電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器の電圧変動率」は近似式の使いこなしが問われる重要テーマです。本記事では、平成24年度 A問題7「電圧変動率から漏れリアクタンスを逆算する」問題を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
カギは近似式 \( \varepsilon = n(p\cos\theta + q\sin\theta) \) で、力率1なら抵抗分 p だけ、力率0ならリアクタンス分 q だけが残ること。2つの測定の比を取れば、x/r の比がそのまま求まります。
平成24年度 機械科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題7
電験3種 機械科目 【変圧器】 平成24年度 A問題7
単相変圧器があり、二次側を開放して電流を流さない場合の二次電圧の大きさを 100 % とする。二次側にリアクトルを接続して力率 0 の電流を流した場合、二次電圧は 5 % 下がって 95 % であった。二次側に抵抗器を接続して、前述と同じ大きさの力率 1 の電流を流した場合、二次電圧は 2 % 下がって 98 % であった。一次巻線抵抗と一次換算した二次巻線抵抗との和は 10 Ωである。鉄損及び励磁電流は小さく、無視できるものとする。
ベクトル図を用いた電圧変動率の計算によく用いられる近似計算を利用して、一次漏れリアクタンスと一次換算した二次漏れリアクタンスとの和 [Ω] の値を求めた。その値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 5 (2) 10 (3) 15 (4) 20 (5) 25
出題のポイント:力率0と力率1で、pとqを別々に取り出す
電圧変動率の近似式には p と q の2つが入っています。ふつうは両方が混ざって出てくるので分離できませんが、力率が0または1のときだけは片方だけが残ります——本問はその性質を使って、2回の測定から p と q を別々に読み取らせる問題です。
| 測定 | 力率 | cos θ | sin θ | 近似式が示すもの |
| リアクトルを接続 | 0(遅れ) | 0 | 1 | ε=q。電圧降下5 %がそのまま q |
| 抵抗器を接続 | 1 | 1 | 0 | ε=p。電圧降下2 %がそのまま p |
「同じ大きさの電流を流した」という条件が効いています。電流が同じなら、p と q はそれぞれ rI/V と xI/V——比を取れば I と V が約分され、r と x の比だけが残ります。

比を取って漏れリアクタンスを求める
抵抗器を接続したとき
リアクトルを接続したとき
I と V が約分される
r=10 Ω が与えられている
選択肢の25に一致

選択肢の作られ方を読む
⚠️ よくある間違い
(2) 10 Ωは与えられた抵抗の値そのものです。問われているのはリアクタンスであって抵抗ではありません——問題文が長いので、最後に何を聞かれているかを見失いやすいのが原因でしょう。
(3) 15 Ωは10×(5−2)/2=15——2つの電圧降下の「差」を使ってしまったケースです。使うのは比であって差ではありません。
☝️ ひっかけの作り方:「二次電圧が5 %下がった」を「ε=5 %」と読めるかが第一関門です。電圧変動率は「無負荷電圧と負荷時電圧の差の割合」——無負荷を100 %とした基準で95 %に下がったのですから、まさに変動率5 %です。問題文が「二次側を開放して……を100 %とする」と丁寧に書いているのは、この読み替えを誘導するためです。
力率0で電圧降下が大きくなる理由
同じ大きさの電流なのに、リアクトル負荷では5 %、抵抗負荷では2 %——2倍以上の差がついています。これは変圧器の漏れリアクタンスが巻線抵抗より大きいことを示しています。
力率0の遅れ電流は、変圧器の内部で最も大きな電圧降下を生みます。電流とリアクタンス降下が直角の関係にならず、まっすぐ端子電圧を押し下げる向きに働くからです。逆に力率1なら、リアクタンス降下は端子電圧と直角——大きさへの寄与がほとんどありません。
だから実務では、遅れ力率の負荷ほど電圧が下がりやすいのです。工場の力率が悪いと受電端の電圧が下がる、という現象の正体がこれ——力率改善が電圧維持にも効く理由になっています。
本問の変圧器なら、%Z は √(22+52)≒5.4 %。抵抗分よりリアクタンス分が2.5倍大きい——これは電力用変圧器としてごく標準的な比率です。
この測定法は実際の試験でも使われている
本問のように「力率0と力率1で別々に測る」という発想は、机上の作り話ではありません。短絡試験で得られるインピーダンス電圧を、抵抗分とリアクタンス分に分解する——実務でも同じ考え方が使われています。
短絡試験では、加えた電圧・流した電流・消費電力の3つを測ります。電力は抵抗でしか消費されないので、ここから抵抗分が分かります。そして全体のインピーダンスとの差から、リアクタンス分が求まります。
インピーダンス電圧÷定格電流
短絡試験の電力から
三平方で残りを求める
本問はこの逆をたどっていると言えます。2つの力率での電圧降下から p と q を読み取り、既知の r を手がかりに x を出す——与えられる情報が違うだけで、扱っている量は同じです。
%抵抗降下と%リアクタンス降下の相場
| 機器 | p(%抵抗降下) | q(%リアクタンス降下) | %Z |
| 小容量の変圧器 | 2〜3 % | 3〜5 % | 4〜6 % |
| 大容量の変圧器 | 0.5 %前後 | 10〜15 % | 10〜15 % |
容量が大きくなるほど、p は小さく q は大きくなるという傾向があります。大形機ほど巻線が太くて抵抗が小さい一方、短絡電流を抑えるために意図的に漏れリアクタンスを大きく設計するからです。
本問の変圧器は p=2 %、q=5 %——小容量機の相場に収まっています。計算で出た値が、機器の常識的な範囲に入っているかを確かめる習慣をつけると、桁違いの誤りにすぐ気づけます。
⏱️ 本番での進め方
① 力率0なら ε=q、力率1なら ε=p。これで2つの測定が分離できる。
② q/p=x/r。電流も電圧も約分で消える。
③ x=(5/2)×10=25 Ω。
④ 問われているのがリアクタンスか抵抗かを最後に確認する。
💡 覚え方
「力率1なら抵抗分だけ、力率0ならリアクタンス分だけ」——近似式の cos θ と sin θ がスイッチの役目を果たします。2つの極端な力率で測れば、p と q を別々に取り出せる——これは実際の試験法の考え方でもあります。
関連問題:近似式は計算問題としても出る
同じ近似式を使って電圧変動率そのものを求める問題も出ています(変圧器18:変圧器の電圧変動率の近似式とは?)。そちらは p を銅損から求めて力率1で答える形——本問とは逆に、p と q から ε を出す向きです。


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