絶縁が劣化した一相から流れる電流と、B種接地線を流れる電流を区別します。中性点の対地電圧を置くと、3相の対地静電容量を含む式を順番に導けます。
問題文と選択肢|【電験3種】令和8年度上期 法規 問12

問題文
問12 図に示すような,相電圧E[V],周波数f[Hz]の対称三相3線式低圧電路があり,変圧器の中性点にB種接地工事が施されている。B種接地工事の接地抵抗値をRB[Ω],電路の一相当たりの対地静電容量をC[F]とする。
この電路の絶縁抵抗が劣化により,電路の一相のみが絶縁抵抗値RG[Ω]に低下した。このとき,次の(a)及び(b)に答えよ。
ただし,上記以外のインピーダンスは無視するものとする。

(a) 劣化により一相のみが絶縁抵抗値RG[Ω]に低下したとき,B種接地工事の接地線に流れる電流の大きさをIB[A]とする。このIBを表す式として,正しいのは次のうちどれか。
ただし,他の相の対地コンダクタンスは無視するものとする。
(b) 相電圧Eを100 V,周波数fを50 Hz,対地静電容量Cを0.1 μF,絶縁抵抗値RGを100 Ω,接地抵抗値RBを15 Ωとするとき,上記(a)のIBの値[A]として,最も近いのは次のうちどれか。
出典:電気技術者試験センター・公式問題PDF/公式解答PDF
解答・解説
解答
(a)(5)
(b)(1)|0.87 A
- STEP1中性点の対地電圧と3相の電圧を置く対称三相では相電圧のベクトル和が0
- STEP2大地へ流れる電流を合計し、接地線電流の式を導く(a)容量電流の和は3jωCVn
- STEP3μFをFに直して数値を代入する(b)0.1 μF=1.0×10⁻⁷ F


STEP1|中性点の対地電圧と3相の電圧を置く
大地を電圧0の基準とし、中性点の対地電圧をVnとします。中性点から見た相電圧をEa、Eb、Ecとすると、各相の対地電圧はVn+Eaなどになります。
相電圧は位相が120度ずつ異なるため、ベクトルとして足すと0です。単に大きさEを3倍することはできません。
対称三相の関係
\[\underline E_a+\underline E_b+\underline E_c=0\]
下線は交流の位相を含む複素数(フェーザ)を表します。以後、ω=2πf、jは虚数単位とします。
STEP2|大地へ流れる電流を合計し、接地線電流の式を導く
中性点から大地への電流はVn/RB、劣化したa相から大地への電流は(Vn+Ea)/RGです。コンデンサの電流はjωC×電圧なので、各相の容量電流も足します。
大地へ向かう電流の和=0
\[\frac{\underline V_n}{R_B}+\frac{\underline V_n+\underline E_a}{R_G}\]\[+j\omega C\{3\underline V_n+\underline E_a+\underline E_b+\underline E_c\}=0\]
相電圧の和は0なので、容量電流の項は3jωCVnとなります。整理して、接地線電流Vn/RBを求めます。
接地線電流の複素数表示
\[\underline I_B=-\frac{\underline E_a}{R_B+R_G+3j\omega C R_B R_G}\]
符号は電流の向きの取り方によります。問題が求める大きさは複素数の絶対値です。実数部分と虚数部分をそれぞれ2乗して足し、平方根を取ります。
電流の大きさ
\[I_B=\frac{E}{\sqrt{(R_G+R_B)^2+(3\omega C R_B R_G)^2}}\]\[=\frac{E}{\sqrt{(R_G+R_B)^2+36\pi^2f^2C^2R_B^2R_G^2}}\]
したがって (a)(5)。
RGを流れる電流と、RBの接地線電流は同じとは限りません。対地静電容量にも電流が流れるためです。

STEP3|μFをFに直して数値を代入する
単位をそろえる
\[C=0.1\times10^{-6}=1.0\times10^{-7}\ \mathrm F\]
分母の実数部分と容量による項
\[R_G+R_B=100+15=115\ \Omega\]\[3\omega C R_B R_G=6\pi\times50\times10^{-7}\times15\times100=0.14137\ \Omega\]
接地線電流
\[I_B=\frac{100}{\sqrt{115^2+0.14137^2}}=0.86956\ \mathrm A\]
最も近いのは (b)(1)0.87 A。
この数値では容量による項は115 Ωに比べて小さいため、100/115≒0.87 Aとも整合します。ただし、(a)の一般式から容量の項を省いてよいという意味ではありません。

最後に、3つだけ確認
中性点の対地電圧Vnを置き、各相の対地電圧をVn+相電圧で表す。
3相の相電圧の和は0。容量電流の合計には3jωCVnが残る。
求めるのはB種接地線電流の大きさ。0.1 μFは1.0×10⁻⁷ F。

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