電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器」は頻出かつ重要なテーマの一つです。本記事では、平成19年度(2007年)A問題6で出題された「単巻変圧器の自己容量」について、はじめての方でも確実に解けるように、単巻変圧器の仕組みから計算まで一歩ずつ丁寧に解説します。
この問題は、単巻変圧器が負荷に供給する電力(線路容量)に対して、変圧器自身に必要な容量(自己容量)を求める問題です。ポイントは、自己容量=直列巻線が受け持つ容量=(V₂−V₁)×電流という関係。【機械】平成30年度A問題9と同じ考え方で解けます。
平成19年度 機械科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題6
電験3種 機械科目 【変圧器】 平成19年度 A問題6
図に示すように、定格一次電圧 6000 V、定格二次電圧 6600 V の単相単巻変圧器がある。消費電力 100 kW、力率 75 %(遅れ)の単相負荷に定格電圧で電力を供給するために必要な単巻変圧器の自己容量 [kV·A] として、最も近いものは次のうちどれか。
ただし、巻線の抵抗、漏れリアクタンス及び鉄損は無視できるものとする。(1) 9.1 (2) 12.1 (3) 100 (4) 121 (5) 133

出題のポイント:力率は皮相電力を出すためだけに使う
自己容量は「電圧差×電流」で決まります。電流を求めるには皮相電力が要る——そのために消費電力(有効電力)を力率で割ります。
力率が使われるのは、有効電力から皮相電力を出す一手だけです。自己容量の式そのものには力率が入りません——容量[V・A]は皮相の量だからです。
| 段階 | やること | 本問の値 |
| ① | 有効電力を力率で割って皮相電力を出す | 100/0.75≒133.3 kV・A |
| ② | 皮相電力を二次電圧で割って電流を出す | 133 333/6 600≒20.2 A |
| ③ | 電圧差×電流で自己容量を出す | 600×20.2≒12.1 kV・A |

順に計算する
消費電力100 kW、力率75 %
皮相電力÷定格二次電圧
電圧差600 V×二次電流
約12.1 kV・A

9.1 %という比の正体
電流が約分される
電圧だけで決まる
電流が約分されて消える——つまりこの比は電圧だけで決まり、負荷の大きさにも力率にも関係しません。6 000 V を6 600 V に昇圧する単巻変圧器なら、いつでも自己容量は負荷容量の9.1 %です。
この関係を使えば、計算がさらに短くなります。負荷容量133.3 kV・A の9.1 %=12.1 kV・A——電流を求めずに一発で出ます。
⚠️ よくある間違い
(5) 133 kV・Aは負荷容量(皮相電力)そのもの、(3) 100 kV・Aは消費電力そのものです。問われているのは「単巻変圧器の自己容量」——負荷の容量ではありません。
(1) 9.1 kV・Aは力率で割り忘れたときの値(100 kW をそのまま使って 600×100 000/6 600÷1 000=9.09)——有効電力と皮相電力を混同したケースです。
なぜ自己容量が小さくて済むのか
単巻変圧器では、電力の大部分が「変圧されずに」一次から二次へ直接流れます。電磁誘導を経由するのは、電圧差の分だけ——だから変圧器が受け持つ仕事が小さくなります。
| 本問の値 | 意味 | |
| 負荷容量 | 133.3 kV・A | 負荷に供給される電力 |
| 自己容量 | 12.1 kV・A | 電磁誘導で受け渡される電力(変圧器の大きさを決める) |
| 差 | 121.2 kV・A | 分路巻線を通って直接流れる電力 |
121 kV・A 分は、変圧器を「素通り」している——だから鉄心も巻線も小さくてよいのです。普通の二巻線変圧器なら133 kV・A の機器が必要ですから、10分の1近い大きさで済みます。
代償は、一次と二次が絶縁されないことでした。6 000 V と6 600 V のように電圧が近く、どちらも高圧の用途なら、絶縁されないことは問題になりません——だから配電線路の電圧調整器などで広く使われます。
力率が悪いと自己容量はどうなるか
本問の力率は75 %でした。もし力率がもっと悪かったら、必要な自己容量はどう変わるでしょうか。
自己容量は「電圧差×電流」で決まり、電流は皮相電力で決まります。有効電力が同じでも、力率が悪ければ皮相電力が増え、電流も増える——だから自己容量も増えます。
| 力率 | 皮相電力(消費電力100 kW) | 二次電流 | 自己容量 |
| 1.00 | 100 kV・A | 15.2 A | 9.1 kV・A |
| 0.80 | 125 kV・A | 18.9 A | 11.4 kV・A |
| 0.75(本問) | 133.3 kV・A | 20.2 A | 12.1 kV・A |
| 0.60 | 166.7 kV・A | 25.3 A | 15.2 kV・A |
力率が1.00 から0.60 に落ちると、自己容量は9.1 から15.2 kV・A へ67 %も増えます——同じ100 kW を送るのに、変圧器を1.7倍大きくしなければならないということ。
これが力率改善が経済的に意味を持つ理由です。力率が悪いと、変圧器も電線も遮断器も、すべて大きなものが必要になります——設備投資が増えるのです。
電力会社が力率割引を設けているのも、需要家の力率が悪いと、供給側の設備も大きくしなければならないから。本問の計算が、そのまま経済性の話につながっていると読めます。
なお自己容量と負荷容量の比(9.1 %)は、力率が変わっても一定です。変わるのは負荷容量のほう——比は電圧だけで決まるという関係は、力率がいくつでも成り立ちます。
⏱️ 本番での進め方
① 消費電力を力率で割って皮相電力に。100/0.75≒133.3 kV・A。
② 自己容量/負荷容量=(V2−V1)/V2=600/6 600=9.1 %。
③ 133.3×0.091≒12.1 kV・A。電流を求めずに解ける。
④ 100 や133 は負荷側の値。問われているのは変圧器の容量。
💡 覚え方
「自己容量/負荷容量=電圧差/二次電圧」——電流も力率も関係しない、電圧だけの比です。この比を先に出してしまえば、あとは負荷容量に掛けるだけ——最短の解き方になります。
出題履歴:平成30年度にも同じ型が出ている
まったく同じ6 000 V/6 600 V の単巻変圧器で、負荷条件だけを変えた問題が平成30年度 A問題9で出ています(変圧器30:単巻変圧器の自己容量)。あちらは消費電力200 kW・力率0.8 で、答えは22.7 kV・Aです。
電圧が同じなので、自己容量の比も同じ9.1 %——負荷容量250 kV・A の9.1 %が22.7 kV・Aという関係になっています。2問を並べると、比が電圧だけで決まることが実感できます。


コメント
コメント一覧 (1件)
[…] この問題は、単巻変圧器の(a)直列巻線に流れる電流、(b)自己容量を求めるB問題です。ポイントは、直列巻線を流れる電流=二次線電流 I₂であることと、自己容量=(V₂−V₁)×I₂という関係。変圧器30・変圧器31と同じ単巻変圧器の考え方です。 […]