電験3種の機械科目で頻出の直流電動機の出力とトルク。本記事では、令和6年度下期 A問題2で問われた、出力トルクから電機子巻線の抵抗値を求める計算問題を解説します。
カギは出力 \( P=T\omega=EI_a \)(\( \omega=2\pi n/60 \))。損失が銅損だけなので機械出力=\( EI_a \)。ここから E を出し、\( V=E+I_aR_a \) で \( R_a \) を求めます。
令和6年度下期 機械科目 A問題2:問題文と選択肢
機械の量と電気の量をつなぐ橋を確認しながら進めます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2
電験3種 機械科目 【直流機】 令和6年度下期 A問題2
界磁磁束を一定に保った直流電動機が、電機子電圧 24 [V]、電機子電流 3.0 [A] で一定速で駆動されている。このときの直流電動機の回転数は 1500 [min⁻¹]、出力トルクは 0.4 [N·m] であった。この直流電動機の電機子巻線の抵抗値 [Ω] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、ブラシによる電圧降下、及び電機子反作用は無視できるものとし、考慮すべき損失は電機子巻線の銅損のみとする。(1) 1.0 (2) 2.3 (3) 3.1 (4) 4.5 (5) 6.9
出題のポイント:トルクと電気量をつなぐのは P=Tω=EIa
この問題は「機械の量(トルク・回転数)」から出発して「電気の量(抵抗)」にたどり着くという流れです。両者をつなぐ橋は電力——機械側から見れば P=Tω、電気側から見れば P=EIa。この2つが等しいことが出発点になります。

問題の解説:ω → P → E → Ra の4ステップ
1500/60=25 回転/秒、×2π で157 rad/s。2π/60=0.1047 を覚えておくと速い。
トルク×角速度。回転数をそのまま掛けてはいけない。
損失が銅損だけなので 機械出力=EIa。
差の3.06 V を電流で割る。ここで割り忘れると誤答(3)。


電力の収支で確かめる
「損失は銅損のみ」という条件のおかげで、電力の収支は3つの数字だけで閉じます。答えが出たら必ずこれで検算してください。
| 量 | 計算 | 値 |
| 電気入力 | V×Ia=24×3.0 | 72.0 W |
| 銅損 | Ia2Ra=3.02×1.02 | 9.2 W |
| 機械出力 | T×ω=0.4×157 | 62.8 W |
| 効率 | 62.8/72.0 | 87.2 % |
72.0=62.8+9.2 できれいに閉じます。「入力=出力+損失」で戻るかを確認するのは20秒で済み、計算ミスをほぼ確実に捕まえられます。
選択肢を逆算する
| 選択肢 | そう出る計算 | どこで間違えたか |
| (1) 1.0 | (24−20.9)/3.0 | 正解 |
| (2) 2.3 | 自然な計算では出にくい値 | 散らしのダミー |
| (3) 3.1 | 24−20.9=3.06 | 最後に電流で割り忘れた(電圧を抵抗として答えた) |
| (4) 4.5 | 同上 | 散らしのダミー |
| (5) 6.9 | ω=25 として計算(2π を忘れた) | 回転数を角速度と取り違えた:P=10 W、E=3.3 V、Ra=6.9 Ω |
(3)3.1 が最も危険です。V−E=3.06 という数字がそのまま選択肢にあるので、計算が終わった気になって選んでしまいます。単位を意識する——3.06 は[V]であって[Ω]ではありません。
(5)6.9 は 2π の掛け忘れです。角速度を25 rad/s とすると出力が10 W にしかならず、逆起電力が3.3 V——端子電圧24 V に対して逆起電力が3.3 V というのは異常(効率14 % の電動機になってしまう)です。「電動機の逆起電力は端子電圧の8〜9割」という相場観を持っておくと、この種の誤りに気づけます。
この電動機はどんな機械か、数字から読む
計算が終わったら、出てきた数値がどんな機械を表しているのかを眺めてみると理解が深まります。本問の電動機を整理すると次のようになります。
| 項目 | 値 | 読み取れること |
| 電機子電圧 | 24 V | 低電圧の小形機。電池やDC電源で動く用途 |
| 電機子電流 | 3.0 A | 電気入力は72 W |
| 回転速度 | 1500 min-1 | 毎秒25回転 |
| 出力トルク | 0.4 N·m | 約40 gf·m——手で回せる程度 |
| 機械出力 | 62.8 W | 小形の工具・模型・ロボット用のクラス |
| 電機子抵抗 | 約1.0 Ω | 小形機なので比較的大きい |
| 効率 | 87 % | この規模としては良好 |
電機子抵抗1.0 Ω は、大形機から見るとかなり大きな値です。数百kW級の直流機では0.01 Ω 程度もありえます。機械が小さいほど、巻線が細く長くなるため抵抗が大きくなり、相対的に銅損の割合が増える——だから小形機ほど効率が低くなりやすいのです。
その視点で見ると、この機械の抵抗降下 IaRa=3.06 V は端子電圧24 V の約13 %。大形機なら数 % に収まるところです。「逆起電力は端子電圧の約87 %」という比率がそのまま効率になっているのが分かります(損失が銅損だけという条件のため)。
電動機の効率=E/V(損失が銅損だけの場合)という関係は、抵抗降下をいかに小さくするかが効率の勝負だということを端的に示しています。太い電線を使い、巻線を短くし、電圧を高くする——直流機の設計はこの3方向へ向かいます。
なぜ「出力トルク」から抵抗が求まるのか
一見すると、機械的なトルクと電気的な抵抗は無関係に思えます。両者をつないでいるのは「エネルギーは形を変えても総量が保たれる」という一点です。
| 場所 | 電力の形 | 本問での値 |
| 端子 | 電気:V·Ia | 72.0 W |
| 電機子巻線 | 熱:Ia2Ra | 9.2 W(ここで失われる) |
| 電機子(変換点) | 電気⇄機械:E·Ia=T·ω | 62.8 W |
| 軸 | 機械:T·ω | 62.8 W |
E·Ia=T·ω という等式が、電気の世界と機械の世界の「両替所」です。逆起電力 E は「機械が電気に見せている顔」、トルク T は「電気が機械に見せている顔」——同じものを違う側から見ているだけなので、片方が分かればもう片方も分かります。
この関係は直流機に限らず、誘導機でも同期機でも成り立ちます。機械科目の計算問題で「トルクが出てきたら ω を掛けて電力に直す」という手順は、どの機種でも同じです。
⏱️ 本番での進め方
① トルクが出てきたら真っ先に ω=2πn/60 を計算する。2π/60=0.105。
② P=Tω=EIa で電気側へ渡る。損失が銅損だけなら等号がそのまま成立。
③ Ra=(V−E)/Ia。最後の「÷Ia」を忘れない(誤答(3))。
④ 検算は入力=出力+銅損。72=62.8+9.2 ✓ で20秒。
💡 覚え方
P=Tω=EIa が機械と電気の両替所。ω=2πn/60(回転数をそのまま使わない)。損失が銅損だけなら EIa がそのまま軸出力。最後は Ra=(V−E)/Ia で、÷Ia を忘れると電圧を抵抗として答えてしまう。
⚠️ よくある間違い
最後に電流で割り忘れる(→(3)3.1)のが最頻です。V−E=3.06 という値がそのまま選択肢にあるので特に危険。単位を書きながら計算するのが対策です。もう一つはω に 2π を掛け忘れる(→(5)6.9)誤りで、こちらは逆起電力が端子電圧の1/7という不自然さで気づけます。

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