三相交流の計算で手が止まる原因は、ほぼ1つに絞れます。√3を掛けるのか割るのか、どちらの電圧・電流に掛けるのかが曖昧なままだからです。
√3は暗記する数ではなく、120度ずれた2つのベクトルの差から出てくる数です。出どころが分かれば、掛ける先を間違えなくなります。
√3の正体
Y結線を考えます。線間電圧とは、2本の線の間の電圧——つまり2つの相電圧の差です。
相電圧どうしは120度ずれています。大きさが等しく120度ずれた2つのベクトルの差は、図を描けば底角30度の二等辺三角形になり、その長さは \( 2 \times \cos 30^\circ = 2 \times \dfrac{\sqrt{3}}{2} = \sqrt{3} \) 倍になります。
√3は「120度ずれたものを引き算したときに出る倍率」。
だから差を取ったほうが√3倍になります。
Y結線は電圧が差(線間電圧)、Δ結線は電流が差(線電流)です。
Y結線とΔ結線
| Y(スター)結線 | Δ(デルタ)結線 | |
| 電圧 | 線間電圧 = √3 × 相電圧 | 線間電圧 = 相電圧 |
| 電流 | 線電流 = 相電流 | 線電流 = √3 × 相電流 |
| 覚え方 | Yは電圧が√3倍 | Δは電流が√3倍 |
| 位相 | 線間電圧が相電圧より30度進む | 線電流が相電流より30度遅れる |
💡 覚え方
「Yは電圧、Δは電流」——これだけです。
Y結線は中性点で3つの相がつながっているので、各相を流れる電流はそのまま線に出ます(電流は差を取らない)。
Δ結線は3つの相が輪になっているので、線に出る電流は2つの相電流の差になります。
⚠️ よくある間違い
問題文の「電圧」が線間電圧か相電圧かを確認せずに式を立てる——これが最大の失点源です。
電験3種では、断りがなければ電圧は線間電圧を指します。「一相分の」「相電圧」と書いてあるときだけ相電圧です。
三相電力の式
この2つを混ぜて \(\sqrt{3}V_p I_p\) としてしまう間違いが多発します。√3が付くのは線間電圧・線電流のときだけです。
なぜ √3 と 3 で一致するのか
Y結線なら \(V = \sqrt{3}V_p\)、\(I = I_p\) なので、\(\sqrt{3}VI\cos\theta = \sqrt{3}\cdot\sqrt{3}V_p \cdot I_p\cos\theta = 3V_pI_p\cos\theta\)。ちゃんと一致します。Δ結線でも同様です。
Y⇄Δ変換
同じインピーダンスの素子を、Y結線からΔ結線に組み替えると消費電力は3倍になります。「Y結線でP[W]の負荷をΔに組み替えたら何Wか」という問題は頻出で、答えは3Pです。
💡 覚え方
「Δは3倍」で覚えます。Δ結線は各相に線間電圧がまるごと掛かるので、Y結線(相電圧=線間/√3)より電圧が√3倍、電力は電圧の2乗に比例するので (√3)²=3倍。
解くときの型
⏱️ 本番での進め方
1. 問題の電圧が線間か相かを確認する(断りがなければ線間)
2. 負荷がYかΔかを確認する
3. Δ負荷なら \(Z_Y = Z_\Delta/3\) でYに直す
4. 一相分の等価回路で計算する
5. 最後に3倍(電力)または√3倍(線間電圧)して戻す
三相の計算は、一相分に落として解き、最後に戻すのが定石です。三相のまま考えようとすると混乱します。
▶ この論点が出た過去問
・【理論】令和7年度上期 B問題15(Δ電源にY負荷の線電流と相電流)
・【理論】令和5年度下期 B問題15(Y結線のリアクタンスとΔ結線時の全消費電力)
・【理論】平成20年度 B問題15(Y負荷とΔ負荷が並列の三相回路)
・【理論】平成22年度 A問題9(Y結線平衡三相回路の基本式の正誤)
・【法規】平成27年度 B問題13(V結線は√3倍・力率改善)
V結線でも√3が出てくる
Δ結線から変圧器を1台外した形がV結線です。3台のうち2台で三相を送れますが、容量は落ちます。
ここでも√3は「120度ずれたものを合成した結果」として現れます。V結線は法規の施設管理計算でも問われるので、0.866(利用率)と0.577(出力比)は数字で覚えておくと速いです。
計算でよく使う√の値
| 値 | 近似 | 使う場面 |
| \(\sqrt{2}\) | 1.414 | 実効値と最大値の換算 |
| \(\sqrt{3}\) | 1.732 | 三相の線間・線電流 |
| \(1/\sqrt{3}\) | 0.577 | 相電圧を線間から出す/V結線の出力比 |
| \(\sqrt{3}/2\) | 0.866 | V結線の利用率/\(\cos30^\circ\) |
| \(\sqrt{3}\times\sqrt{3}\) | 3 | Y⇄Δの電力比 |
💡 覚え方
√3=1.732は「人並みに」で覚えるのが定番です。√2=1.414は「一夜一夜に」。本番では電卓で出せますが、暗算で概算できると検算が速くなります。
電卓の条件は電卓の選び方にまとめました。開平計算(√)ができないと三相の計算は成立しません。
三相電力の測定——二電力計法
三相の電力を測るとき、電力計は3台ではなく2台で足ります。これが二電力計法です。理論の電気及び電子計測でも三相交流でも出てきます。
2台で済む理由は、三相3線式では3つの線電流の和がゼロだからです。2つ分かれば残り1つは決まるので、測る必要がありません。ここにも「三相は独立変数が2つ」という三相の性質が効いています。
⚠️ よくある間違い
片方の電力計が逆振れしたとき、「故障」ではありません。力率が0.5より低いときに起こる正常な現象です。このとき合計は \(W_1 – |W_2|\) になります。「負の値として足す」のが正解です。
▶ 【理論】平成23年度 B問題17(電流力計形電力計と二電力計法)
▶ 【理論】平成26年度 A問題14(対称三相回路の一電力計法)
まとめ
・√3は120度ずれたベクトルの差から出る(\(2\cos30^\circ\))
・Yは電圧が√3倍、Δは電流が√3倍
・断りがなければ電圧は線間電圧
・\(P=\sqrt{3}VI\cos\theta\)(線間・線電流)=\(3V_pI_p\cos\theta\)(相電圧・相電流)
・\(Z_\Delta = 3Z_Y\)。Δに組み替えると電力は3倍
・一相分に落として解き、最後に戻す

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