電験3種の機械科目で頻出の直流分巻電動機。本記事では、平成20年度 A問題2で問われた、負荷が変わったときの逆起電力(誘導起電力)を求める計算問題を解説します。
カギは \( V=E+I_aR_a \)。まず定格運転から電機子抵抗 \( R_a \) を求め、電機子電流が 20 A のときの逆起電力を計算します。定格出力は \( E\cdot I_a \) から \( E \) を出すのがポイントです。
平成20年度 機械科目 A問題2:問題文と選択肢
「定格出力5 kW」が何の電力を指すのかを確かめるところから始めます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2
電験3種 機械科目 【直流機】 平成20年度 A問題2
定格出力 5 [kW]、定格電圧 220 [V] の直流分巻電動機がある。この電動機を定格電圧で運転したとき、電機子電流が 23.6 [A] で定格出力を得た。この電動機をある負荷に対して定格電圧で運転したとき、電機子電流が 20 [A] になった。このときの逆起電力(誘導起電力)[V] の値として、最も近いのは次のうちどれか。
ただし、電機子反作用はなく、ブラシの抵抗は無視できるものとする。(1) 201 (2) 206 (3) 213 (4) 218 (5) 227
出題のポイント:定格出力は「電気入力」ではなく「機械出力」
この問題でつまずくとしたら「定格出力5 kW とは何の電力か」の一点です。答えは電機子で電気から機械に変換された動力=E·Ia——端子から入る電気入力 V·Ia ではありません。
実際に確かめてみると、電気入力は 220×23.6=5192 W で、5 kW とは192 W ずれています。この192 W が電機子巻線の銅損で、その分だけ端子電圧より逆起電力のほうが小さくなっているわけです。

電力の流れで位置づけを確認する
| 位置 | 式 | 本問での値 |
| 電機子への電気入力 | V·Ia=220×23.6 | 5 192 W |
| 電機子巻線の銅損 | Ia2Ra | 192 W |
| 電機子で変換された動力(=定格出力) | E·Ia | 5 000 W |
この表の3行目が「定格出力5 kW」の正体です。ここから En=5000/23.6=211.9 V が出て、端子電圧との差 220−211.9=8.1 V が抵抗降下——これを電流で割れば電機子抵抗が求まります。
厳密には、機械が軸から出す出力は E·Ia からさらに鉄損と機械損を引いた値です。ただし本問は「電機子反作用はなく、ブラシの抵抗は無視」としか書いておらず、鉄損・機械損の情報が与えられていません。与えられた数値だけで閉じる読み方が定格出力=E·Ia なので、そう解釈します。

問題の解説:Ra を経由して E を出す
定格出力=E·Ia から逆算。220 で割らないのがポイント。
端子電圧と逆起電力の差がそのまま抵抗降下。
抵抗は機械の固有値なので、負荷が変わっても同じ。
電流が減ったぶん抵抗降下も減り、逆起電力は大きくなる。
定格時(211.9 V)より1 V ほど高い。

選択肢を検算する
各選択肢がどんな電機子抵抗に対応するかを逆算すると、正解の位置づけがはっきりします。
| 選択肢 | 対応する Ra(E=220−20Ra から逆算) | 判定 |
| (1) 201 | 0.95 Ω | 抵抗が大きすぎる。定格時の降下が22 V になり、出力が4 675 W にしかならない |
| (2) 206 | 0.70 Ω | 同上。定格時の降下が16.5 V で出力4 810 W |
| (3) 213 | 0.345 Ω | 正解。定格時の降下8.1 V で出力ちょうど5 000 W |
| (4) 218 | 0.10 Ω | 抵抗が小さすぎる。定格時の降下2.4 V で出力5 144 W |
| (5) 227 | −0.35 Ω(負!) | 符号を逆にした(E=V+IaRa=発電機の式を使った) |
(5)227 は物理的に即座に消せます。電動機の逆起電力が端子電圧より大きいことはあり得ません——もしそうなら電流が逆向きに流れ、発電機として動作していることになります。「電動機なら E < V」という不等式を先に書いておけば、5択が4択になります。
残る4つは電機子抵抗の見積もりの違いです。Ra を求める段階で「定格出力=E·Ia」を使えたかどうか——それだけがこの問題の分かれ目になっています。
なぜ負荷が軽いと逆起電力が大きくなるのか
電機子電流が23.6 A から20 A に減ると、逆起電力は211.9 V から213.1 V へわずかに増えます。式の上では「引く量が減ったから」ですが、物理的には「負荷が軽くなったので速度が少し上がった」ことを意味します。
分巻電動機では磁束が一定なので E=kφn より E ∝ n。逆起電力が 213.1/211.9=1.0057倍ということは、回転速度も0.57 % だけ上がったということです。
| 電機子電流 | 抵抗降下 IaRa | 逆起電力 E | 速度(定格比) |
| 23.6 A(定格) | 8.1 V | 211.9 V | 100.0 % |
| 20 A(本問) | 6.9 V | 213.1 V | 100.6 % |
| 10 A | 3.4 V | 216.6 V | 102.2 % |
| 0 A(無負荷) | 0 V | 220 V | 103.8 % |
全負荷から無負荷まで動かしても速度変化はわずか3.8 %——これが「分巻電動機は定速度電動機」と呼ばれる理由です。この速度変化の割合を速度変動率と呼び、分巻では数 % に収まります。直巻なら無負荷で暴走することと比べると、性格の違いがよく分かります。
⏱️ 本番での進め方
① 「定格出力」は機械出力 E·Ia。V·Ia ではないと最初に確認する。
② En=出力÷Ia → 降下=V−En → Ra=降下÷Ia の3手。
③ 求めた Ra で E=V−IaRa。電流が減れば E は増える。
④ 検算より先に「電動機なら E<V」を書いておく。それだけで(5)が消える。
💡 覚え方
定格出力=E·Ia(機械出力)であって V·Ia(電気入力)ではない。差の Ia2Ra が銅損。電動機は E=V−IaRa < V。負荷が軽い=電流が小さい=抵抗降下が小さい=逆起電力が大きい=速度がわずかに速い——分巻の定速度特性はこの連鎖で説明できます。
⚠️ よくある間違い
定格出力を電気入力と取り違えて Ra を求めると、以降がすべてずれます。220×23.6=5192 W ≠ 5000 W と数字が合わないことに気づけるかがポイントです。もう一つは発電機の式 E=V+IaRa を使ってしまう誤り(→(5)227)で、電動機の逆起電力が端子電圧を超えるという物理的にあり得ない結果になります。
逆起電力が電動機の速度を決める
電動機が回ると、発電機と同じ起電力が生じます——電源電圧と逆向きなので逆起電力と呼ばれます。
| 状態 | 逆起電力E | 電機子電流Ia |
| ★始動の瞬間 | ★0(回っていない) | ★V/Ra(非常に大きい) |
| 加速中 | 増えていく | 減っていく |
| 定常運転 | V に近い | 負荷に応じた値 |
始動時に大電流が流れるのは、逆起電力がまだ0 だから——Ra は小さいので、V/Ra は定格の何倍にもなります。
だから始動抵抗を入れて電流を抑える——回り始めて逆起電力が立ち上がったら、抵抗を減らしていくのです。直流電動機の始動法は、この式から導かれます。
E=Kφn なので、逆起電力は回転速度に比例——速度が決まれば逆起電力が決まり、逆起電力が決まれば電流が決まる。この連鎖が直流機の動作を支配しているのです。

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