変圧器の角変位とは?Δ-Y結線で30°ずれる理由と、並行運転できる組み合わせ【電験3種 機械】

変圧器の角変位|Δ-Y結線で30°ずれる理由・並行運転の条件(電験3種 機械 学習ガイド)

三相変圧器の問題で出てくる「角変位」。「Δ-Yは30°」と覚えていても、なぜ30°なのか、進むのか遅れるのかを聞かれると迷う人が多い論点です。

この記事では、角変位の意味から、Δ-Y結線で30°ずれるしくみ、電圧比、並行運転できる組み合わせまでを、ベクトル図を使って一本の流れで整理します。

この記事でわかること
✓ 角変位とは何か
✓ Δ-Y・Y-Δ結線で30°ずれる理由
✓ Δ-Y結線の電圧比に √3 が付く理由
✓ 並行運転できる結線の組み合わせ

よくあるつまずき:「Y-Δは30°遅れ」のように向きまで丸暗記すると、結線図や条件が変わったときに答えを外します。大事なのは「なぜ30°ずれるのか」と「向きは結線で決まる」の2点です。

目次

角変位とは:一次と二次の「線間電圧」の位相差

角変位とは、三相変圧器の一次側と二次側で、対応する線間電圧どうしの位相のずれを表す角度です。単相変圧器(減極性)では一次と二次の電圧は同じ向きですが、三相変圧器では結線の組み合わせによって位相がずれることがあります。

結線角変位理由
Δ-Δ0°一次も二次も、線間電圧=巻線の電圧
Y-Y0°一次も二次も同じだけずれるので打ち消し合う
Δ-Y30°片側だけ、線間電圧と巻線電圧の関係が変わる
Y-Δ30°同上

つまり、同じ種類の結線どうしは 0°、違う種類の結線どうしは 30°ずれます。次に、この30°がどこから来るのかを見ていきます。

なぜ30°ずれるのか①:Y結線の線間電圧は30°進む

Y結線では、線間電圧は2つの相電圧の差になります。

\[ \dot{V}_{ab} = \dot{E}_a – \dot{E}_b \]

Y結線の電圧ベクトル図。Ea、Eb、Ecが120°ずつずれ、Eaに−Ebを足した線間電圧Vabは相電圧の√3倍で、Eaより30°進む
線間電圧 Vab は、相電圧の √3 倍の大きさで、Ea より 30° 進む

ベクトル図で \(\dot{E}_a\) に \(-\dot{E}_b\) を足すと、線間電圧 \(\dot{V}_{ab}\) は相電圧の \(\sqrt{3}\) 倍の大きさになり、向きは \(\dot{E}_a\) より 30° 進みます。一方、Δ結線では巻線の両端がそのまま線につながっているので、線間電圧=巻線の電圧で、位相のずれはありません。

なぜ30°ずれるのか②:Δ-Y結線で起きていること

変圧器の一次巻線と二次巻線は同じ鉄心に巻かれているので、巻線どうしの電圧は同じ向き(同相)です。Δ-Y結線で順に追うと、次のようになります。

  1. 一次側(Δ):線間電圧 \(\dot{V}_{AB}\) = 一次巻線の電圧
  2. 二次巻線の電圧 \(\dot{E}_a\) は、一次巻線と同じ向き
  3. 二次側(Y):線間電圧 \(\dot{V}_{ab}\) は \(\dot{E}_a\) より 30° 進む
  4. 結果:一次と二次の線間電圧どうしで 30° のずれが残る
Δ-Y結線の電圧ベクトル図。一次側Δ結線の線間電圧VABと二次巻線の電圧Eaは同じ向きで、二次側Y結線の線間電圧VabはEaより30°進む
同じ鉄心の巻線(VAB と Ea)は同じ向き。Y側の線間電圧だけが 30° ずれる
一次と二次の線間電圧の波形。二次の線間電圧が一次より30°早く最大になる
波形で見ると、二次の線間電圧が一次より 30° 早く最大になる(大きさは1にそろえて表示)

この例では二次が30°進みますが、巻線のつなぎ方や端子の対応によっては、30°遅れにもなります。

つまずきポイント:進むか遅れるかは、巻線の極性・端子の対応・相順で決まります。試験では結線図と条件(減極性、相順など)が示されるので、「Y-Δは必ず遅れ」と暗記せず、図から読み取る練習をしましょう。

Δ-Y結線の電圧比:√3 が付く理由

巻数比を \(a = N_1/N_2\) とすると、巻線の電圧の比は \(a\) です。ただしY結線側では線間電圧が巻線電圧の \(\sqrt{3}\) 倍になるので、線間電圧の比には √3 が付きます。

結線一次と二次の線間電圧の比 V₁/V₂
Δ-Δa
Y-Ya
Δ-Ya/√3
Y-Δ√3 a

計算例:一次側がΔ結線で線間電圧 6600 V、巻数比 a=30 のΔ-Y変圧器では、二次巻線の電圧は 6600/30=220 V、二次の線間電圧は 220×√3 ≒ 381 V です。

\[ \frac{V_1}{V_2} = \frac{a}{\sqrt{3}} = \frac{30}{\sqrt{3}} \fallingdotseq 17.3 \]

並行運転と角変位

2台以上の変圧器を並列につないで運転する(並行運転)には、次の条件があります。

  • 極性が一致していること
  • 巻数比(一次・二次の定格電圧)が等しいこと
  • 百分率インピーダンスが等しいこと
  • 抵抗とリアクタンスの比が等しいこと
  • 三相の場合は、相回転と角変位が等しいこと
並行運転できる結線の組み合わせ表。角変位0°のΔ-ΔとY-Y、角変位30°のΔ-YとY-Δは、それぞれ同じグループ内なら並行運転でき、グループが違うと並行運転できない
角変位が同じ組み合わせだけが並行運転できる

角変位が同じ組み合わせ(0°どうし、30°どうし)なら並行運転できます。Δ-Δ と Y-Y、Δ-Y と Y-Δ は、結線は違っても角変位が同じなので並行運転できます(Δ-Y と Y-Δ は、角変位の向きもそろうように接続します)。一方、Δ-Δ と Δ-Y のように角変位が違う組み合わせは、並行運転できません。

角変位が30°違う2台の変圧器の二次電圧のベクトル図。電圧の差は約0.52倍で、%Zが3%どうしなら循環電流は定格の約8.6倍
角変位が 30° 違うと、二次電圧の差は電圧の約 52 % にもなる

角変位が30°違う2台をつなぐと、二次電圧の差は \(2\sin 15^\circ \fallingdotseq 0.52\)、つまり電圧の約52%になります。%Zが3%どうしの変圧器なら、2台の間を流れる循環電流は次のとおりです。

\[ \frac{2\sin 15^\circ}{0.03 + 0.03} \fallingdotseq \frac{0.518}{0.06} \fallingdotseq 8.6 \]

定格電流の約8.6倍という、変圧器を焼損するほどの電流が、負荷とは関係なく流れ続けることになります。これが、角変位の違う変圧器を並行運転してはいけない理由です。

補足:三巻線変圧器(Y-Y-Δ)のΔ巻線

Y-Y結線の変圧器では、鉄心を磁化するのに必要な第3高調波の電流の通り道がないため、磁束や誘導起電力がひずみやすくなります。そこで、第3の巻線としてΔ結線の巻線(三次巻線)を加えた、Y-Y-Δ結線の三巻線変圧器がよく使われます。Δ巻線の中を第3高調波の電流が循環することで、ひずみが抑えられます。三次巻線には、調相設備や所内電源をつなぐ用途もあります。

よくある間違い

  • 角変位を相電圧どうしの位相差だと思う:角変位は、線間電圧どうしの位相差です。
  • 「Y-Δは必ず30°遅れ」と覚える:進みか遅れかは、結線・極性・相順で決まります。
  • Δ-Yの電圧比を巻数比 a のままにする:線間電圧の比は a/√3 です。
  • Δ-Δ と Y-Y は並行運転できないと思う:どちらも角変位 0° なので、並行運転できます。

解くときのコツ:結線の問題は、まず「一次・二次の巻線の電圧は同じ向き」を押さえ、そのうえで「Y側の線間電圧は巻線の電圧より30°ずれる」を当てはめると、ベクトル図を素早く描けます。

過去問で確かめる

この記事の内容は、次の過去問で実際に問われています。

変圧器のほかの論点は変圧器の頻出公式と論点まとめに、等価回路と電圧変動率は変圧器の漏れリアクタンスの解説にまとめています。

まとめ

  • 角変位は、一次と二次の線間電圧どうしの位相差。
  • 同じ種類の結線どうしは 0°、Δ-Y・Y-Δ は 30° ずれる。
  • 30°の理由は、Y結線の線間電圧が巻線の電圧より30°ずれるから(Δ結線は線間電圧=巻線の電圧)。
  • 進みか遅れかは、結線・極性・相順で決まる。
  • 線間電圧の比は、Δ-Y が a/√3、Y-Δ が √3a。
  • 並行運転には角変位が等しいことが必要。30°違うと、定格の数倍の循環電流が流れる。
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