パワエレ42【電験3種 機械】単相インバータ(誘導性負荷)の出力実効値と電流波形の組合せ!令和2年 B問題16 完全解説

電験3種 機械科目 パワーエレクトロニクス 令和2年度 B問題16 誘導性負荷につないだインバータ!電流波形はどれ?

今回は令和2年度 機械科目 B問題16を解説します。直流電圧源から単相インバータで誘導性負荷に交流を給電する回路で、出力交流電圧の実効値(a)と負荷電流・直流側電流の波形選択(b)を求める問題です。

S1,S4とS2,S3が交互にON・OFFすることで±Eの方形波交流電圧を出力するので、実効値はEです。誘導性負荷の電流ioは切替時にも連続します。直流側電流は+E区間でid=io、−E区間でid=−ioとなり、回生時には負になります。

目次

令和2年度 機械科目 B問題16:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 パワーエレクトロニクス 令和2年度 B問題16 問題文
令和2年度 機械科目 B問題16 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和2年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題16

電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 令和2年度 B問題16

 図1は,直流電圧源から単相インバータで誘導性負荷に交流を給電する基本回路を示す。負荷電流io(t)と直流側電流id(t)は図示する矢印の向きを正の方向として,次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a)各パワートランジスタが出力交流電圧の1周期Tに1回オンオフする運転を行っている際のある時刻t0から1周期の波形を図2に示す。直流電圧がE〔V〕のとき,交流側の方形波出力電圧の実効値として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)0.5E (2)0.61E (3)0.86E (4)E (5)1.15E

(b)小問(a)のとき,負荷電流io(t)の波形が図3の(ア)〜(ウ)のいずれかに,直流側電流id(t)の波形が図3の(エ),(オ)のいずれかに示されている。それらの波形の適切な組合せを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)(ア)と(エ)
(2)(イ)と(エ)
(3)(ウ)と(オ)
(4)(ア)と(オ)
(5)(イ)と(オ)

図1 単相インバータ回路と図2 オンオフ信号波形・図3 波形候補
図1 単相インバータ回路と図2 オンオフ信号波形・図3 波形候補
令和2年度 B問題16 選択肢の波形(グラフ)
選択肢(1)〜(5)

出題のポイント:方形波の実効値は振幅そのもの

(a)は方形波の実効値を問う問題です。正弦波の癖で √2 で割ってしまうのが典型的な誤り——方形波では振幅がそのまま実効値になります。

方形波の実効値

\( V_{rms}=\sqrt{\dfrac{1}{T}\int_0^T v^{2}dt}=\sqrt{E^{2}}=E \)

常に ±E なので、2乗すれば常に E2——平均を取っても E2 のままです。

波形実効値振幅との関係
正弦波\( V_m/\sqrt{2} \)0.707倍
方形波\( V_m \)★1倍(そのまま)
三角波\( V_m/\sqrt{3} \)0.577倍

実効値は「2乗の平均の平方根」です。方形波は常に絶対値が E なので、2乗すればずっと E2——平均も E2、平方根を取れば E0になる瞬間がないから、実効値が下がらないのです。

図1 単相インバータ回路と図2 オンオフ信号波形・図3 波形候補
図1 単相インバータ回路と図2 オンオフ信号波形・図3 波形候補
令和2年度 B問題16 選択肢の波形(グラフ)
選択肢(1)〜(5)
単相ブリッジインバータの二つのスイッチ状態と出力電圧および直流側電流の符号関係
+E区間ではid=io、−E区間ではid=−ioで、切替直後には負の回生区間があります。

(b) 誘導性負荷では電流が連続する

負荷が誘導性なので、電流は急に変わりませんスイッチが切り替わっても電流は流れ続け、指数関数的に増減する——これが負荷電流 io の波形の特徴です。

期間出力電圧 vo負荷電流 io直流側電流 id
S1・S4 オン+E指数関数的に増加id=io
S2・S3 オン−E指数関数的に減少して負へid=−io

切り替えた直後は、電圧と電流の符号が逆になります電圧は −E に切り替わったのに、電流はまだ正の向きに流れている——この期間は負荷から電源へ電力が戻っていることになります。

だから直流側電流 id には負の期間が現れます——これが回生です。「整流された正の波形」だと思い込むと、この負の区間を見落とします

出力実効値Eの選択肢4と負荷電流アおよび直流側電流エの組合せ1を示す解答図
答えは(a)-(4)、(b)-(1)で、直流側電流には負の回生区間があります。
答え(a)の正解は (4) E、(b)の正解は (1) (ア)と(エ)です。負荷電流は指数関数的に増減する連続波形、直流側電流には負の回生区間がある——この2点が決め手です。

回生電流はどこへ流れるのか

電圧と電流が逆符号の期間、電流はトランジスタではなく逆並列ダイオードを流れますトランジスタは一方向にしか流せないからです——だからインバータには逆並列ダイオードが必須なのでした。

状態電圧と電流導通する素子電力の向き
力行同符号トランジスタ電源 → 負荷
回生逆符号逆並列ダイオード負荷 → 電源

誘導性負荷では、必ずこの回生期間が生じますリアクトルに蓄えられたエネルギーを、どこかへ返さなければならないからです——逆並列ダイオードがなければ、行き場を失った電流が高電圧を発生させて素子を壊します

負荷の力率が悪いほど回生期間が長くなります純誘導負荷なら半分が回生——ダイオードにもトランジスタと同程度の電流が流れることになります。だからダイオードの容量も、負荷の力率を考えて選定されます。

⏱️ 本番での進め方
①(a) 方形波の実効値は振幅そのもの。√2 で割らない。
②(b) 誘導性負荷なので電流は連続。指数関数的に増減する。
③ 直流側電流には負の回生区間がある。正の波形だけではない。
④ 回生電流は逆並列ダイオードを流れる。

💡 覚え方
「方形波の実効値は振幅、正弦波だけが1/√2」——0になる瞬間がないから下がらないそして「誘導性負荷には必ず回生期間がある」——だから逆並列ダイオードが要ります

プラスマイナスEの方形波実効値とRL負荷電流および直流側電流の関係を整理した表
方形波の実効値はEで、負荷電流は連続し、直流側電流には負の区間があります。

方形波インバータからPWMインバータへ

本問の単相インバータは、出力が ±E の方形波でした。この方式には、出力電圧を変えられないという決定的な弱点があります。

方式出力電圧の調整高調波スイッチング回数
方形波(本問)できない(直流電圧を変えるしかない)多い(3次・5次が大きい)1周期に2回
PWM変調率で自由に調整できる高次へ追いやれる1周期に何十回も

方形波インバータで出力電圧を変えたければ、直流側の電圧そのものを変えるしかありませんそのために整流器を可変にしたり、前段にチョッパを入れたり——装置が二重になってしまうのです。

PWM制御なら、インバータだけで電圧も周波数も同時に制御できます——だから可変速電動機駆動では、V/f 一定制御のためにPWMが使われるのでした。

方形波に含まれる高調波

方形波をフーリエ級数に展開すると、奇数次の高調波が含まれます3次が基本波の1/3、5次が1/5、7次が1/7——次数に反比例して小さくなるのが特徴です。

方形波のフーリエ展開

\( v=\dfrac{4E}{\pi}\left(\sin\omega t+\dfrac{1}{3}\sin3\omega t+\dfrac{1}{5}\sin5\omega t+\cdots\right) \)

基本波の振幅は \( 4E/\pi\fallingdotseq 1.27E \)——方形波の振幅 E より大きい点に注意してください。

\( V_1=\dfrac{4E}{\pi\sqrt{2}}\fallingdotseq 0.90E \)
基本波の実効値
振幅を√2で割る
\( V_{rms}=E \)
全体の実効値
方形波なので振幅そのもの
\( \text{ひずみ率}=\dfrac{\sqrt{E^{2}-(0.90E)^{2}}}{0.90E}\fallingdotseq 0.48 \)
ひずみ率
基本波の約48 %もの高調波を含む

方形波は基本波の約48 %もの高調波を含みます——電動機に加えれば、トルク脈動や騒音、余分な損失の原因になります。だから実用インバータはPWM制御が主流なのです。

まとめ

(a)実効値E
io(t)の波形(ア)
id(t)の波形(エ)
答え(a)-(4),(b)-(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・単相インバータの電流波形選択(令和5年度上期):【機械】令和5年度上期B問題16
・単相インバータの電流波形選択(平成24年度):【機械】平成24年度B問題15

📚 次に解くべき関連問題
【機械】平成30年度A問題11(パワエレ41)
【機械】令和5年度上期B問題16(パワエレ43)
【機械】平成22年度A問題10(パワエレ36)
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