電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目で繰り返し出題される定番が、永久磁石界磁の小形直流電動機の効率です。本記事では、令和5年度上期 A問題2で問われた効率の計算問題を解説します。
本問(令和5年度上期)は、平成29年度・令和7年度上期とほぼ同一の頻出問題です。選択肢の並びは異なりますが、解き方と答え(75%)は同じです。
ほぼ同じ問題が 【機械】令和7年度上期A問題2/【機械】平成29年度A問題1 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
令和5年度上期 機械科目 A問題2:問題文と選択肢
入力・損失・出力の3つを数字で並べるところから始めます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2
電験3種 機械科目 【直流機】 令和5年度上期 A問題2
界磁に永久磁石を用いた小形直流電動機があり、電源電圧は定格の12 [V]、回転を始める前の静止状態における始動電流は4 [A]、定格回転数における定格電流は1 [A] である。定格運転時の効率の値 [%] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、ブラシの接触による電圧降下及び電機子反作用は無視できるものとし、損失は電機子巻線による銅損しか存在しないものとする。(1) 60 (2) 65 (3) 70 (4) 75 (5) 80
出題のポイント:3つの電力を並べれば効率が見える
効率の問題は「入力・損失・出力の3つを数字で並べる」と一気に見通しがよくなります。本問は損失が電機子銅損だけという条件が付いているので、3つの数字だけで話が閉じます。

抵抗はどこから出てくるのか
問題文には電機子抵抗が書かれていません。それでも解けるのは、「静止状態における始動電流」という情報があるからです。
回転していなければ逆起電力 E=kEφn=0。電機子回路には電源電圧がまるごと抵抗にかかっているので、オームの法則がそのまま使えます——始動電流を測ることは、抵抗を測ることと同じなのです。
静止 ⇒ E=0 ⇒ 12 V が全部3 Ω にかかって4 A。
定格電流1 A なので降下は3 V。
3つの電力を数字で並べる
| 量 | 式 | 計算 | 値 |
| 電気入力 | V·Ia | 12×1 | 12 W |
| 電機子銅損 | Ia2Ra | 12×3 | 3 W |
| 機械出力 | E·Ia | 9×1 | 9 W |
| 効率 | 出力÷入力 | 9÷12 | 75 % |
12=3+9 できれいに閉じます。入力の1/4が熱になり、3/4が仕事になっている——これが効率75 % の中身です。


なぜ小形機の効率は低いのか
75 % という効率は、機械としてはかなり低い部類です。大形の直流機なら90 % を超えます。この差はどこから来るのかを、式で見ておきましょう。
| 機械の規模 | 電機子抵抗 | 抵抗降下の割合 | 効率(銅損のみ) |
| 本問(12 V・1 A) | 3 Ω | 3 V/12 V=25 % | 75 % |
| 中形(200 V・50 A) | 0.2 Ω | 10 V/200 V=5 % | 95 % |
| 大形(600 V・500 A) | 0.02 Ω | 10 V/600 V=1.7 % | 98 % |
小形機ほど巻線が細く長くなって抵抗が大きくなり、同時に端子電圧も低いため、抵抗降下の割合が大きくなります。効率が低いのは設計が悪いからではなく、規模の必然です。
逆に言えば「電圧を上げれば効率が上がる」ということでもあります。同じ出力を得るのに電圧を上げて電流を下げれば、IaRa が小さくなる——送電が高電圧で行われるのとまったく同じ理屈です。
★同一問題:3年度にわたって3回出題されている
この問題はまったく同じ数値で3回出題されています。12 V・始動電流4 A・定格電流1 A・答え75 %——すべて同じです。
| 年度 | 選択肢の並び | 正解の番号 |
| 平成29年度 A問題1 | 60/65/70/75/80 | (4) |
| 令和5年度上期 A問題2(本問) | 60/65/70/75/80 | (4) |
| 令和7年度上期 A問題2 | 80/75/70/65/60(逆順) | (2) |
平成29年度と令和5年度上期は選択肢の並びも同じで正解も(4)ですが、令和7年度上期だけは選択肢が逆順に並べ替えられていて正解が(2)になっています。番号で覚えていると、令和7年度で正反対の位置を選んでしまいます。
「始動電流から抵抗、定格時の逆起電力から効率」という筋道が、直流機の基本として繰り返し問われているということです。この3本はセットで解いておく価値があります。
⏱️ 本番での進め方
① 「静止状態の始動電流」=抵抗を測ったのと同じ(E=0)。Ra=V/Ia0。
② 入力・銅損・出力の3つを数字で並べる。12=3+9 で閉じることを確認。
③ η=1−IaRa/V と見れば、計算前に「25 % 落ちるから75 %」と見当がつく。
④ 正解の番号は年度で違う((4)と(2))。中身で覚える。
鉄損・機械損があったら効率はどうなるか
本問は「損失は電機子巻線による銅損しか存在しない」と限定していました。この一文が外れると η=E/V は使えなくなります。実機ではどうなるかを見ておきましょう。
本問の機械に、仮に鉄損+機械損が1 W あったとしましょう。
変わらない。
銅損3 W に加えて一定損1 W が引かれる。
75 % から66.7 % へ落ちる。
問題が η=E/V で解けたのは「損失=銅損だけ」という仮定のおかげだと、はっきり意識しておいてください。E/V は「電機子回路での効率」であって、機械としての効率ではありません。
損失の内訳と効率が最大になる点
| 損失の種類 | 何で決まるか | 負荷を変えたときの挙動 |
| 電機子銅損 Ia2Ra | 負荷電流の2乗 | 負荷とともに急増(可変損) |
| 界磁銅損 | 界磁電流(ほぼ一定) | ほぼ一定 |
| 鉄損 | 磁束密度と周波数(回転数) | ほぼ一定(固定損) |
| 機械損 | 回転数(摩擦・風損) | ほぼ一定(固定損) |
効率が最大になるのは「固定損=可変損」となる負荷です。軽負荷では固定損の割合が大きくて効率が悪く、重負荷では銅損が2乗で効いてまた悪くなる——だから実機の効率曲線は山型になります。
本問のように固定損をゼロと置くと、この山が消えて「電流が小さいほど効率が高い」という単調な特性になります。試験問題の条件文は、こうした「どの物理を残してどれを捨てるか」の宣言だと読むと、解法が自然に決まります。
💡 覚え方
始動時は E=0 なので Ra=V/Ia0。損失が銅損だけなら η=E/V=1−IaRa/V。効率=1−(抵抗降下の割合)——小形機は抵抗降下の割合が大きいので効率が低いのが必然。
⚠️ よくある間違い
始動電流と定格電流を取り違えるのが典型です。抵抗を出すのは始動電流(E=0 のとき)、逆起電力を出すのは定格電流。もう一つはη=E/V を無条件に使うこと——鉄損・機械損があると成り立ちません。

コメント