変圧器の漏れリアクタンスとは?等価回路・一次換算・短絡試験まで「なぜそうなるか」で整理【電験3種 機械】

変圧器の漏れリアクタンス|等価回路・一次換算・短絡試験(電験3種 機械 学習ガイド)

変圧器の問題で「漏れリアクタンス」という言葉が出てきて、手が止まったことはありませんか。等価回路の図にはさらっと \(x_1\)、\(x_2\) と書かれていますが、それが何を表していて、なぜ抵抗と直列に入るのかが分からないと、一次換算も電圧変動率も「公式の暗記」になってしまいます。

この記事では、漏れリアクタンスの正体から始めて、等価回路・一次換算・短絡試験・電圧変動率までを一本の流れで整理します。

この記事でわかること
✓ 漏れリアクタンスの正体と、抵抗との違い
✓ E=4.44fNΦm の導き方
✓ 一次換算でインピーダンスが a² 倍になる理由
✓ 短絡試験・電圧変動率と漏れリアクタンスの関係

よくあるつまずき:等価回路の形だけを暗記していると、一次換算で \(a\) を掛けるのか \(a^2\) を掛けるのか、問題ごとに迷うことになります。「漏れリアクタンスとは何か」から押さえておくと、換算や電圧変動率の公式が一本の流れでつながります。

目次

漏れリアクタンスとは:二次側まで届かない磁束

変圧器は、一次巻線に流れる電流が鉄心に磁束をつくり、その磁束が二次巻線を貫くことで電圧を伝えます。このとき、磁束は2種類に分かれます。

磁束通り道はたらき
主磁束 \(\Phi\)鉄心を通り、一次・二次の両方の巻線を貫く二次側に電圧を伝える(変圧器の本来の仕事)
漏れ磁束鉄心の外(空気中)を通り、片方の巻線だけを貫く相手の巻線に届かず、自分の巻線にだけ電圧を生じる
変圧器の主磁束と漏れ磁束。主磁束は鉄心を通って一次・二次の両方の巻線を貫き、漏れ磁束は片方の巻線だけを貫いて空気中を戻る
主磁束は両方の巻線を貫き、漏れ磁束は片方の巻線だけを貫く

漏れ磁束は、巻線に流れる電流に比例して生じ、その巻線にだけ逆向きの電圧を生じます。これは、巻線と直列にコイル(インダクタンス)がつながっているのと同じふるまいです。このコイルのリアクタンスが、漏れリアクタンス \(x_1\)(一次側)、\(x_2\)(二次側)です。

「漏れ」というと損失のように聞こえますが、漏れ磁束のエネルギーは磁界にたくわえられて、また回路に戻ってきます。電力を消費しないので、抵抗ではなくリアクタンスとして表されます。損失(銅損)を表すのは、巻線抵抗 \(r_1\)、\(r_2\) のほうです。

誘導起電力 E=4.44fNΦm はどこから来るのか

主磁束が巻線に生じる電圧(誘導起電力)は、ファラデーの法則 \(e = N\dfrac{d\Phi}{dt}\) から求められます。磁束が \(\Phi = \Phi_m \sin\omega t\) と正弦波で変化するとき、

\[ e = N\frac{d\Phi}{dt} = \omega N \Phi_m \cos\omega t \]

最大値は \(\omega N \Phi_m = 2\pi f N \Phi_m\) です。実効値は最大値を \(\sqrt{2}\) で割るので、

\[ E = \frac{2\pi}{\sqrt{2}} f N \Phi_m \fallingdotseq 4.44\, f N \Phi_m \]

4.44 は \(2\pi/\sqrt{2}\) を計算した値です。覚えるのではなく、「ファラデーの法則を微分して、実効値にしただけ」と理解しておくと忘れません。

磁束Φ=Φm sinωtと誘導起電力e=Em cosωtの波形。eはΦより90°進み、実効値EはEm/√2
磁束と誘導起電力の波形:磁束の変化が最も速い瞬間に、誘導起電力が最大になる

グラフを見ると、磁束が最大になる瞬間(\(\omega t = 90^\circ\))には誘導起電力は 0 で、磁束が 0 を横切る瞬間(\(\omega t = 0^\circ, 180^\circ\))に誘導起電力が最大になっています。誘導起電力は「磁束の大きさ」ではなく「磁束の変化の速さ」に比例するためです。

計算例:周波数 60 Hz、巻数 200、磁束の最大値 0.005 Wb のとき、\(E = 4.44 \times 60 \times 200 \times 0.005 \fallingdotseq 266\) V です。

一次と二次は同じ主磁束を共有しているので、\(E_1 : E_2 = N_1 : N_2\) になります。これが巻数比 \(a = N_1/N_2\) です。

等価回路の部品は、それぞれ何を表しているか

実際の変圧器を、理想変圧器(損失も漏れもない変圧器)に部品を付け足して表したものが等価回路です。部品は次の3グループに分けると整理しやすくなります。

部品表しているものつながり方
巻線抵抗 \(r_1\)、\(r_2\)巻線の電気抵抗。電流の2乗に比例する銅損の原因巻線と直列
漏れリアクタンス \(x_1\)、\(x_2\)漏れ磁束による電圧降下巻線と直列
励磁アドミタンス(\(g_0\)、\(b_0\))励磁電流(鉄損電流+磁化電流)。\(g_0\) が鉄損、\(b_0\) が鉄心の磁化を表す電源と並列

直列の部品(\(r\)、\(x\))は負荷電流が流れるほど影響が大きくなり、並列の励磁回路は電圧がかかっていれば負荷に関係なく電流が流れます。「銅損は負荷によって変わり、鉄損は負荷によらずほぼ一定」という性質は、このつながり方の違いから来ています。

一次換算:なぜインピーダンスは a² 倍なのか

等価回路を計算するとき、一次側と二次側で電圧の大きさが違うままでは扱いにくいので、二次側の量を一次側から見た値に置き換えます。これが一次換算です。

換算の決まりは「電力(銅損)が変わらないようにする」ことです。電圧は \(a\) 倍、電流は \(1/a\) 倍になるので、銅損 \(I^2 r\) を同じに保つには、

\[ \left(\frac{I_2}{a}\right)^2 r_2′ = I_2^{\,2}\, r_2 \quad\Longrightarrow\quad r_2′ = a^2 r_2 \]

漏れリアクタンスや負荷のインピーダンスも同じで、一次側から見ると \(a^2\) 倍になります。

量二次 → 一次に換算一次 → 二次に換算
電圧\(a\) 倍\(1/a\) 倍
電流\(1/a\) 倍\(a\) 倍
抵抗・リアクタンス・インピーダンス\(a^2\) 倍\(1/a^2\) 倍
電力変わらない変わらない
一次換算の前後の回路。実際の回路の理想変圧器が消え、二次側のr2・x2・ZLがそれぞれa²倍になって一次側に移る
一次換算すると理想変圧器が消え、二次側の部品は a² 倍になって一次側に並ぶ

図のように一次換算すると、回路の途中にあった理想変圧器がなくなり、すべての部品を1つの回路としてオームの法則で計算できるようになります。一次側の \(r_1\)、\(x_1\) はそのままで、二次側の部品だけが \(a^2\) 倍になる点に注意してください。

計算例:一次 6600 V/二次 210 V の変圧器で、二次側の巻線抵抗が 0.02 Ω、漏れリアクタンスが 0.03 Ω のとき、\(a = 6600/210 \fallingdotseq 31.43\)、\(a^2 \fallingdotseq 987.8\) なので、

\[ r_2′ \fallingdotseq 987.8 \times 0.02 \fallingdotseq 19.8\ \Omega, \qquad x_2′ \fallingdotseq 987.8 \times 0.03 \fallingdotseq 29.6\ \Omega \]

二次側では小さな値でも、一次側から見ると大きな値になります。高電圧側ほど電流が小さいので、同じ電力を表すには大きなインピーダンスになる、と考えると納得しやすいはずです。

つまずきポイント:換算で迷ったら「電力を変えない」に戻りましょう。二次 → 一次の換算では、電圧は \(a\) 倍、電流は \(1/a\) 倍と逆向きに変わるので、その積である電力は変わりません。インピーダンスは「電圧 ÷ 電流」なので \(a \div (1/a) = a^2\) 倍です。こう考えれば、換算の表を丸暗記しなくても毎回導けます。

簡易等価回路(L形):励磁回路を電源側へ移してよい理由

励磁電流は、定格電流のおよそ数%しか流れません。そのため、励磁回路を電源側の端に移しても、計算結果はほとんど変わりません。こうして描き直したものが簡易等価回路(L形等価回路)です。

励磁回路を端に移すと、直列の部品がひとまとめにでき、

\[ r = r_1 + r_2′, \qquad x = x_1 + x_2′ \]

変圧器の簡易等価回路(L形・一次換算)。電源側に励磁回路g0・b0、直列にr=r1+r2′とx=x1+x2′
簡易等価回路(L形):励磁回路を電源側に移すと、直列の部品をひとまとめにできる

となります。電験3種の計算問題の多くは、この簡易等価回路で解けます。

短絡試験と無負荷試験:等価回路の値はどうやって測るか

等価回路の部品の値は、2つの試験で求めます。どちらの試験で何が分かるのかは、試験の条件から考えると覚えやすくなります。

試験条件入力電力の中身求まるもの
短絡試験二次側を短絡し、定格電流が流れるまで低い電圧をかけるほぼ銅損(電圧が低いので鉄損は無視できる)\(r\)、\(x\)(漏れインピーダンス)
無負荷試験二次側を開放し、定格電圧をかけるほぼ鉄損(電流が小さいので銅損は無視できる)励磁アドミタンス

計算例(短絡試験):定格 50 kVA、一次 6600 V の変圧器で、短絡試験のときに一次側の電圧が 198 V、入力が 600 W だったとします。

  1. 定格電流:\(I_n = 50000/6600 \fallingdotseq 7.58\) A
  2. 漏れインピーダンス:\(Z = 198/7.58 \fallingdotseq 26.1\ \Omega\)
  3. 抵抗:入力はほぼ銅損なので \(r = 600/7.58^2 \fallingdotseq 10.5\ \Omega\)
  4. 漏れリアクタンス:\(x = \sqrt{Z^2 – r^2} \fallingdotseq \sqrt{26.1^2 – 10.5^2} \fallingdotseq 24.0\ \Omega\)

このときの一次電圧 198 V は、定格電圧の 3%にあたります。これがこの変圧器の百分率インピーダンス(%Z)です。

電圧変動率:漏れリアクタンスが効いてくる場面

負荷をつなぐと、直列の \(r\) と \(x\) で電圧が下がり、二次電圧が無負荷のときより低くなります。その割合が電圧変動率 \(\varepsilon\) で、遅れ力率の負荷では次の近似式で求めます。

\[ \varepsilon \fallingdotseq p\cos\theta + q\sin\theta \]

\(p\) は百分率抵抗降下、\(q\) は百分率リアクタンス降下です。上の短絡試験の例では、

\[ p = \frac{7.58 \times 10.5}{6600} \times 100 \fallingdotseq 1.2\ \%, \qquad q = \frac{7.58 \times 24.0}{6600} \times 100 \fallingdotseq 2.75\ \% \]

力率 0.8(遅れ)の負荷なら \(\sin\theta = 0.6\) なので、\(\varepsilon \fallingdotseq 1.2 \times 0.8 + 2.75 \times 0.6 \fallingdotseq 2.6\) %です。検算として \(\sqrt{p^2 + q^2} = \sqrt{1.2^2 + 2.75^2} \fallingdotseq 3.0\) %となり、%Z と一致します。

電圧変動率のベクトル図(力率0.8遅れ)。V2′の先にIrを電流と同じ向き、Ixを電流より90°進む向きに加えるとV1′になり、V2′方向の成分がIr cosθ+Ix sinθ
電圧変動率のベクトル図:Ir と Ix を V2′ の方向に投影した長さが、電圧変動率になる

ベクトル図で見ると、近似式の意味がよく分かります。二次電圧 \(V_2’\) の先に、電流と同じ向きの \(Ir\) と、電流より 90° 進んだ向きの \(Ix\) を加えると一次電圧 \(V_1’\) になります。このうち \(V_2’\) の方向の成分 \(Ir\cos\theta + Ix\sin\theta\) が、電圧の上がり分(電圧変動率)にあたります。

この例のように、多くの変圧器では \(q\) のほうが \(p\) より大きく、遅れ力率の負荷では漏れリアクタンスが電圧変動率の大半を占めます。

漏れリアクタンスは、小さければよいわけではない

電圧変動率だけを考えると、漏れリアクタンスは小さいほうがよく見えます。しかし、変圧器の二次側で短絡事故が起きたとき、短絡電流を抑えているのも漏れインピーダンスです。短絡電流は %Z におよそ反比例し、%Z が 3%なら定格電流の約33倍になります。

漏れリアクタンス(%Z)電圧変動率短絡電流
小さい小さい(よい)大きい(遮断器の負担が大きい)
大きい大きい(よくない)小さい(短絡に強い)
百分率インピーダンス%Zと電圧変動率・短絡電流の関係のグラフ。%Zが大きいほど電圧変動率は大きく、短絡電流は小さい。%Z=3%で電圧変動率約2.6%、短絡電流は定格の約33倍
%Z を大きくすると電圧変動率は大きくなり、短絡電流は小さくなる(記事の例:%Z = 3 %)

実際の変圧器は、この2つのバランスを考えて設計されています。「漏れ=悪いもの」と覚えてしまうと、論説問題で引っかかりやすいので注意してください。

よくある間違い

  • 換算の向きを逆にする:二次 → 一次は \(a^2\) 倍、一次 → 二次は \(1/a^2\) 倍。「高電圧側から見るとインピーダンスは大きい」と覚えておくと、向きを間違えません。
  • 短絡試験の入力を鉄損と取り違える:短絡試験は電圧が低いので鉄損は無視でき、入力は銅損です。無負荷試験はその逆です。
  • 進み力率でも同じ符号で計算する:\(\varepsilon \fallingdotseq p\cos\theta + q\sin\theta\) は遅れ力率の式です。進み力率では \(q\sin\theta\) を引きます。
  • 漏れリアクタンスを損失だと思う:漏れ磁束は電力を消費しません。損失は巻線抵抗による銅損と、鉄心の鉄損です。

解くときのコツ:変圧器の計算問題は、問題文を読んだら最初に簡易等価回路を描き、与えられた値が一次側・二次側のどちらの値かを図に書き込んでから計算しましょう。換算の取り違えと、短絡試験・無負荷試験の取り違えの両方を防げます。

過去問で確かめる

この記事の内容は、次の過去問で実際に問われています。読み終えたら、ぜひ解いてみてください。

変圧器のほかの論点は、変圧器の頻出公式と論点まとめにまとめています。

まとめ

  • 漏れリアクタンスは、相手の巻線に届かない漏れ磁束による電圧降下を、直列のコイルとして表したもの。電力は消費しない。
  • \(E = 4.44 fN\Phi_m\) は、ファラデーの法則を微分して実効値にした式。4.44 は \(2\pi/\sqrt{2}\)。
  • 一次換算は「電力を変えない」が原則。インピーダンスは \(a^2\) 倍。
  • 短絡試験で \(r\) と \(x\)、無負荷試験で励磁回路が求まる。
  • 遅れ力率では、漏れリアクタンスが電圧変動率の大半を占める。一方で、短絡電流を抑える役目もある。
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