今回は平成23年度 機械科目 A問題9を解説します。サイリスタS1,S2で構成された単相双方向スイッチで、両端電圧vthの波形からサイリスタの運転(制御遅れ角の有無)を判定する問題です。
vth=eとなるのは両方off、vth=0となるのはどちらか一方がonのときです。波形から、S1は制御遅れ角αで運転し、S2は(e<0の期間offなので)トリガしないで運転していると判定できます。
平成23年度 機械科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題9
電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 平成23年度 A問題9
次の文章は,単相双方向サイリスタスイッチに関する記述である。
図1は,交流電源と抵抗負荷との間にサイリスタS1,S2で構成された単相双方向スイッチを挿入した回路を示す。図示する電圧の方向を正とし,サイリスタの両端にかかる電圧vthが図2(下)の波形であった。
サイリスタS1,S2の運転として,このような波形となりえるものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)S1,S2とも制御遅れ角αで運転
(2)S1は制御遅れ角α, S2は制御遅れ角0で運転
(3)S1は制御遅れ角α, S2はサイリスタをトリガ(点弧)しないで運転
(4)S1は制御遅れ角0, S2は制御遅れ角αで運転
(5)S1はサイリスタをトリガ(点弧)しないで, S2は制御遅れ角αで運転

出題のポイント:スイッチ両端の電圧で導通が分かる
サイリスタの両端電圧 vth を見れば、そのスイッチが導通しているかどうかが分かります。導通していれば両端の電圧は0、していなければ電源電圧がそのまま現れる——抵抗負荷だからこそ成り立つ、単純な関係です。
| vth の値 | スイッチの状態 | 負荷の電圧 |
| vth=0 | S1 か S2 のどちらかが導通 | 電源電圧がそのまま加わる |
| vth=e(電源電圧) | 両方とも非導通 | 0(電流が流れない) |
スイッチが導通すれば、そこは短絡と同じですから両端の電圧は0。非導通なら電流が流れず、負荷にも電圧がかからないので、電源電圧がまるごとスイッチにかかります。
だから vth の波形は、スイッチの導通状態をそのまま映した鏡——「0になっている区間=導通している区間」と読み替えれば済みます。


S1とS2の役割分担
2個のサイリスタは逆並列に接続されています。サイリスタは一方向にしか流せないので、2個を逆向きに並べることで交流を扱えるようにしているのです。
| 電源電圧 | 担当するサイリスタ | もう一方は |
| \( e>0 \)(正の半サイクル) | S1 | 逆電圧がかかり導通できない |
| \( e<0 \)(負の半サイクル) | S2 | 同上 |
それぞれが半サイクルずつを担当します。だからS1とS2は独立に制御でき、片方だけを点弧しないことも可能——本問はまさにその状態です。
波形を読み解く
正の半サイクルでは、途中から vth=0 になっています。最初は電源電圧が現れ、制御遅れ角αの位置から0に落ちる——これはS1が角αで点弧したことを示します。
負の半サイクルでは、vth が電源電圧のままです。0になる区間がない——つまりS2は一度も導通していないことになります。
点弧しなければサイリスタは導通しませんから、S2はトリガ(点弧)されていないと判定できます。

この運転で何が起きるか
片方のサイリスタだけを使うと、負荷には正の半サイクルだけの電流が流れます。交流のはずが、直流分を含んだ脈流になってしまう——実用上は好ましくない運転です。
| 運転 | 負荷電流 | 問題点 |
| S1・S2とも角αで点弧(正常) | 正負対称の交流 | なし。交流電力調整装置の標準的な使い方 |
| S1のみ点弧(本問) | 正の半サイクルのみ。直流分を含む | 変圧器なら偏磁して励磁電流が急増する |
直流分が流れると、変圧器の鉄心が一方向に磁化されます(偏磁)。磁束が飽和側に片寄り、励磁電流が急増して過熱・焼損につながる——だから制御回路には、両方のサイリスタが対称に点弧されるような工夫が必要です。
本問のような片側だけの点弧は、故障やゲート回路の不良で起きることがあります。波形からその状態を読み取れることは、実務でも意味のある技能——だからこそ試験でも問われるのでしょう。
⏱️ 本番での進め方
① vth=0 なら導通、vth=e なら非導通。
② 正の半サイクルはS1、負の半サイクルはS2が担当。
③ 半サイクルごとに「0になる区間があるか」を確認する。
④ 0にならない半サイクルがあれば、そちらは点弧されていない。
💡 覚え方
「導通すれば両端は0、しなければ電源電圧」——スイッチ両端の電圧は、導通状態の裏返しです。負荷電圧の波形とちょうど逆の形になる——そう気づけば、どちらの波形が示されても読めます。

位相制御で電圧はどれだけ下がるのか
本問では波形を読むだけでしたが、制御角αと出力電圧の関係も押さえておきましょう。抵抗負荷を両方のサイリスタで正常に制御した場合の式です。
| 制御角 α | 出力電圧(電源電圧に対する比) | 出力電力(最大に対する比) |
| 0° | 1.000 | 100 % |
| 60° | 0.897 | 80 % |
| 90° | 0.707 | 50 % |
| 120° | 0.446 | 20 % |
| 180° | 0 | 0 % |
α=90°でちょうど電力が半分になります。電圧は0.707倍(1/√2)——電力は電圧の2乗に比例するので、0.5という関係です。
制御角と出力が直線関係にない点に注意してください。0°から60°まではあまり下がらず、90°付近で急に下がる——調光器のつまみが「効き始めるまで反応が鈍い」のは、この特性のせいです。
片側だけ点弧するとどうなるか
本問のようにS1だけを点弧した場合、出力は上の式の半分のエネルギーになります。正の半サイクルしか電流が流れないからです。
ただし前述のとおり、直流分を含むという重大な問題を伴います。抵抗負荷なら直流分が流れても大きな害はありませんが、変圧器や電動機が負荷なら偏磁して過熱します——実用上は避けるべき運転です。
本問が「このような波形となりえるものを選べ」という問い方をしているのは、実用的かどうかではなく、波形から状態を読み取れるかを試しているから。与えられた波形が何を意味するかを、素直に読めばよいのです。
まとめ
| S1 | 制御遅れ角αで運転 |
| S2 | トリガしないで運転 |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・出力電圧波形から電力変換回路を選ぶ(令和4年下期):【機械】令和4年度下期A問題10
・出力電圧波形から電力変換回路を選ぶ(平成18年):【機械】平成18年度A問題9

コメント