今回は令和6年度下期 機械科目 A問題5を解説します。水車発電機とタービン発電機の回転子構造の違いを問う穴埋め問題です。
回転速度と極数は反比例(\(N_s=120f/p\))。低速の水車機は多極・大直径、高速のタービン機は少極・小直径です。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題5
次の文章は,三相同期発電機に関する記述である。
三相同期発電機は,水車を原動機とする水車発電機や,蒸気タービンを原動機とするタービン発電機などに用いられている。水車発電機では,水車の回転速度が比較的(ア)ため,発電機の極数を(イ)しなければならない。また,水車発電機の回転子は,軸方向に比べて直径が(ウ)なっている。
タービン発電機の回転子は,水車発電機に比べて回転速度が(エ)ので,回転子の機械的強度の関係から,回転子の直径は軸方向の長さに比べて(オ)した設計になっている。空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして正しいものを一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 小さい 小さく 大きく 大きい 大きく (2) 小さい 大きく 大きく 大きい 小さく (3) 小さい 大きく 大きく 小さい 大きく (4) 大きい 大きく 小さく 大きい 小さく (5) 大きい 小さく 小さく 小さい 大きく
出題のポイント:原動機の速度が回転子の形を決める
同期発電機の形は、原動機が何かでほぼ決まります。「水車は遅い、タービンは速い」——この一点から、極数も直径も自動的に決まってしまうのです。
| 水車発電機 | タービン発電機 | |
| 原動機 | 水車(低速) | 蒸気タービン(高速) |
| 回転速度 | 100〜1 000 min−1 程度 | 1 500〜3 600 min−1 |
| 極数 | 多い(8〜48極など) | 少ない(2〜4極) |
| 回転子の形 | 突極形 | 円筒形(非突極形) |
| 直径と軸長 | 直径が大きく軸方向は短い | 直径が小さく軸方向に長い |
| 短絡比 | 0.9〜1.2(鉄機械) | 0.5〜0.7(銅機械) |
| 据付 | 立軸が多い | 横軸 |

空欄を確定する
(ア)(イ):水車は低速だから多極
水車の回転速度は比較的小さい——(ア)=小さい。同じ60 Hz を作るには、遅い分だけ極数を増やす必要があります——(イ)=大きく。
48極——磁極を48個も並べることになる。
2極——磁極は1組だけ。
(ウ):多極だから直径が大きい
48個もの磁極を円周上に並べるには、それだけの円周が必要です。だから直径が大きくなります——(ウ)=大きく。軸方向には短くてよいので、円盤のような形になります。
(エ)(オ):高速だから直径を小さく
タービン発電機は回転速度が大きい——(エ)=大きい。すると遠心力が問題になります。
3 600 min−1・直径1.1 m なら、周速は約207 m/s——音速の6割にもなります。これ以上直径を大きくすると、回転子自身が遠心力で壊れます——(オ)=小さく。


突極形と円筒形——形の違いが特性の違いになる
水車発電機の回転子は突極形、タービン発電機は円筒形です。この形の違いは、見た目だけの問題ではありません。
| 突極形(水車発電機) | 円筒形(タービン発電機) | |
| 磁極の作り | 出っ張った磁極が並ぶ | 円筒に溝を切って巻線を埋め込む |
| 空隙 | 場所によって違う | ほぼ均一 |
| リアクタンス | 方向で違う(xd≠xq) | ほぼ同じ(xd≒xq) |
| 特有のトルク | リラクタンストルクが加わる | ほぼ無視できる |
| 機械的強度 | 高速には向かない | 高速に耐える |
突極形では、磁極のある方向とない方向で磁気抵抗が違います。磁極の中心を通る方向(d軸)は空隙が狭く磁束が通りやすいのに対し、磁極と磁極の間(q軸)は空隙が広く通りにくい——この差がリアクタンスの違いを生みます。
その結果、突極形には「リラクタンストルク」という余分なトルクが加わります。磁気抵抗の小さい向きへ引き寄せられる力で、界磁を切っても残るトルクです。円筒形は空隙が均一なので、この効果はほとんどありません。
円筒形が高速に耐えるのは、出っ張りがないからです。突極形は磁極が遠心力で吹き飛ばされる危険があるのに対し、円筒形は溝に巻線を埋め込んでくさびで押さえるので、遠心力に強い——高速機が円筒形なのは必然です。
形が短絡比まで決めている
水車発電機の短絡比が大きく、タービン発電機が小さい——これも形から説明できます。
水車発電機は直径が大きく、鉄心の量も多くなります。磁束を多く通せるので、少ない巻数でも必要な電圧が出せる——巻数が少なければリアクタンスも小さく、短絡比は大きくなります。いわゆる鉄機械です。
タービン発電機は細長く、鉄心が少ない。磁束が限られるので巻数を増やして電圧を稼ぐ——巻数が多いのでリアクタンスも大きく、短絡比は小さくなります。銅機械と呼ばれる所以です。
「原動機の速度 → 極数 → 直径 → 鉄の量 → 短絡比 → 電圧変動率と安定度」——1本の因果でつながっていることが分かります。同期発電機の性質を問われたら、まず「水車かタービンか」を思い浮かべるとよいでしょう。
⏱️ 本番での進め方
① Ns=120f/p——低速なら多極、多極なら大直径。
② 高速機は遠心力のため直径を小さくするしかない。
③ 突極形=水車(低速)、円筒形=タービン(高速)。
④ 直径が大きい=鉄が多い=短絡比が大きい(鉄機械)。
💡 覚え方
「低速水車=多極・大直径・突極形・鉄機械/高速タービン=少極・小直径・円筒形・銅機械」。Ns=120f/p で速度と極数は反比例、高速では遠心力のため直径を小さくするしかない。突極形は xd≠xq でリラクタンストルクが加わる。
⚠️ よくある間違い
タービン発電機は高速だから直径も大きいだろうと考えるのが典型です。高速だからこそ遠心力を抑えるために直径を小さくする——速さと大きさは逆です。もう一つは(イ)で「極数を小さく」とすること——低速なら極数は多くなります。
形の違いは冷却の違いにもなる
タービン発電機は「小さな体積に大きな出力」を詰め込んだ機械です。そのぶん発熱が集中するので、冷却が設計上の大問題になります。
| 水車発電機 | タービン発電機 | |
| 体積あたりの出力 | 小さい(大きな体に分散) | 大きい(細長い体に集中) |
| 表面積 | 大きい(直径が大きい) | 小さい |
| 主な冷却方式 | 空気冷却で足りることが多い | 水素冷却・水冷却が必要 |
なぜ水素を使うのか——2つの理由があります。
| 水素の性質 | 空気と比べて | 何が良くなるか |
| 密度が小さい | 約1/14 | 風損が大幅に減る(効率が上がる) |
| 熱伝導率が高い | 約7倍 | よく冷える |
高速回転する機械では、空気をかき回すだけで大きな損失(風損)が生じます。密度の小さい水素に置き換えれば、その損失が激減する——しかも冷却性能まで上がるという一石二鳥です。
さらに大容量になると、固定子巻線の中に中空の導体を使い、そこへ純水を流す「水冷却」も併用されます。導体の中を直接冷やすので、最も効率のよい冷却方式です。電気を通す巻線に水を流すため、純水(導電率の極めて低い水)を使うのが要点になります。
水車発電機は低速で直径が大きく、表面積も広いので、空気を送るだけで冷却が間に合うことが多い——ここでも「形が性能を決めている」のが分かります。
まとめ
| (ア) | 小さい |
| (イ) | 大きく |
| (ウ) | 大きく |
| (エ) | 大きい |
| (オ) | 小さく |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・同期発電機の種類と構造:【機械】平成30年度A問題5
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