電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目で頻出の直流機の誘導起電力。本記事では、平成25年度 A問題2で問われた、磁極数2の直流発電機で1巻きコイルに誘導される起電力を求める問題を解説します。
カギは、磁界中を動く導体に生じる起電力 \( e=Blv \) と、回転の周速 \( v=\pi D\dfrac{n}{60} \)。そして1巻きコイルは導体2本が直列なので、コイルの起電力はその2倍になります。
平成25年度 機械科目 A問題2:問題文と選択肢
「導体1本」と「コイル1巻き」の違いを確かめるところから始めます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2
電験3種 機械科目 【直流機】 平成25年度 A問題2
図は、磁極数が2の直流発電機を模式的に表したものである。電機子巻線については、1巻き分のコイルを示している。電機子導体の直径 D は 0.5 [m]、電機子導体の有効長 l は 0.3 [m]、ギャップの磁束密度 B は、図の状態のように電機子導体が磁極の中心付近にあるとき一定で 0.4 [T]、回転速度 n は 1200 [min⁻¹] である。図の状態におけるこの1巻きのコイルに誘導される起電力 e [V] の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 2.40 (2) 3.77 (3) 7.54 (4) 15.1 (5) 452
出題のポイント:「導体1本」と「コイル1巻き」は別物
この問題の分かれ目は最後に2を掛けるかどうか、ただ1点です。問われているのは「1巻きのコイルに誘導される起電力」——導体1本ではありません。
1巻きのコイルとは、電機子を1周する「行き」と「帰り」の2本の導体でできています。図でいえばN極の下を通る導体と、S極の下を通る導体。この2本は磁界の向きも動く向きも逆なので、それぞれに生じる起電力はコイルとして直列に足し合わされます。
だからコイルの起電力は導体1本の2倍。e=2Blv です。

問題の解説:周速 → 導体1本 → コイル
1200/60=20(毎秒20回転)。円周 π×0.5=1.571 m を1秒に20周する。
時速でいえば113 km/h。直流機の周速としては標準的。
ここで止めると誤答(2)。問われているのはコイルの起電力。
行きと帰りの2本が直列なので2倍。


選択肢を逆算する
5つの選択肢が、途中の各段階と典型的な単位ミスに1対1で対応しています。実際に計算して確かめます。
| 選択肢 | そう出る計算 | どこで間違えたか |
| (1) 2.40 | 0.4×0.3×20 | 周速に πD を掛け忘れた(n/60=20 をそのまま速度にした) |
| (2) 3.77 | Blv=0.4×0.3×31.4 | 導体1本で止めた(2倍し忘れ) |
| (3) 7.54 | 2Blv | 正解 |
| (4) 15.1 | 2×0.4×0.3×62.8 | D を半径と勘違いした(周速が2倍になる) |
| (5) 452 | 2×0.4×0.3×1885 | 60 で割り忘れた(毎分を毎秒に直していない) |
(5)452 は桁で即座に外せます。周速1885 m/s=マッハ5.5 という、あり得ない速さになっているからです。「周速は数十 m/s 程度」という感覚を持っておくと、単位換算の失敗はすぐ見つかります。
いちばん危ないのは(2)3.77 です。計算はすべて正しく、最後の2倍だけを忘れた値——見直しても気づきにくいのが厄介です。問題文の「1巻きのコイルに誘導される起電力」を指でなぞって確認するのが唯一の対策になります。
有効長 l とは何を指すのか
問題文の「電機子導体の有効長 l」という言い方には意味があります。導体の全長ではなく、磁界の中にある部分の長さだけが起電力を生むからです。
電機子巻線は電機子鉄心のスロットに収められ、両端でコイルエンドとして折り返しています。起電力を生むのは、磁極の下を通る「スロットの中の部分」だけ。コイルエンドは磁界の外にあり、起電力に寄与せず、抵抗と発熱だけを増やす無駄な部分です。
| 部分 | 磁界の中か | 起電力への寄与 | 設計上の扱い |
| 有効部分(スロット内) | 磁極の下にある | e=Blv を生む | 長いほど出力が大きい |
| コイルエンド | 磁界の外 | ゼロ | できるだけ短くしたい(銅損と材料の無駄) |
「細長い機械のほうが効率がよい」と言われるのはこのためです。直径に対して軸方向が長いほど、有効部分の割合が増えてコイルエンドの無駄が減ります。逆に扁平な機械はコイルエンドの割合が大きくなり、銅損が相対的に増えます。
本問では l=0.3 m と D=0.5 m ですから、直径のほうが長い扁平な機械です。模式図としての設定なので実機の比率とは限りませんが、「有効長」という語が出てきたら磁界の中の長さのことだと即座に読み替えられるようにしておいてください。
この式と E=pZφn/(60a) はつながっている
直流機の起電力といえば E=pZφn/(60a) という公式が有名ですが、本問の e=Blv はその出発点です。両者がどうつながるかを見ておくと、公式が丸暗記でなくなります。
| 段階 | 式 | 意味 |
| 導体1本 | e=Blv | 磁界を横切る導体に生じる起電力(ファラデーの法則) |
| 周速を回転数で表す | v=πD(n/60) | 1秒あたりに進む距離 |
| 磁束密度を磁束で表す | B=pφ/(πDl) | 全周の面積 πDl に、p 極ぶんの磁束 pφ が通る |
| 代入する | e=φ p n/60 | D も l も消える——導体1本あたりの起電力は磁束と極数と回転数だけで決まる |
| 直列本数を掛ける | E=(Z/a)×φ p n/60=pZφn/(60a) | 1つの並列回路に直列につながる導体は Z/a 本 |
D と l が約分で消えるのが面白いところです。「機械の大きさによらず、磁束・極数・回転数だけで導体1本の起電力が決まる」——だから公式に寸法が出てこないのです。
本問はこの導出の最初の2行だけを、具体的な数値でやらせている問題だと言えます。公式を忘れても e=Blv から組み立て直せるようにしておくと、応用問題にも強くなります。
⏱️ 本番での進め方
① 問われているのが「導体」か「コイル」かを最初に確認する。コイルなら最後に×2。
② 周速は πD×(n/60)。D は直径(半径ではない)、60 で割るのを忘れない。
③ 出た周速が数十 m/s のオーダーかを確認する。桁違いの誤答はここで消える。
④ 検算は答えを2で割って Blv に戻す。5秒で済む。
💡 覚え方
導体1本は e=Blv、1巻きコイルは e=2Blv(行きと帰りの2本が直列)。周速 v=πD·n/60——πD が円周、n/60 が毎秒の回転数。この2式は E=pZφn/(60a) の出発点でもあり、途中で寸法 D・l が約分で消えるのが公式に寸法が現れない理由です。
⚠️ よくある間違い
最後の×2 を忘れる(→(2)3.77)のが最頻で、しかも計算過程が全部正しいので見直しても気づきません。「1巻き=2導体」を式に書く前に紙の端にメモするのが確実な対策です。次に多いのが60 で割り忘れ(→(5)452)ですが、こちらは周速が音速を超えるので桁で気づけます。

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