電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器」をはじめとする電気機器の損失は頻出かつ重要なテーマです。本記事では、令和5年度下期 A問題7で出題された「電気機器の損失」に関する穴埋め問題を、はじめての方でも確実に判断できるように分類から丁寧に解説します。
この問題は、コイル(巻線)の損失・鉄心の損失・回転による損失を区別できるかを問う穴埋め問題です。ポイントは、「どこで生じる損失か」で分類すること。銅線で生じれば銅損、鉄心で生じれば鉄損(ヒステリシス損+渦電流損)、回転で生じれば機械損です。
ほぼ同じ問題が 【機械】令和元年度A問題7 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
令和5年度下期 機械科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題7
電験3種 機械科目 【変圧器】 令和5年度下期 A問題7
次の文章は、電気機器の損失に関する記述である。
a コイルの電流とコイルの抵抗によるジュール熱が (ア) であり、この損失を低減するため、コイルを構成する電線の断面積を大きくする。交流電流が並列コイルに分かれて流れると、並列コイル間の電流不平衡からこの損失が増加する。この損失を低減するため、並列回路を構成する各コイルの鎖交磁束と抵抗値、すなわち、各コイルのインピーダンスを等しくする。
b 鉄心に交流磁束が通ると損失が発生する。その成分は (イ) と (ウ) の二つに分類される。前者は、交流磁束によって誘導された電流が鉄心を流れてジュール熱として発生する。そこで、電気抵抗が高い強磁性材料や、表面を絶縁膜で覆った薄い鋼板を積層した積層鉄心を磁気回路に用いて、電流の経路を断つことで損失を低減する。後者は、鉄心の磁束が磁界の履歴に依存するために発生する。この (ウ) を低減するために電磁鋼板が磁気回路に広く用いられている。
c 上記の電磁気要因の損失のほか、電動機や発電機では、回転子の運動による軸受け摩擦損や冷却ファンの空気抵抗による損失などの (エ) がある。
空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
| (1) | 銅損 | 渦電流損 | ヒステリシス損 | 機械損 |
| (2) | 鉄損 | 抵抗損 | ヒステリシス損 | 銅損 |
| (3) | 銅損 | 渦電流損 | インダクタンス損 | 機械損 |
| (4) | 鉄損 | 機械損 | ヒステリシス損 | 銅損 |
| (5) | 銅損 | 抵抗損 | インダクタンス損 | 機械損 |
出題のポイント:どこで生じる損失かで分類する
電気機器の損失は、発生場所で3つに分けられます。この分類さえ頭に入っていれば、問題文の説明を読むだけで空欄が埋まります。
| どこで生じるか | 損失の名前 | 内訳 | 減らし方 |
| 巻線(銅線) | 銅損 | I2R のジュール熱 | 電線を太くする/並列コイルのインピーダンスをそろえる |
| 鉄心 | 鉄損 | 渦電流損+ヒステリシス損 | 薄板を絶縁して積層する(渦電流)/けい素を加える(ヒステリシス) |
| 回転部分 | 機械損 | 軸受摩擦損+風損 | 軸受・冷却ファンの改良(変圧器には存在しない) |
問題文の a は「コイルの電流とコイルの抵抗によるジュール熱」——銅線で生じるので銅損です。b は「鉄心に交流磁束が通ると」——鉄心で生じるので鉄損、c は「回転子の運動による軸受け摩擦損や冷却ファンの空気抵抗」——機械損です。

(イ)(ウ)の順序は説明文で決まる
鉄損は渦電流損とヒステリシス損に分かれますが、本問はどちらが(イ)でどちらが(ウ)かを、説明文の内容から判断させます。
| 空欄 | 問題文の説明 | 入る語 | 決め手 |
| (イ) | 「誘導された電流が鉄心を流れてジュール熱として発生」 | 渦電流損 | 電流が流れると書いてある |
| (ウ) | 「磁束が磁界の履歴に依存するために発生」 | ヒステリシス損 | ヒステリシス=履歴 |
「ヒステリシス(hysteresis)」という語は、そもそも「履歴」を意味します。問題文が「磁界の履歴に依存する」と書いているのは、ヒステリシスの語義そのもの——語の意味を知っていれば即決できます。
さらに対策の書き方も手がかりになります。(イ)の対策は「積層鉄心を用いて電流の経路を断つ」——電流を断つのですから、電流が原因の渦電流損です。(ウ)の対策は「電磁鋼板(けい素鋼板)」——材料でヒステリシスループを細くする対策にあたります。
☝️ ひっかけの作り方:選択肢には「抵抗損」「インダクタンス損」という語も並んでいます。抵抗損は銅損の別名として使われることがあるものの、鉄損の内訳としては用いません。「インダクタンス損」に至っては存在しない用語——実在しない語を混ぜるのは穴埋め問題の常套手段です。

並列コイルの電流不平衡という論点
問題文 a の後半は、やや細かい話に踏み込んでいます。大電流を流す巻線では、1本の太い電線ではなく複数の細い電線を並列にする——そのときに電流の偏りが起きると、銅損が増えるという指摘です。
並列にした導体のインピーダンスがそろっていないと、電流は低いほうへ偏ります。合計の電流が同じでも、偏っていれば I2R の合計は大きくなる——2乗の効果で、平等に分けたときより損失が増えます。
だから鎖交磁束と抵抗値をそろえる工夫が要ります。導体の位置を途中で入れ替える転位(トランスポジション)が代表的な方法で、大形機の巻線では標準的に行われています。
ここは表皮効果や近接効果とも関係する話で、交流では電流が導体の表面に偏るため、太い1本より細い複数本のほうが有利になります。ただし並列にするなら偏りを防ぐ工夫が要る——この一連の理屈が、問題文 a の後半に凝縮されています。
鉄損の2成分は、周波数への依存が違う
渦電流損とヒステリシス損は、発生の仕組みが違うぶん、周波数や磁束密度への依存の仕方も違います。この違いが分かると、対策の効き方も理解できます。
| ヒステリシス損 | 渦電流損 | |
| 周波数への依存 | 1乗に比例 | 2乗に比例 |
| 板厚への依存 | 関係しない | 2乗に比例 |
| 材料への依存 | ヒステリシスループの面積 | 電気抵抗率 |
| 主な対策 | けい素を加える/アモルファス化 | 薄板を絶縁して積層する |
渦電流損が周波数の2乗に比例するのは、誘導される起電力が周波数に比例し、それによる電流も周波数に比例するからです。電力は電流の2乗——だから周波数の2乗になります。
板厚の2乗に比例するのも同じ理屈です。板が厚いほど大きな渦のループが作れ、抵抗が小さく電流が大きくなる——だから板を半分の厚さにすれば渦電流損は1/4になります。積層が効く理由が、式の形にそのまま現れています。
周波数が高い用途ほど渦電流損が支配的になります。インバータで駆動する高周波の変圧器では、けい素鋼板ではなくフェライトコアが使われる——フェライトは電気抵抗が非常に高く、渦電流がほとんど流れないからです。
商用周波数(50/60 Hz)の変圧器では、ヒステリシス損と渦電流損がだいたい同じくらい——だから両方の対策が必要になります。けい素鋼板の薄板積層という構造は、2つの対策を同時に満たす答えだったわけです。
⏱️ 本番での進め方
①「どこで生じるか」で3分類。銅線=銅損、鉄心=鉄損、回転=機械損。
②(イ)は「電流が流れる」と書いてあるので渦電流損。
③(ウ)は「履歴」=ヒステリシス。語義がそのままヒント。
④「インダクタンス損」は存在しない用語。混ざっていたら消す。
💡 覚え方
「銅で銅損、鉄で鉄損、回って機械損」——そして「鉄損は渦電流とヒステリシスの2つ」。変圧器には回転部分がないので機械損がない——これが変圧器の効率が高い理由でもあります。
出題履歴:令和元年度にも同じ問題が出ている
ほぼ同じ問題が令和元年度 A問題7でも出題されています(変圧器:電気機器の損失)。損失の分類は、出題パターンが固定された定番テーマ——2問セットで解いておけば、確実な得点源になります。


コメント