電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目で頻出の「三相変圧器の結線と角変位」。本記事では、平成23年度 A問題8で問われた、一次電圧に対して二次電圧が30°遅れとなる結線を5つの結線図から選ぶ問題を、電圧ベクトル図を交えて解説します。
カギは同じ結線どうしは位相差0°、異種結線(Δ-Y・Y-Δ)は±30°という関係。Δ-Δ・Y-Y・V-Vは0°、Δ-Yは二次が30°進み、Y-Δは二次が30°遅れです。よって正解は(3) Y-Δ結線になります。
平成23年度 機械科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題8
電験3種 機械科目 【変圧器】 平成23年度 A問題8
下図は、三相変圧器の結線図である。一次電圧に対して二次電圧の位相が30°遅れとなる結線を次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、各一次・二次巻線間の極性は減極性であり、一次電圧の相順はU, V, Wとする。

出題のポイント:同種結線は0°、異種結線は±30°
三相変圧器の一次電圧と二次電圧のあいだに生じる位相差を角変位といいます。まず「同じ結線どうしか、違う結線どうしか」で大きく2つに分かれます。
| 結線 | 種類 | 角変位 | 理由 |
| Δ-Δ | 同種 | 0° | 一次も二次も線間電圧=巻線電圧 |
| Y-Y | 同種 | 0° | 一次も二次も同じだけ位相がずれるので相殺 |
| V-V | 同種(Δの一部) | 0° | Δ結線から1相を抜いた形なので位相関係は同じ |
| Δ-Y | 異種 | ±30° | 片側だけ線間と巻線の関係が変わる |
| Y-Δ | 異種 | ±30° | 同上(向きは逆) |
なぜ異種だと30°ずれるのか——Y結線では線間電圧が巻線電圧より30°進むのに対し、Δ結線では線間電圧と巻線電圧が同相だからです。一次と二次で結線が違えば、この30°が片側にだけ現れて残ってしまいます。

進みか遅れかは結線図から読む
「Y-Δ は必ず30°遅れ」と機械的に覚えるのは危険です。進み・遅れの向きは、巻線の極性・端子の対応・相順によって決まるからです。
本問は「各一次・二次巻線間の極性は減極性」「一次電圧の相順は U, V, W」と条件を明示しています——この条件を与えないと向きが決まらないことを、出題側も分かっているわけです。
本問の条件のもとでは、Δ-Y が30°進み、Y-Δ が30°遅れになります。問われているのは「30°遅れ」ですから、Y-Δ 結線の図を選べばよいことになります。

選択肢の絞り込み方
| 選択肢 | 結線 | 二次電圧の位相 | 判定 |
| (1) | Δ-Δ | 0°(同相) | 同種なので即消去 |
| (2) | Δ-Y | 30°進み | 異種だが向きが逆 |
| (3) | Y-Δ | 30°遅れ | 正解 |
| (4) | Y-Y | 0°(同相) | 同種なので即消去 |
| (5) | V-V | 0°(同相) | Δの一部なので同相 |
5肢のうち3肢が「同種結線=0°」で一気に落ちます——結線図を見て一次側と二次側の形を読み取るだけ。残る2肢の向きだけを、ベクトル図で慎重に判定すれば十分です。
☝️ ひっかけの作り方:(5) V-V 結線を「別の結線だから角変位がある」と考えてしまうのがひっかけです。V-V は Δ-Δ から1相分の変圧器を取り除いた形——残った2台の巻線の位相関係は Δ-Δ のときと変わりません。だから角変位は0°です。
角変位が実務で効いてくる場面
角変位は、変圧器の並行運転の可否を決める条件のひとつです。角変位が違う変圧器どうしを並列につなぐと、位相差によって循環電流が流れます——負荷がないのに巻線に電流が流れ続け、発熱することになります。
| 並行運転の条件 | 満たさないとどうなるか |
| 極性が同じ | 大きな短絡電流が流れる(最も危険) |
| 変圧比(巻数比)が等しい | 循環電流が流れる |
| %インピーダンスが等しい | 負荷分担が不均等になる |
| 角変位が等しい(三相) | 位相差による循環電流が流れる |
| 相回転が一致(三相) | 短絡状態になる |
Δ-Δ と Y-Y は並行運転できる(どちらも0°)、Δ-Y と Y-Δ も互いに30°ずれているので組み合わせられない——「同種どうし、異種どうしで向きが同じもの」だけが並べられると整理できます。
実際の系統では、Δ-Y や Y-Δ が積極的に使われています。Δ側が第3調波を環流させて波形を整え、Y側が中性点を出せる——角変位30°は、その利点と引き換えに受け入れているものだと言えます。
Y-Δ で30°ずれる仕組みを、ベクトルで追う
なぜ異種結線だと30°ずれるのか——「Y結線では線間電圧と巻線電圧の関係がずれる」という一点に尽きます。順を追って確かめてみましょう。
Y結線:線間電圧は巻線電圧より30°進む
Y結線では、各巻線の一端が中性点に集まっています。だから巻線にかかる電圧は相電圧です。線間電圧は2つの相電圧の差——\( \dot{V}_{UV}=\dot{V}_U-\dot{V}_V \) になります。
三相のベクトルは互いに120°ずつずれています。\( \dot{V}_U \) から \( \dot{V}_V \) を引く——つまり \( \dot{V}_V \) を180°回してから足すと、合成ベクトルは元の \( \dot{V}_U \) より30°進んだ向きになり、長さは √3 倍になります。正三角形の頂点から対辺への関係を思い出せば、幾何的にも納得できます。
Δ結線:線間電圧と巻線電圧は同じもの
Δ結線では、巻線が三角形の各辺になっています。三角形の頂点が端子ですから、巻線の両端の電圧がそのまま線間電圧です——位相差も大きさの差もありません。
2つを組み合わせると30°が残る
変圧器の一次巻線と二次巻線は、同じ鉄心に巻かれているので同相(減極性なら)です。ずれが生じるのは「巻線電圧から線間電圧に変換するとき」だけ——だからその変換が一次と二次で違えば、差が残ります。
| 結線 | 一次側の変換 | 二次側の変換 | 残る位相差 |
| Y-Y | +30° | +30° | 0°(相殺) |
| Δ-Δ | 0° | 0° | 0° |
| Y-Δ | +30° | 0° | 二次が30°遅れる |
| Δ-Y | 0° | +30° | 二次が30°進む |
一次側だけが30°進む変換を受ければ、一次を基準に見た二次は30°遅れて見える——これが Y-Δ が「30°遅れ」になる理屈です。逆に二次側だけが変換を受ける Δ-Y は、二次が30°進みます。
ただし実際の向きは、巻線の極性や端子の対応づけ、相順によって反転し得ます。本問がわざわざ「減極性」「相順U, V, W」と条件を付けているのは、この理屈どおりの向きになるよう固定するためです。結線名だけで暗記せず、図の条件を確認してから判定する——本問が伝えたいのは、まさにその姿勢だと言えます。
⏱️ 本番での進め方
① まず一次・二次の結線の形を読む。同種なら0°で即消去。
② 残った異種結線の向きだけをベクトル図で判定する。
③ V-V は Δ の仲間なので0°。別扱いしない。
④ 本問の条件(減極性・相順U→V→W)では Δ-Y が進み、Y-Δ が遅れ。
💡 覚え方
「同種は0°、異種は±30°」——まずこの2択で3肢が落ちる。そして「Y側は線間が巻線より30°進む、Δ側は同相」——この一次情報から、どちらに30°残るかを図で追えるようにしておきましょう。


コメント