーを無駄にしたくない |
最大電力の定理が成り立つ条件では、効率が50 % しかありません——電池の中で半分が熱になってしまうのです。これでは実用になりません。
だから電池は、内部抵抗をできる限り小さくして使います——「最大電力」ではなく「高効率」が目的だからです。信号の伝送では最大電力の定理が重要ですが、電力供給ではまったく逆の設計になります。
(1)(2)(3)(5) が正しい理由
(2) イオンは内部、電子は外部
電解液の中を電子が流れることはありません——運ぶのはイオンです。だから電池は「イオン導電体」と「電子導電体」の組合せだと言えます。
もし電解液の中を電子が流れたら、それは内部短絡——電池として働きません。セパレータが電子を通さないのは、そのためです。
(3) 放電時は正極で還元、負極で酸化
| ★放電時 | 充電時 | |
| 正極 | ★還元 | 酸化 |
| 負極 | ★酸化 | 還元 |
負極から電子が出ていく=酸化——その電子が外部回路を通って正極へ戻り、正極で還元が起きる。電子の出入りで判断できます。
(5) イオン化傾向の差が起電力を決める
2つの金属のイオン化傾向が離れているほど、電圧が高くなります——電子を出したがる度合いの差が起電力の正体だからです。
| 電池 | 組合せ | 起電力 |
| ダニエル電池 | Zn とCu | 約1.1 V |
| 鉛蓄電池 | Pb とPbO2 | 2.0 V |
| ★リチウムイオン | ★Li と金属酸化物 | ★3.7 V |
リチウムは最もイオン化しやすい金属のひとつ——だから高い電圧が得られます。(5)の記述は、リチウムイオン電池が高電圧である理由そのものです。
⚠️ よくある間違い
(4)を「大きいほど高性能そう」と流してしまう——「インピーダンス」という言葉の印象に引きずられないことです。
V=E−rI を書けば一目——r は電圧を下げる方向に働くので、小さいほどよいのです。
身近な例でも確認できます——古くなった乾電池は内部抵抗が上がり、大きな電流が流せなくなる。電圧を測ると1.5 V あるのに動かない——まさに出力インピーダンスの増大です。
自動車のバッテリーが「上がる」のも同じ——電圧は残っていても、セルモータを回す大電流が出せないのです。
⏱️ 本番での進め方
①(4)★V=E−rI。r が小さいほど大電流を出せる。
②最大電力の定理(r=R)は効率50 %。電池では使わない。
③(2) イオンは電解液、電子は外部回路。
④(3) 放電時は正極が還元、負極が酸化。
💡 覚え方
「内部抵抗は小さいほどよい」——V=E−rI で電圧降下が減るから。古い電池が動かないのは内部抵抗が上がったから——身近な例で確かめられます。
放電時と充電時の反応は平成20年度 A問題13にあります(電気化学:鉛蓄電池の充電時の酸化・還元反応)。

出力インピーダンスは何で決まるか
電池の内部抵抗は、いくつもの要因の合計です——どれも電流の通りにくさを表しています。
| 要因 | 内容 | 小さくする方法 |
| 電解液の抵抗 | イオンが移動しにくい | 濃度・温度を適正に |
| ★電極の反応抵抗 | 反応そのものの起きにくさ | ★電極の表面積を大きく |
| 導体部の抵抗 | 集電体や端子 | 太く短く |
電極を薄く広くすると、反応面積が増えて内部抵抗が下がります——大電流用の電池が薄い板を何枚も重ねた構造なのはこのためです。
温度が下がると電解液の抵抗が上がる——寒い朝に車のエンジンがかかりにくいのは、バッテリーの内部抵抗が上がっているからです。
劣化すると内部抵抗が上がる
電池の寿命は、容量の低下だけでなく内部抵抗の上昇でも判断されます——大電流が出せなくなるからです。
「電圧はあるのに使えない」——これが内部抵抗が上がった電池の典型的な症状。無負荷では正常に見えるので、負荷をかけて測る必要があるのです。
正誤判定を速く終わらせる
5つの記述のうち、4つは教科書どおりの説明——読み方に強弱をつけると速くなります。
| 記述の型 | 該当 | 読み方 |
| 定義を述べる | (1)(2)(3) | 流し読みでよい |
| ★大小関係を述べる | ★(4)(5) | ★式で確認する |
「〜ほど〜できる」という記述は、向きが逆になっていないか——ここに誤りが仕込まれます。
(4)はV=E−rI で確認——r が大きいと電圧降下が大きい=大電流は無理。(5)はイオン化傾向の差が起電力——差が大きいほど電圧が高い(正しい)。
2つの記述だけを検討すれば済む——1分で片づきます。正誤判定問題は、どこを読むかを見極めるのが要領です。
まとめ
| (1)〜(3)(5) | 正しい記述 |
| (4) | 「出力インピーダンスが大きいほど大電流」が誤り(実際は逆) |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・鉛蓄電池の充電時における酸化・還元反応の正誤判定:【機械】平成20年度A問題13
・鉛蓄電池の充放電生成物の穴埋め問題:【機械】令和3年度A問題12

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