今回は令和5年度上期 機械科目 B問題16を解説します。単相インバータで誘導性負荷に給電する回路で、負荷電流・直流電流の波形選択(a)と、単相インバータの特徴に関する正誤問題(b)です。
誘導性負荷のため電流は指数関数的に変化します。(b)で誤りとなるのは「ダイオードが導通することによって得られる逆電圧でパワートランジスタを転流させている」という記述で、環流ダイオードの役割はインダクタンスのエネルギーを電源に戻すことです。
ほぼ同じ問題が 【機械】平成24年度B問題15 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
令和5年度上期 機械科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題16
電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 令和5年度上期 B問題16
図1は,単相インバータで誘導性負荷に給電する基本回路を示す。負荷電流i0と直流電流idは図示する矢印の向きを正の方向として,次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a)出力交流電圧の1周期に各パワートランジスタが1回オンオフする運転において,図2に示すように,パワートランジスタS1〜S4のオンオフ信号波形に対して,負荷電流i0の正しい波形が(ア)〜(ウ),直流電流idの正しい波形が(エ),(オ)のいずれかに示されている。その正しい波形の組合せを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(a)パワートランジスタS1〜S4のオンオフ信号波形に対して,負荷電流i0の正しい波形が(ア)〜(ウ),直流電流idの正しい波形が(エ),(オ)のいずれかに示されている。その正しい波形の組合せを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)(ア)と(エ)
(2)(イ)と(エ)
(3)(ウ)と(オ)
(4)(ア)と(オ)
(5)(イ)と(オ)(b)単相インバータの特徴に関する記述として,誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)図1は電圧形インバータであり,直流電源Eの高周波インピーダンスが低いことが要求される。
(2)交流出力の調整は,S1〜S4に与えるオンオフ信号の幅T/2を短くすることによって交流周波数を高くすることができる。又は,Eの直流電圧を高くすることによって交流電圧を高くすることができる。
(3)図1に示されたパワートランジスタを,IGBT又はパワーMOSFETに置換えてもインバータを実現できる。
(4)ダイオードが接続されているのは負荷のインダクタンスに蓄えられたエネルギーを直流電源に戻すためであり,さらにダイオードが導通することによって得られる逆電圧でパワートランジスタを転流させている。
(5)インダクタンスを含む負荷としては誘導電動機も駆動できる。運転中に負荷の力率が低くなると,電流がダイオードに流れる時間が長くなる。


出題のポイント:直流電流は瞬時電力から決まる
(a)で難しいのは id の波形です。負荷電流 io は「誘導性だから連続」で決まりますが、id は少し考える必要がある——そこで使うのが瞬時電力の関係です。
| 区間 | v0 | i0 | v0i0 | id |
| 切替直後 | +E | 負 | 負 | ★負(回生) |
| その後 | +E | 正 | 正 | 正(力行) |
| 反転直後 | −E | 正 | 負 | ★負(回生) |
| その後 | −E | 負 | 正 | 正(力行) |
id は半周期ごとに「負 → 正」を繰り返す波形になります。io の絶対値をとった形に、切替直後だけ符号を反転させたもの——これが波形(エ)です。
id が常に正だと思い込むと(オ)を選んでしまいます。誘導性負荷なら必ず回生区間がある——負の部分がない波形は誤りだと判断できます。



(b) 5つの記述を1つずつ検証する
(1) 電圧形インバータと直流電源のインピーダンス
正しい記述です。電圧形インバータは、直流側が「電圧源」として振る舞うことが前提——スイッチングで電流が急変しても電圧が変動しないよう、高周波インピーダンスが低いことが要求されます。
実際には直流側に大容量のコンデンサを並列に入れます。コンデンサは高周波ほどインピーダンスが低い——スイッチングによる電流の脈動を吸収する役割です。
(2) 周波数と電圧の調整
正しい記述です。オンオフ信号の幅 T/2 を短くすれば周期が短くなる=周波数が高くなる。方形波インバータでは出力電圧が直流電圧そのもので決まるので、電圧を変えたければ E を変えるしかない——記述はこの事情を正確に述べています。
(3) IGBTやパワーMOSFETへの置換
正しい記述です。必要なのは「ゲート信号でオン・オフできること」——自己消弧形素子ならどれでも成り立ちます。実際、現在のインバータはIGBTやパワーMOSFETが主流です。
(4) ★誤り:ダイオードが転流させている
前半「インダクタンスのエネルギーを直流電源に戻すため」は正しいのですが、後半「ダイオードの導通で得られる逆電圧でパワートランジスタを転流させている」が誤りです。
ダイオードは転流の引き金ではありません。ダイオード電流が0になるのを待って、初めて次のトランジスタに電流が移る——ダイオードは通路であって、制御しているわけではないのです。
(5) 誘導電動機の駆動
正しい記述です。誘導電動機はインダクタンスを含む代表的な負荷——可変電圧可変周波数(VVVF)で駆動するのがインバータの最大の用途になっています。

⏱️ 本番での進め方
①(a) io は誘導性なので連続=(ア)。
② id は E·id=v0i0 から符号を決める。負の区間がある=(エ)。
③(b) 誤りは(4)。ダイオードは通路であって転流の引き金ではない。
④ 他の4つは電圧形の性質・調整法・素子の置換・用途で、すべて正しい。
💡 覚え方
「id の符号は v0i0 の符号」——瞬時電力を考えれば波形が読める。直流側の電圧Eは常に正だから、電力の向きがそのまま電流の向きになるのです。
出題履歴:平成24年度と同一問題
本問は平成24年度 B問題15とほぼ同じ問題です(パワエレ:単相インバータの波形と環流ダイオード)。答えも (a)(1)、(b)(4) で同じ——選択肢の並びも変わっていません。
令和2年度 B問題16も同じ図を使っています(パワエレ:単相インバータの実効値と電流波形)。そちらは(a)で方形波の実効値を問う設定に変えてある——同じ図から別の設問を作る、という出題の作り方が見えてきます。

電圧形と電流形の違い
(b)の(1)にある「電圧形インバータ」という言葉——これに対する「電流形インバータ」も押さえておきましょう。
| 電圧形インバータ(本問) | 電流形インバータ | |
| 直流側 | コンデンサで電圧を安定させる | リアクトルで電流を安定させる |
| 直流側のインピーダンス | 低い(電圧源に近い) | 高い(電流源に近い) |
| 出力電圧の波形 | 方形波(またはPWM) | 負荷で決まる |
| 出力電流の波形 | 負荷で決まる | 方形波 |
| 逆並列ダイオード | ★必要 | 不要(逆阻止が必要) |
電圧形は「電圧を決めて電流は負荷任せ」、電流形は「電流を決めて電圧は負荷任せ」——ちょうど裏返しの関係です。
逆並列ダイオードが必要なのは電圧形だけ——電流形では直流側のリアクトルが電流を保つので、還流路が要らないのです。むしろ素子には逆電圧に耐える能力(逆阻止)が求められます。
現在の主流は圧倒的に電圧形です。コンデンサのほうがリアクトルより小型軽量で安価——汎用インバータも太陽光パワコンも、ほぼすべて電圧形だと考えて差し支えありません。
まとめ
| (a)波形の組合せ | (ア)と(エ) |
| (b)誤りの記述 | (4) |
| 答え | (a)-(1),(b)-(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・単相インバータの出力実効値と波形選択:【機械】令和2年度B問題16
・単相インバータの電流波形選択(平成24年度):【機械】平成24年度B問題15

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