電験3種の機械科目で頻出の直流分巻電動機の速度特性。本記事では、平成28年度 A問題1で問われた、端子電圧を変えたときの回転速度を求める計算問題を解説します。
カギは \( V=E+I_aR_a \) と \( E\propto n \)。界磁電流を同じに調整するので磁束は一定、定トルク負荷なので電機子電流も一定です。
平成28年度 機械科目 A問題1:問題文と選択肢
長い問題文から「一定」を意味する条件を2つ拾うところから始めます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題1
電験3種 機械科目 【直流機】 平成28年度 A問題1
電機子巻線抵抗が 0.2 [Ω] である直流分巻電動機がある。界磁抵抗器で界磁電流を調整でき、定トルク負荷が接続されている(要求トルクは回転速度によらない一定値)。負荷を接続した状態で端子電圧を 100 [V] として運転したところ、回転速度は 1500 [min⁻¹]、電機子電流は 50 [A] であった。この状態から、端子電圧を 115 [V] に変化させ、界磁電流を端子電圧が 100 [V] のときと同じ値に調整したところ、回転速度が変化し最終的にある値で一定となった。この電動機の最終的な回転速度の値 [min⁻¹] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、電機子電流の最終的な値は端子電圧が 100 [V] のときと同じである。また、電機子反作用及びブラシによる電圧降下は無視できるものとする。(1) 1290 (2) 1700 (3) 1730 (4) 1750 (5) 1950
出題のポイント:条件文を2つの「一定」に翻訳する
この問題は長い問題文の中に「一定」を意味する条件が2つ隠されているのが山場です。逆に言えば、その2つを見つけてしまえば計算は割り算1回で終わります。
1つ目は「界磁電流を端子電圧が100 V のときと同じ値に調整した」——これは磁束 φ が一定という意味です。分巻電動機は端子電圧を上げると界磁電流も増えてしまうので、界磁抵抗器でわざわざ元の値に戻したと書いてあるわけです。
2つ目は「定トルク負荷」+「電機子電流の最終的な値は端子電圧が100 V のときと同じ」——電機子電流 Ia が50 A のままです。T=kTφIa で φ が一定なら、トルクが同じ=電流が同じ。念のため問題文が明示までしてくれています。

磁束と電流が固定されると何が起きるか
φ と Ia が両方とも固定されると、速度の式で動けるのは V だけになります。しかも IaRa=50×0.2=10 V も固定なので、端子電圧を上げたぶんがそのまま逆起電力の増加になる——これがこの問題の構造です。
| 端子電圧100 V | 端子電圧115 V | |
| 電機子電流 Ia | 50 A | 50 A(同じ) |
| 抵抗降下 IaRa | 50×0.2=10 V | 10 V(同じ) |
| 逆起電力 E=V−IaRa | 90 V | 105 V |
| 磁束 φ | 一定(界磁電流を調整) | 一定 |
| 回転速度 n ∝ E | 1500 min-1 | ? |
端子電圧は15 V 増えましたが、逆起電力も同じ15 V 増えています。抵抗降下が変わらないからです。ところが比で見ると話が違います——端子電圧は 115/100=1.15 倍ですが、逆起電力は 105/90=1.167 倍。もとの値が小さいぶん、比では大きく増えるのです。

問題の解説:E の比をそのまま速度の比にする
両方の運転状態で共通。電流が同じだから降下も同じ。
このとき n1=1500 min-1。
引く量は同じ10 V。端子電圧の増加15 V がそのまま乗る。
105/90=7/6。分数のまま持つと暗算が速い。
1500の1/6が250なので、1500+250=1750。

選択肢を検算する
| 選択肢 | その値になる計算 | 判定 |
| (1) 1290 | 1500×90/105=1286 | 比を上下逆にした。電圧を上げたのに遅くなるのは物理的におかしい |
| (2) 1700 | 自然な計算では出ない | 正解の近くに置いた散らし。1750との差は3 % |
| (3) 1730 | 1500×115/100=1725 | 端子電圧の比を使った(逆起電力ではなく) |
| (4) 1750 | 1500×105/90 | 正解 |
| (5) 1950 | 1500×115/90=1917 | 変更後だけ抵抗降下を引き忘れた |
この問題では(3)1730 と正解(4)1750 の差がわずか20 min-1(1.1 %)しかありません。端子電圧の比で計算しても「近い値」に着地してしまうため、間違えたことに気づかないまま先へ進んでしまいます。逆起電力で考える理由をはっきり言えるかが、この1問を確実に取れるかどうかの分かれ目です。
(1)1290 は物理で即座に消せます。端子電圧を上げれば速度は上がるに決まっており、下がる選択肢を選ぶ理由はありません。計算する前に「答えは1500より大きい」と決めておくだけで、5択が4択になります。
なぜ界磁電流をわざわざ調整するのか
分巻電動機では界磁巻線が端子に並列につながっているので、端子電圧を100 V から115 V に上げると界磁電流も1.15倍に増えます。界磁電流が増えれば磁束も増え、n=E/(kEφ) の分母まで動いてしまう——これでは「電圧を上げたのに速度がほとんど変わらない」という結果になります。
そこで界磁抵抗器で界磁電流を元の値に戻し、磁束を固定するのがこの問題の設定です。実務でもこれは電圧制御(電機子電圧制御)と呼ばれる基本的な速度制御法で、磁束を固定したまま電機子電圧だけを動かすことで、トルクを保ったまま速度を変えられます。
もし界磁電流を調整しなかったらどうなるかも考えておくと理解が深まります。φ が 1.15 倍になると同じトルクを出すのに必要な Ia は 1/1.15 倍=43.5 A に減り、抵抗降下は 8.7 V。E=115−8.7=106.3 V。速度は n∝E/φ なので 1500×(106.3/90)/1.15=約1541 min-1——ほとんど変わりません。「分巻は定速度電動機」と呼ばれる所以がここに表れています。
⏱️ 本番での進め方
① 問題文から「一定」を意味する語を全部拾う。本問は「界磁電流を同じ値に調整」=φ一定、「定トルク負荷」+「電機子電流は同じ」=Ia一定。
② IaRa を先に1回だけ計算(50×0.2=10 V)。両方の状態で共通なので使い回せる。
③ E1=90、E2=105 と書き、比 105/90=7/6 に約分してから掛ける。
④ 検算の前に「答えは1500より大きい」と決めておく。これだけで(1)が消える。
💡 覚え方
φ 一定なら n ∝ E、E=V−IaRa。電機子電流が変わらないなら抵抗降下も変わらないので、端子電圧の増分がそのまま逆起電力の増分になる。ただし比は等しくならない(もとの値が小さいぶん比では大きく増える)——ここが端子電圧比で計算すると外す理由。
⚠️ よくある間違い
端子電圧の比 115/100 を使うのが最頻の誤り(→(3)1730)。正解の1750 と近いので気づきにくいのが厄介です。もう一つは変更後だけ抵抗降下を引き忘れる(→(5)1950)。E は必ず両方の状態で計算すると決めておけば防げます。

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