今回は平成26年度 機械科目 A問題11を解説します。電子レンジに使われるマイクロ波加熱の原理(誘電損・有極性分子・浸透深さ)に関する空所補充問題です。★電気加熱16(平成22年度A問題12)と同一の発熱量の公式P=KfE²εtanδを使う対の問題です。
電子レンジには数GHzのマイクロ波が使われ、被加熱物中の水などの有極性分子の誘電損によって発熱します。発熱量は周波数に比例し、逆に電磁波の浸透深さは周波数が高いほど小さくなる、という反比例の関係を押さえるのがポイントです。
平成26年度 機械科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題11
電験3種 機械科目 【電気加熱】 平成26年度 A問題11
次の文章は,電子レンジ及び電磁波加熱に関する記述である.
一般に市販されている電子レンジには,主に(ア)の電磁波が使われている.この電磁波が電子レンジの加熱室に入れた被加熱物に照射されると,被加熱物は主に電磁波の交番電界によって被加熱物自体に生じる(イ)によって被加熱物自体が発熱し,加熱される.被加熱物が効率よく発熱するためには,被加熱物は水などの(ウ)分子を含む必要がある.また,一般に,(イ)は電磁波の周波数に(エ),被加熱物への電磁波の浸透深さは電磁波の周波数が高いほど(オ).
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 数GHz 誘電損 有極性 無関係で 小さい (2) 数GHz 誘電損 有極性 比例し 小さい (3) 数MHz ジュール損 無極性 無関係で 大きい (4) 数MHz 誘電損 無極性 比例し 大きい (5) 数GHz ジュール損 有極性 比例し 大きい
(ア)(イ)(ウ) 電子レンジが物を温める仕組み
電子レンジは数GHz のマイクロ波を使います——日本では2.45 GHz と決められています。
| 空欄 | 答え | 理由 |
| (ア) | 数GHz | ★2.45 GHz(マイクロ波帯) |
| (イ) | 誘電損 | ★交番電界による損失 |
| (ウ) | 有極性 | ★水分子は極性をもつ |
水分子はプラスとマイナスに偏った形(極性分子)——だから電界の向きに合わせて回ろうとします。1秒間に24.5億回も向きを変えられれば、分子どうしがぶつかって熱くなる——これが誘電損の正体です。
無極性分子なら電界に反応しません——だから油や乾いた紙は温まりにくい。「水などの有極性分子を含む必要がある」という問題文のとおりです。
氷が温まりにくいのも同じ理由——結晶になると分子が固定されて回れないからです。冷凍食品の解凍に時間がかかるのは、この性質によります。

(エ)(オ) 発熱量と浸透深さは逆向き
周波数を上げると発熱は増えるが、深くまで届かなくなる——この対比が本問の核心です。
| 周波数を上げると | 発熱量P | 浸透深さd |
| 2倍 | ★2倍(比例) | ★半分(反比例) |
| 意味 | 表面付近で強く発熱 | 内部まで届かない |
発熱量が周波数に比例するのは、1秒あたりに分子が向きを変える回数が増えるから——回数が増えれば、摩擦で生じる熱も増えるのです。
ところが表面で強く吸収されれば、奥まで届きません——だから浸透深さは浅くなる。「よく発熱する」ことと「深くまで届く」ことは両立しないのです。
電子レンジで表面だけ熱くて中が冷たい——2.45 GHz の浸透深さが数cm しかないためです。厚みのある食品では、中心まで届かず熱伝導に頼ることになります。

⚠️ よくある間違い
(エ)と(オ)を同じ向きに答えてしまう——発熱量は増え、浸透深さは減るという逆の関係です。
選択肢(5)は(エ)比例し・(オ)大きい——両方とも増えるとしているので誤りになります。
「よく吸収される=奥まで届かない」——光がガラスは通るが金属は通らないのと同じ理屈です。吸収と透過は相反すると考えれば迷いません。
(イ)を「ジュール損」とする選択肢(3)(5)——ジュール損は導体に電流が流れて生じるもの。食品は絶縁物なので、誘電損です。
なぜ2.45 GHz なのか
「水分子の共振周波数だから」とよく言われますが、それは誤りです——実際の理由は別にあります。
| 理由 | 内容 |
| ★ISM バンド | ★産業・科学・医療用に開放された周波数 |
| 浸透深さの兼ね合い | 数cm で食品にちょうどよい |
| 装置の作りやすさ | マグネトロンで効率よく発生できる |
通信に使う周波数と干渉しないよう、開放された帯域——それが2.45 GHz です。無線LAN(Wi-Fi)も同じ帯域を使うので、電子レンジの近くで通信が不安定になることがあります。
もし水の共振周波数を使えば、表面で全部吸収されてしまう——かえって中まで温まりません。「ほどよく吸収される」周波数を選んでいるのです。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)(イ)(ウ) 数GHz・誘電損・有極性分子。
②P=KfE2εrtanδ——発熱量は周波数に比例。
③★浸透深さは周波数に反比例。発熱量とは逆向き。
④「よく吸収される=奥まで届かない」で判断できる。
💡 覚え方
「よく吸収されるほど、奥まで届かない」——発熱量と浸透深さは必ず逆向きです。そして「氷が温まりにくいのは分子が回れないから」——誘電損の仕組みを実感できる例でしょう。
誘電加熱の原理は平成27年度 A問題13にもあります(電気加熱:電気ストーブの熱伝達と誘電加熱)。誘導加熱との対比は平成24年度 A問題12(誘導加熱の原理と表皮効果)。

誘電損失係数という指標
発熱量の式に出てくる εrtanδ——この積を誘電損失係数と呼びます。
| 物質 | 比誘電率 εr | 誘電損失係数の目安 |
| ★水 | ★約80 | ★大きい(よく発熱) |
| 油 | 約2〜3 | 小さい |
| ガラス・陶器 | 約5〜10 | ★非常に小さい |
| 空気 | 1 | ほぼ0 |
水の比誘電率は約80 と際立って大きい——だから水を含む食品がよく温まるのです。
陶器の皿が熱くならないのは誘電損失係数が小さいから——皿が熱いのは食品から伝わった熱であって、皿自体が発熱しているわけではありません。
金属を入れてはいけない理由
金属は誘電体ではなく導体——マイクロ波を吸収せず反射します。
反射した電磁波がマグネトロンに戻って故障の原因になり、とがった部分では電界が集中して放電(火花)が起きます。誘電加熱の対象は誘電体だけ——その原則が、そのまま安全上の注意になっているのです。
加熱ムラはなぜ起きるか
電子レンジで温めムラができる——その原因は2つあります。
| 原因 | 内容 | 対策 |
| ★浸透深さの限界 | 中心まで電磁波が届かない | 時間をかけて熱伝導を待つ |
| ★定在波 | 加熱室内で反射して強弱の縞ができる | ★ターンテーブル、攪拌翼 |
加熱室は金属の箱——マイクロ波が反射して定在波ができます。波の腹の位置は強く、節の位置は弱く加熱されるのです。
2.45 GHz の波長は約12 cm——その半分の6 cm ごとに強弱ができることになります。食品の大きさと同じ程度なので、ムラとして現れるのです。
ターンテーブルで食品を動かすのはこの対策——最近の機種は、代わりにアンテナを回して電磁波をかき混ぜています。
加熱が進むと何が変わるか
温度が上がると水の誘電損失係数は下がります——だから熱くなった部分は、それ以上加熱されにくくなる。
これが自己制御的に働いて、ある程度の均一化に寄与します——ただし氷から水への変化は逆。溶けた部分が急に温まりやすくなるので、解凍では逆にムラが拡大しやすいのです。
まとめ
| (ア) | 数GHz |
| (イ) | 誘電損 |
| (ウ) | 有極性 |
| (エ) | 比例し |
| (オ) | 小さい |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・マイクロ波加熱の特徴と誘電損失係数の記述の正誤判定:【機械】平成22年度A問題12
・電気ストーブの熱伝達と誘電加熱・マイクロ波加熱の穴埋め問題:【機械】平成27年度A問題13

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