電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目で頻出の単巻変圧器。本記事で扱う令和6年度下期 A問題8は、【機械】平成25年度A問題8とほぼ同一の問題で、それだけ単巻変圧器の構造と容量が定番テーマであることを示しています。確実に得点できるよう解説します。
カギは巻線の共通部分=分路巻線、共通でない部分=直列巻線という名称と、負荷容量=V₂·I₂ という定義。共通巻線をもつため漏れ磁束が少なく、電圧変動率が小さいのが特徴です。
ほぼ同じ問題が 【機械】平成25年度A問題8 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
令和6年度下期 機械科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題8
電験3種 機械科目 【変圧器】 令和6年度下期 A問題8
次の文章は、単相単巻変圧器に関する記述である。
巻線の一部が一次と二次との回路に共通になっている変圧器を単巻変圧器という。巻線の共通部分を (ア)、共通でない部分を (イ) という。単巻変圧器では、(ア) の端子を一次側に接続し、(イ) の端子を二次側に接続して使用すると通常の変圧器と同じように動作する。単巻変圧器の (ウ) は、二次端子電圧と二次電流との積である。単巻変圧器は、巻線の一部が共通であるため、漏れ磁束が (エ)、電圧変動率が (オ)。
空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして正しいものを選べ。
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
| (1) | 分路巻線 | 直列巻線 | 負荷容量 | 多く | 小さい |
| (2) | 直列巻線 | 分路巻線 | 自己容量 | 少なく | 小さい |
| (3) | 分路巻線 | 直列巻線 | 負荷容量 | 少なく | 小さい |
| (4) | 分路巻線 | 直列巻線 | 定格容量 | 多く | 大きい |
| (5) | 直列巻線 | 分路巻線 | 定格容量 | 多く | 大きい |
出題のポイント:名称・容量・特性の3点セット
単巻変圧器の問題は、聞かれることがほぼ決まっています。2つの巻線の名前、2つの容量の区別、そして漏れ磁束と電圧変動率——この3点を押さえれば、どの年度でも答えられます。
| 名前 | どの部分か | 流れる電流 | 役割 |
| 分路巻線 | 一次と二次に共通な部分 | 一次電流と二次電流の差 | 一次側に接続する |
| 直列巻線 | 共通でない部分 | 二次電流(昇圧の場合) | 二次側に接続する |
問題文が「巻線の共通部分を(ア)、共通でない部分を(イ)」と定義してくれているので、「共通=分路」という対応さえ覚えていれば(ア)(イ)は決まります。

(ウ)「二次端子電圧と二次電流の積」は負荷容量
| 容量の呼び名 | 式 | 意味 |
| 負荷容量 | \( V_2 I_2 \) | 実際に負荷へ供給できる容量 |
| 自己容量(固有容量) | \( (V_2-V_1)I_2 \) | 変圧器自身が受け持つ容量。巻線の太さ・鉄心の大きさを決める |
| 両者の比 | \( \dfrac{\text{自己容量}}{\text{負荷容量}}=\dfrac{V_2-V_1}{V_2} \) | 一次と二次の電圧が近いほど小さくなる=小型にできる |
問題文の定義がそのまま \( V_2 I_2 \) ですから、(ウ)は負荷容量です。「定格容量」という語を選びたくなりますが、単巻変圧器では定格容量=自己容量を指すのが普通——負荷容量とは別物です。
用語が3つ(負荷容量・自己容量・定格容量)出てくるので、「変圧器の銘板に書かれるのは自己容量(定格容量)、実際に負荷へ送れるのは負荷容量」と整理しておくと混同しません。
単巻変圧器のカタログで「10 kV・A」と書かれていても、電圧比によっては100 kV・A の負荷を扱える——この差が単巻変圧器を選ぶ理由そのものです。
(エ)(オ)は必ずセットで動く
漏れ磁束が少ない ⇒ 漏れリアクタンスが小さい ⇒ %Z が小さい ⇒ 電圧変動率が小さい——この連鎖は一方向です。だから「少なく/小さい」または「多く/大きい」のどちらかしかありえません。
選択肢に「少なく/大きい」や「多く/小さい」という食い違う組合せがあれば、その時点で誤り——内容を考えずに機械的に落とせます。本問では(1)が「多く/小さい」で食い違っており、ここで消えます。
そして正しいのは「少なく/小さい」のほうです。巻線の一部が共通なのだから、その部分では一次と二次が別々の磁束を持ちようがない——構造から考えれば「少なく」だと分かります。


★同じ問題が平成25年度にも出ている(答えの番号は違う)
本問は平成25年度 A問題8とほぼ同一の問題です(変圧器47:単相単巻変圧器(分路巻線・直列巻線・負荷容量))。問題文はほぼそのまま、選択肢の並び順だけが変わっています。
| 平成25年度 問8 | 令和6年度下期 問8(本問) | |
| 問題文 | 同じ | 同じ |
| 入る語 | 分路/直列/負荷容量/少なく/小さい | 同じ |
| 正解の番号 | (4) | (3) |
⚠️ よくある間違い
過去問を「平成25年A問題8の答えは(4)」と番号で暗記していると、本問で(4)を選んで失点します。11年ぶりの再出題で、番号だけが変わっている——これは出題側が「番号暗記では通らない」と示しているに等しいでしょう。
裏を返せば、内容さえ理解していれば11年後も同じように得点できるということです。単巻変圧器は出題パターンが固定されており、投資効率の高いテーマ——2問セットで解いて、語のほうを body に入れておきましょう。
単巻変圧器は実際どこで使われているのか
一次と二次が絶縁されないという欠点があるにもかかわらず、単巻変圧器は身近なところで使われています。共通するのは「一次と二次の電圧が近い」用途です。
| 用途 | どう使うか | 単巻が有利な理由 |
| 配電線路の電圧調整器 | 長い配電線の途中に入れて、電圧降下分を持ち上げる | 持ち上げるのは数%なので自己容量がごく小さい |
| 誘導電動機の始動補償器 | 始動時だけ電圧を下げて、突入電流を抑える | 短時間しか使わないので小型・安価にしたい |
| スライダック(摺動形単巻変圧器) | 接触子を動かして出力電圧を連続的に変える | 1つの巻線でよいので構造が単純 |
| 系統連系用の大形変圧器 | 275 kV と500 kV のように、比較的近い電圧階級をつなぐ | 同容量の二巻線変圧器より大幅に小型・安価 |
とくに最後の系統連系用が印象的です。275 kV と500 kV をつなぐ場合、自己容量は負荷容量の 1−275/500=45 %——半分以下の大きさの変圧器で済みます。超高圧の大形変圧器は輸送も設置も大変なので、この差は決定的です。
この用途では絶縁されないことも問題になりません。どちらも高圧の系統どうしで、人が触れる部分ではないからです。「絶縁が要らない場面でこそ単巻変圧器が効く」と言い換えられます。
逆に使えない場面
低圧側に人が触れる可能性がある用途では、単巻変圧器は使えません。高圧側の電位がそのまま低圧側に現れるので、一次側で地絡が起きれば低圧側にも高電圧が出てきます。
だから家庭用のアダプタや、医療機器のように絶縁が必須の用途では二巻線変圧器が使われます。絶縁だけを目的として巻数比1:1で作る変圧器(絶縁変圧器)があるのも、絶縁そのものに価値があるからです。
単巻変圧器と絶縁変圧器は、まさに正反対の設計思想——片方は「共通部分を作って小型化する」、もう片方は「共通部分を作らないこと自体が目的」。2つを対にして覚えると、どちらの特徴も忘れません。
⏱️ 本番での進め方
①(エ)(オ)の整合性で肢を落とす。「少なく/大きい」は矛盾。
②(ウ)は問題文の定義 V2I2 がそのまま負荷容量。
③(ア)は「共通=分路」。名前の意味で決まる。
④ 答えの番号は年度で変わる。語を覚えて、その場で番号を探す。
💡 覚え方
「共通は分路、外側は直列、V2I2は負荷容量、漏れ少なく変動小さい」——この1文がそのまま5つの空欄の答えです。年度が変わっても中身は変わりません。



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