電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目で頻出の「変圧器の並行運転」。本記事では、令和5年度上期 A問題8で問われた三相変圧器の並行運転の条件に関する論説問題から誤っているものを選ぶ問題を、角変位(位相変位)の図を交えて解説します。
カギは角変位(位相変位)。三相変圧器を並行運転するには角変位が一致している必要があり、角変位が異なる結線どうしは並行運転できません。問題文(3)は「Δ-YとY-Yは並行運転できる」としていますが、Δ-Y(30°)とY-Y(0°)は角変位が異なるためできないのが正しく、ここが誤りです。
ほぼ同じ問題が 【機械】平成24年度A問題8 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
令和5年度上期 機械科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題8
電験3種 機械科目 【変圧器】 令和5年度上期 A問題8
三相変圧器の並行運転に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 各変圧器の極性が一致していないと、大きな循環電流が流れて巻線の焼損を引き起こす。
(2) 各変圧器の変圧比が一致していないと、負荷の有無にかかわらず循環電流が流れて巻線の過熱を引き起こす。
(3) 一次側と二次側との誘導起電力の位相変位(角変位)が各変圧器で等しくないと、その程度によっては、大きな循環電流が流れて巻線の焼損を引き起こす。したがって、Δ-Y と Y-Y との並行運転はできるが、Δ-ΔとΔ-Y との並行運転はできない。
(4) 各変圧器の巻線抵抗と漏れリアクタンスとの比が等しくないと、各変圧器の二次側に流れる電流に位相差が生じ取り出せる電力は各変圧器の出力の和より小さくなり、出力に対する銅損の割合が大きくなって利用率が悪くなる。
(5) 各変圧器の百分率インピーダンス降下が等しくないと、各変圧器が定格容量に応じた負荷を分担することができない。
出題のポイント:(3)は前半と後半で別の組合せを述べている
(3)の記述は2つの主張を含んでいます。「Δ-Y と Y-Y は並行運転できる」と「Δ-Δ と Δ-Y は並行運転できない」——後半は正しく、前半が誤りです。
| 結線 | 角変位 | 並行運転できる相手 |
| Δ-Δ | 0° | Y-Y、V-V(同じ0°の組) |
| Y-Y | 0° | Δ-Δ、V-V |
| V-V | 0° | Δ-Δ、Y-Y |
| Δ-Y | 30° | Y-Δ(同じ30°の組) |
| Y-Δ | 30° | Δ-Y |
Δ-Y は30°、Y-Y は0°——角変位が違うので並行運転できません。一方 Δ-Δ は0°、Δ-Y は30°——こちらも違うので確かにできない。後半だけを読んで「正しい」と判断してしまうのが、この肢の罠です。
☝️ ひっかけの作り方:1つの選択肢に2つの主張を入れるのは、論説問題の定番の作り方です。片方が正しくても、もう片方が誤りなら選択肢全体が誤り——「したがって」以降の具体例まで必ず判定する習慣をつけましょう。

角変位が違うと何が起きるのか
2台の変圧器の二次電圧が30°ずれている状態を考えます。大きさが同じでも、位相が違えばベクトルとしては別の量——その差の電圧が、2台を結ぶループにかかります。
大きさが等しく位相が30°違うベクトルの差
sin15°=0.259
定格電圧の約52 %もの電圧が、循環電流を流す原動力になります。変圧器の %Z が5 %程度ですから、2台合わせても10 %——0.518/0.10=約5倍の定格電流が流れる計算です。
これは短絡電流に匹敵する大きさで、負荷をつないでいなくても流れ続けます。問題文が「大きな循環電流が流れて巻線の焼損を引き起こす」と書いているのは、決して大げさではないのです。
並行運転の条件を整理する
| 条件 | 満たさないと起きること | 三相だけの条件か |
| 極性が一致 | 大きな循環電流で巻線が焼損(最も危険) | 単相・三相とも |
| 変圧比が一致 | 無負荷でも循環電流が流れて過熱 | 単相・三相とも |
| %インピーダンス降下が等しい | 容量に応じた負荷分担ができない | 単相・三相とも |
| 抵抗とリアクタンスの比が等しい | 電流に位相差が生じ、合計出力が各機の和より小さくなる | 単相・三相とも |
| 角変位が一致 | 位相差による大きな循環電流 | ★三相のみ |
| 相回転が一致 | 短絡状態になる | ★三相のみ |
6つの条件のうち、角変位と相回転は三相特有です。単相変圧器の並行運転では、極性・変圧比・%Z・抵抗とリアクタンスの比の4つ——三相ではそこに2つ加わると整理できます。
条件を満たさないときの結果も、危険度に差があります。極性違いと相回転違いは即座に短絡状態になり、最も危険。角変位違いと変圧比違いは循環電流による過熱——%Z 違いと比の違いは、危険ではないが効率や容量の面で不利になります。
| 危険度 | 条件 | 起きること |
| 高(即損傷) | 極性・相回転 | 短絡状態になり瞬時に焼損 |
| 中(過熱) | 角変位・変圧比 | 循環電流が流れ続けて巻線が過熱 |
| 低(性能低下) | %Z・抵抗とリアクタンスの比 | 分担が偏る、合計出力が落ちる |

単相の並行運転には、角変位も相回転もない
本問は「三相変圧器の並行運転」と題されています。わざわざ「三相」と断っているのは、単相にはない条件が2つ加わるからです。
| 条件 | 単相 | 三相 | 理由 |
| 極性 | 必要 | 必要 | 逆なら電圧が加算されて短絡状態 |
| 変圧比 | 必要 | 必要 | 差の電圧で循環電流 |
| %インピーダンス降下 | 必要 | 必要 | 分担が容量比にならない |
| 抵抗とリアクタンスの比 | 必要 | 必要 | 電流に位相差が生じる |
| 角変位 | — | ★必要 | 結線方式によって一次・二次に位相差が生じる |
| 相回転 | — | ★必要 | 相の順序が違えば別々の相どうしをつなぐことになる |
単相変圧器には「相」という概念がないので、角変位も相回転も定義されません。三相になって初めて、結線方式と相の順序という2つの自由度が生まれる——その分だけ条件が増えるわけです。
相回転(相順)が違うというのは、U-V-W の順序が U-W-V になっている状態です。この状態でつなぐと、120°ずれた相どうしを結ぶことになります——電圧差は √3 倍にもなり、事実上の短絡です。角変位30°どころの騒ぎではありません。
V結線どうしの並行運転はできるのか
V-V 結線は角変位0°ですから、Δ-Δ や Y-Y と並行運転できます。「V結線は特殊だから並べられない」ということはありません。
ただし容量の面では注意が要ります。V結線側は変圧器2台分の86.6 %しか出せないので、%Z が等しくても、実際に取り出せる容量は銘板どおりにならないからです。
並行運転の条件を満たすことと、期待どおりの容量が出ることは別の話——条件は「安全に並べられるか」、容量は「どれだけ使えるか」。2つを分けて考えられると、実務的な判断もできるようになります。
⏱️ 本番での進め方
① 角変位は0°組(Δ-Δ/Y-Y/V-V)と30°組(Δ-Y/Y-Δ)の2つに分かれる。
② 同じ組どうしなら可、混ぜると不可。
③ (3)は「できる/できない」を2つ述べている。両方を判定する。
④ 他の4肢は並行運転の条件そのもの。全部正しいので復習に使える。
💡 覚え方
「0°組と30°組、同じ組どうしだけ」——結線名を見たらまず組を判定。そして「極性と相回転は即死、角変位と変圧比は過熱、%Zと比は損」——危険度の順で覚えておくと、記述の重みも判断できます。
出題履歴:平成24年度と同一問題(答えの番号も同じ)
本問は平成24年度 A問題8とまったく同じ問題です(変圧器42:三相変圧器の並行運転の条件(角変位))。選択肢の並びも正解の番号も (3) で一致しています。
同一問題でも答えの番号が変わることがある——たとえば単巻変圧器の問題は (4) と (3) で番号が変わりました(変圧器47 と 変圧器48)。本問のように番号まで同じ年もあれば、変わる年もある——だからこそ番号ではなく内容で覚える必要があります。


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