今回は令和6年度上期 機械科目 A問題11を解説します。電動機応用10と同系統の巻上機の電動機出力計算問題で、質量1200kgの物体を毎秒0.3mの速度・機械効率98%で巻き上げる条件です。
一般式P=(9.8Mv/η)×10-3〔kW〕(M:kg、v:m/s、η:効率)にそのまま数値を代入します。巻上荷重の単位がN与えられた場合や余裕係数kを含む一般化式もあわせて確認します。
令和6年度上期 機械科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題11
電験3種 機械科目 【電動機応用】 令和6年度上期 A問題11
巻上機によって質量1200kgの物体を0.3m/sの一定速度で巻き上げているときの電動機出力〔kW〕の値として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし,機械効率は98〔%〕,重力加速度は9.8〔m/s2〕,ロープの質量及び加速に要する動力については考慮しないものとする。
(1)3.4 (2)3.5 (3)3.6 (4)3.7 (5)3.8〔kW〕
出題のポイント:選択肢の刻みが細かい
選択肢は3.4/3.5/3.6/3.7/3.8 と0.1 刻み——おおまかな見当では絞りきれません。効率を正しく扱わないと、必ず隣の選択肢に着地します。
力×速度
★効率で割る

⚠️ よくある間違い
効率を忘れると3.528 kW——四捨五入して3.5 になり、選択肢(2)に着地します。効率を掛けてしまった場合も3528×0.98=3457 W=3.5 kW——掛けても忘れても同じ(2)になるという、うまくできた誤答設定です。
だから「効率で割ったか」を意識的に確認してください。電動機出力は荷の動力より必ず大きい——3.6 > 3.528 になっていればOKです。
機械効率98 % という高い値
本問の機械効率は98 %——かなり高い値です。減速機を介さず、電動機とドラムが直結に近い構成を想定していると読めます。
| 構成 | おおよその機械効率 | 損失の中身 |
| 直結(本問に近い) | 95〜98 % | 軸受・ロープの曲げ |
| 1段減速 | 90〜95 % | +歯車のかみ合い |
| ウォーム減速機 | 50〜80 % | すべり接触が大きい |
ウォームギヤは効率が低い代わりに、逆回転しないという性質(セルフロック)を持ちます。電源が切れても荷が落ちない——安全性を効率と引き換えにしているわけです。
過去問では効率90 %、98 % などいろいろな値が使われます。いずれにせよ「割る」ことに変わりはない——数値が変わっても手順は同じです。
荷重がニュートンで与えられたら
問題によっては、質量ではなく巻上荷重W〔N〕で与えられることがあります。その場合はgを掛ける必要がありません。
| 与えられ方 | 式 | 注意 |
| 質量 M〔kg〕 | \( P=9.8Mv/\eta \) | ★9.8 を掛ける |
| 荷重 W〔N〕 | \( P=Wv/\eta \) | ★9.8 を掛けない |
| 余裕係数k つき | \( P=k\cdot9.8Mv/\eta \) | kは分子 |
「kg」なら重力加速度を掛け、「N」ならそのまま——単位を見れば判断できます。kg は質量、N は力——この区別が問題文を読むときの第一のチェックポイントです。
⏱️ 本番での進め方
① 9.8×1200×0.3=3528 W。
② 3528÷0.98=3600 W=3.6 kW。
③ 効率を忘れても掛けても3.5 になる。必ず「割る」。
④ 検算は「電動機出力>荷の動力」。3.6>3.528 でOK。
💡 覚え方
「9.8Mv を η で割る」——巻上機はこれだけ。そして「kg なら9.8を掛ける、N なら掛けない」——単位が式を決めます。
同系統の問題が令和3年度 A問題10にあります(電動機応用:巻上機の電動機出力を求める)。速度を逆算する問題は令和7年度上期 A問題11です(電動機応用:巻上機の巻上速度)。

巻上機に求められる電動機の特性
巻上機は、電動機にとって厳しい負荷です。止まった状態から重い荷を持ち上げる——起動の瞬間に最大のトルクが要ります。
| 負荷の種類 | トルクの特徴 | 代表例 |
| 定トルク負荷 | 速度によらずトルクが一定 | ★巻上機、コンベヤ、圧延機 |
| 定出力負荷 | 速度に反比例してトルクが減る | 巻取機、工作機械の主軸 |
| 低減トルク負荷 | 速度の2乗に比例してトルクが増える | ポンプ、送風機 |
巻上機は定トルク負荷です。荷の重さは速度に関係しない——ゆっくり上げても速く上げても、必要な力は同じだからです。
だから低速でも大きなトルクを出せる電動機が必要になります。かつては直流電動機や巻線形誘導電動機の独壇場——始動トルクが大きく、速度制御もしやすかったからです。
現在はインバータ駆動のかご形誘導電動機が主流です。ベクトル制御を使えば、低速でも定格トルクを出せる——保守が軽いかご形の利点をそのまま活かせるようになりました。
起動時に必要な余分な力
本問は「加速に要する動力は考慮しない」という条件付きでした。実際には、起動時に慣性に打ち勝つ力が追加で必要です。
実際の巻上機では、この起動時のピークで電動機容量が決まることも少なくありません。定常運転では3.6 kW でも、起動時には数倍の出力が必要——短時間なら過負荷運転できることを前提に選定されるのが普通です。
巻下げ時のブレーキ
荷を下ろすときは、放っておけば加速して落下します。電動機がブレーキとして働く必要があるのです。
このとき電動機は発電機として動作し、電力を発生します——これが回生制動。返した電力を系統へ戻せれば省エネになるわけです。
ただし電気ブレーキだけに頼るのは危険です。停電すれば制動力がなくなり、荷が落下する——だから機械ブレーキ(電磁ブレーキ)を必ず併設します。ばねで押し付け、通電時だけ開放する構造——電源が切れれば自動的にブレーキがかかるという、フェイルセーフの考え方です。
まとめ
| P=9.8Mv/η | 3.6kW |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・巻上機の電動機出力(令和3年度):【機械】令和3年度A問題10
・巻上機の巻上速度を逆算(令和7年度上期):【機械】令和7年度上期A問題11

コメント