今回は平成19年度 機械科目 A問題4を解説します。V/f一定制御インバータで駆動された誘導電動機の回転速度を求める、基本中の基本の計算問題です。
使う式は Ns=120f/p と N=(1−s)Ns の2本だけ。ただし「V/f比=4」という数字が撹乱条件として置かれており、これに手を出すと迷子になります。インバータ駆動では、同期速度を作るのはインバータの出力周波数——ここを外さないことが全てです。
平成19年度 機械科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4
電験3種 機械科目 【誘導機】 平成19年度 A問題4
V/f一定制御インバータで駆動されている6極の誘導電動機がある.この電動機は,端子電圧をV[V],周波数をf[Hz]として,V/f比=4一定制御インバータによって66Hzで駆動されている.このときの滑りは5%であった.この誘導電動機の回転速度[min-1]の値として,正しいのは次のうちどれか.
V/f一定制御インバータで駆動されている6極の誘導電動機がある。この電動機は、端子電圧をV[V]、周波数をf[Hz]として、V/f比=4一定制御インバータによって66Hzで駆動されている。このときの滑りは5%であった。この誘導電動機の回転速度[min-1]の値として、正しいのは次のうちどれか。
(1)1 140 (2)1 200 (3)1 254 (4)1 320 (5)1 710 min-1

出題のポイント:条件を「使うもの」と「使わないもの」に仕分ける
この問題の第一関門は計算ではなく、情報の選別です。「V/f 比=4」という数字に手を出すと迷子になります——回転速度を決めるのは、極数・周波数・滑りの3つだけです。
| 与えられた条件 | 使うか | 役割 |
| 極数 6 | 使う | 同期速度の分母 |
| 周波数 66 Hz | 使う | 同期速度の分子 |
| 滑り 5 % | 使う | 同期速度からの遅れ |
| V/f 比=4 | 使わない | 磁束を一定に保つ制御条件(撹乱条件) |
2ステップで解く
p は極数であって極対数ではない。6極ならそのまま6。
1 320 の5 %=66 を引くと暗算が速い。
では V/f 一定制御とは何なのか
答えには使いませんが、V/f 一定制御そのものは誘導機の最重要知識です。なぜ電圧と周波数をセットで動かすのかを押さえておきましょう。
| 操作 | V/f 比 | 磁束 | 何が起きるか |
| 周波数だけ下げる | 上がる | 増える | 磁気飽和 → 励磁電流が急増 → 焼損 |
| 電圧だけ下げる | 下がる | 減る | トルク不足(T∝V2) |
| 両方を同率で下げる | 一定 | 一定 | トルク特性を保ったまま減速できる |
「周波数だけ下げると焼ける」のが最も危険です。磁束が増えて鉄心が飽和すると、励磁電流が指数関数的に跳ね上がります——負荷をかけていなくても巻線が過熱します。
だからインバータは電圧と周波数を必ずセットで動かします。V/f 一定=磁束一定=トルクを出す能力が変わらない——低速から定格速度まで、同じトルクで使えるのがこの制御の値打ちです。
本問の V/f 比=4 は、端子電圧が V=4×66=264 V だということを意味します。60 Hz なら240 V、30 Hz なら120 V——周波数に比例して電圧が決まる直線を、この比が表しています。
★同型問題:令和6年度上期 A問題4(17年ぶりの完全再出題)
この問題は令和6年度上期 A問題4として、まったく同じ問題が再出題されています。数値も選択肢も一字一句そのままです。
| 項目 | 平成19年度 A問題4(本問) | 令和6年度上期 A問題4 |
| 極数 | 6極 | 6極(同じ) |
| 周波数 | 66 Hz | 66 Hz(同じ) |
| 滑り | 5 % | 5 %(同じ) |
| 撹乱条件 | V/f 比=4 | V/f 比=4(同じ) |
| 答え | 1 254 min−1 | 1 254 min−1(同じ) |
| 正解の番号 | (3) | (3)(同じ) |
17年という長い間隔を置いて、選択肢の並びまで含めて完全に同じ問題が出た——過去問演習の価値を、これ以上ないほど分かりやすく示す実例です。
「66 Hz」という珍しい数値も、「V/f 比=4」というダミーも、そのまま引き継がれています。基本的な計算問題ほど、長い間隔を置いて再登場する——Ns=120f/p と N=Ns(1−s) は誘導機のすべての土台ですから、出題者としても外せない論点なのでしょう。
⏱️ 本番での進め方
① 条件を「使う・使わない」に仕分けてから計算する。
② インバータ駆動なら f はインバータの出力周波数。50/60 Hz と思い込まない。
③ p は極数。6極なら6を入れる(極対数の3ではない)。
④ (4)1 320 は同期速度——滑りを引く一手が残っている。
💡 覚え方
「Ns=120f/p、N=(1−s)Ns」の2行だけ。速度問題で V や V/f 比が出てきたら撹乱条件を疑う。V/f 一定制御は磁束を一定に保つための制御で、周波数だけ下げると磁気飽和して励磁電流が急増する——だから電圧もセットで下げる。
⚠️ よくある間違い
V/f 比=4 を使おうとして手が止まるのが本問の罠です。速度の式に電圧は現れません。もう一つは周波数に60 を使ってしまうこと——インバータ駆動なので66 Hzです。(2)1 200 は60 Hz で計算した場合の同期速度として用意されています。
同期速度の階段は覚えてしまう
誘導機の問題では、ほぼ毎回 Ns=120f/p を計算します。よく出る組み合わせを覚えておくと、計算が速いだけでなく、極数の読み違いにも気づけます。
| 極数 | 50 Hz | 60 Hz | 本問の66 Hz |
| 2極 | 3 000 | 3 600 | 3 960 |
| 4極 | 1 500 | 1 800 | 1 980 |
| 6極 | 1 000 | 1 200 | 1 320 |
| 8極 | 750 | 900 | 990 |
50 Hz の階段「3 000 → 1 500 → 1 000 → 750」と、60 Hz の階段「3 600 → 1 800 → 1 200 → 900」——この2列だけで、たいていの問題に対応できます。
本問の66 Hz は、60 Hz の1.1倍です。だから同期速度も1 200×1.1=1 320——覚えている値から比で出すこともできます。120×66/6 を計算するより速いかもしれません。
そして「答えは同期速度より少し小さい」という感覚も持っておいてください。選択肢に1 320 があれば、それは同期速度そのもの——問われているのが回転速度なら、それは答えではありません。
インバータ駆動では「定格」の意味が変わる
商用電源につないだ電動機なら、周波数は50 Hz か60 Hz に固定です。ところがインバータ駆動では、周波数を自由に選べます——すると「定格回転速度」という言葉の意味が曖昧になります。
| 商用電源駆動 | インバータ駆動 | |
| 周波数 | 50 または60 Hz に固定 | 自由(本問は66 Hz) |
| 同期速度 | 1つに決まる | 周波数しだいで連続的に変わる |
| 銘板の回転速度 | その機械の速度そのもの | 「定格周波数で回したときの値」にすぎない |
| 定格を超える運転 | できない | できる(ただし定出力領域に入る) |
本問の66 Hz は、定格が60 Hz の機械なら1割の増速運転にあたります。インバータなら定格を超える速度も出せる——ただし電圧はもう上げられないので、V/f 比が下がって磁束が減ります。
磁束が減ればトルクも減りますが、速度が上がるので出力は保たれる——直流機の弱め界磁制御とまったく同じ構図です。「定格周波数までは定トルク、それ以上は定出力」というのが、インバータ駆動の基本的な特性になります。
もっとも、本問はそこまで問うていません。V/f 比=4 という条件は「磁束が一定に保たれている」ことを示すだけで、速度の計算には最後まで登場しないのです。
まとめ
| 同期速度 | N_s=120f/p=120×66/6=1320 min-1 |
| 周波数 | インバータの出力周波数66Hz(商用の60Hzではない) |
| 極数 | 6極をそのまま代入(極対数ではない) |
| 回転速度 | N=(1−s)N_s=0.95×1320=1254 min-1 |
| V/f比=4 | V=264 V。回転速度の計算には使わない撹乱条件 |
| V/f一定制御の意味 | φ ∝ V/f ⇒ 磁束一定 ⇒ トルク一定・磁気飽和の防止 |
| 答え | (3) |
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