パワエレ38【電験3種 機械】単相双方向サイリスタスイッチの運転判定!平成23年 A問題9 完全解説

電験3種 機械科目 パワーエレクトロニクス 平成23年度 A問題9 双方向サイリスタスイッチ!どの運転になる?

今回は平成23年度 機械科目 A問題9を解説します。サイリスタS1,S2で構成された単相双方向スイッチで、両端電圧vthの波形からサイリスタの運転(制御遅れ角の有無)を判定する問題です。

vth=eとなるのは両方off、vth=0となるのはどちらか一方がonのときです。波形から、S1は制御遅れ角αで運転し、S2は(e<0の期間offなので)トリガしないで運転していると判定できます。

目次

平成23年度 機械科目 A問題9:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 パワーエレクトロニクス 平成23年度 A問題9 問題文
平成23年度 機械科目 A問題9 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題9

電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 平成23年度 A問題9

 次の文章は,単相双方向サイリスタスイッチに関する記述である。

 図1は,交流電源と抵抗負荷との間にサイリスタS1,S2で構成された単相双方向スイッチを挿入した回路を示す。図示する電圧の方向を正とし,サイリスタの両端にかかる電圧vthが図2(下)の波形であった。

 サイリスタS1,S2の運転として,このような波形となりえるものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)S1,S2とも制御遅れ角αで運転
(2)S1は制御遅れ角α, S2は制御遅れ角0で運転
(3)S1は制御遅れ角α, S2はサイリスタをトリガ(点弧)しないで運転
(4)S1は制御遅れ角0, S2は制御遅れ角αで運転
(5)S1はサイリスタをトリガ(点弧)しないで, S2は制御遅れ角αで運転

図1 単相双方向サイリスタスイッチ回路と図2 電源電圧・両端電圧波形
図1 単相双方向サイリスタスイッチ回路と図2 電源電圧・両端電圧波形

出題のポイント:スイッチ両端の電圧で導通が分かる

サイリスタの両端電圧 vth を見れば、そのスイッチが導通しているかどうかが分かります導通していれば両端の電圧は0、していなければ電源電圧がそのまま現れる——抵抗負荷だからこそ成り立つ、単純な関係です。

vth の値スイッチの状態負荷の電圧
vth=0S1 か S2 のどちらかが導通電源電圧がそのまま加わる
vth=e(電源電圧)両方とも非導通0(電流が流れない)

スイッチが導通すれば、そこは短絡と同じですから両端の電圧は0。非導通なら電流が流れず、負荷にも電圧がかからないので、電源電圧がまるごとスイッチにかかります

だから vth の波形は、スイッチの導通状態をそのまま映した鏡——「0になっている区間=導通している区間」と読み替えれば済みます。

図1 単相双方向サイリスタスイッチ回路と図2 電源電圧・両端電圧波形
図1 単相双方向サイリスタスイッチ回路と図2 電源電圧・両端電圧波形
単相双方向サイリスタスイッチの両端電圧からS1とS2の運転を判定する要点
vth=eは両方オフ、vth=0はどちらかがオンです。

S1とS2の役割分担

2個のサイリスタは逆並列に接続されています。サイリスタは一方向にしか流せないので、2個を逆向きに並べることで交流を扱えるようにしているのです。

電源電圧担当するサイリスタもう一方は
\( e>0 \)(正の半サイクル)S1逆電圧がかかり導通できない
\( e<0 \)(負の半サイクル)S2同上

それぞれが半サイクルずつを担当します。だからS1とS2は独立に制御でき、片方だけを点弧しないことも可能——本問はまさにその状態です。

波形を読み解く

正の半サイクルでは、途中から vth=0 になっています最初は電源電圧が現れ、制御遅れ角αの位置から0に落ちる——これはS1が角αで点弧したことを示します。

負の半サイクルでは、vth が電源電圧のままです。0になる区間がない——つまりS2は一度も導通していないことになります。

点弧しなければサイリスタは導通しませんから、S2はトリガ(点弧)されていないと判定できます。

平成23年度機械A問題9、S1は制御遅れ角αで点弧、S2は点弧せず答え3
S1は制御遅れ角α、S2は点弧なしなので答えは(3)です。
答え正解は (3) S1は制御遅れ角α、S2はトリガしないで運転です。正の半サイクルだけに電流が流れる、半波の位相制御になっています。

この運転で何が起きるか

片方のサイリスタだけを使うと、負荷には正の半サイクルだけの電流が流れます交流のはずが、直流分を含んだ脈流になってしまう——実用上は好ましくない運転です。

運転負荷電流問題点
S1・S2とも角αで点弧(正常)正負対称の交流なし。交流電力調整装置の標準的な使い方
S1のみ点弧(本問)正の半サイクルのみ。直流分を含む変圧器なら偏磁して励磁電流が急増する

直流分が流れると、変圧器の鉄心が一方向に磁化されます(偏磁)磁束が飽和側に片寄り、励磁電流が急増して過熱・焼損につながる——だから制御回路には、両方のサイリスタが対称に点弧されるような工夫が必要です。

本問のような片側だけの点弧は、故障やゲート回路の不良で起きることがあります波形からその状態を読み取れることは、実務でも意味のある技能——だからこそ試験でも問われるのでしょう。

⏱️ 本番での進め方
① vth=0 なら導通、vth=e なら非導通。
② 正の半サイクルはS1、負の半サイクルはS2が担当。
③ 半サイクルごとに「0になる区間があるか」を確認する。
④ 0にならない半サイクルがあれば、そちらは点弧されていない。

💡 覚え方
「導通すれば両端は0、しなければ電源電圧」——スイッチ両端の電圧は、導通状態の裏返しです。負荷電圧の波形とちょうど逆の形になる——そう気づけば、どちらの波形が示されても読めます

スイッチ両端電圧vthがeまたは0のときのサイリスタ導通状態の読み方
正負の半周期を分け、S1とS2の点弧状態を個別に判定します。

位相制御で電圧はどれだけ下がるのか

本問では波形を読むだけでしたが、制御角αと出力電圧の関係も押さえておきましょう抵抗負荷を両方のサイリスタで正常に制御した場合の式です。

抵抗負荷・全波位相制御の出力電圧(実効値)

\( V=E\sqrt{\dfrac{1}{\pi}\left(\pi-\alpha+\dfrac{\sin 2\alpha}{2}\right)} \)

E は電源電圧の実効値、α は制御角——α=0 なら V=E、α=π なら V=0 になります。

制御角 α出力電圧(電源電圧に対する比)出力電力(最大に対する比)
1.000100 %
60°0.89780 %
90°0.70750 %
120°0.44620 %
180°00 %

α=90°でちょうど電力が半分になります。電圧は0.707倍(1/√2)——電力は電圧の2乗に比例するので、0.5という関係です。

制御角と出力が直線関係にない点に注意してください。0°から60°まではあまり下がらず、90°付近で急に下がる——調光器のつまみが「効き始めるまで反応が鈍い」のは、この特性のせいです。

片側だけ点弧するとどうなるか

本問のようにS1だけを点弧した場合、出力は上の式の半分のエネルギーになります。正の半サイクルしか電流が流れないからです。

ただし前述のとおり、直流分を含むという重大な問題を伴います。抵抗負荷なら直流分が流れても大きな害はありませんが、変圧器や電動機が負荷なら偏磁して過熱します——実用上は避けるべき運転です。

本問が「このような波形となりえるものを選べ」という問い方をしているのは、実用的かどうかではなく、波形から状態を読み取れるかを試しているから。与えられた波形が何を意味するかを、素直に読めばよいのです。

まとめ

S1制御遅れ角αで運転
S2トリガしないで運転
答え(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・出力電圧波形から電力変換回路を選ぶ(令和4年下期):【機械】令和4年度下期A問題10
・出力電圧波形から電力変換回路を選ぶ(平成18年):【機械】平成18年度A問題9

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