今回は平成30年度 電力科目 A問題13、線路損失を一定に保ったまま負荷電力と力率が変化したときの、変化後の力率を求める計算問題です。損失一定=電流一定がカギです。
ポイントは線路損失3I²Rが一定=電流Iが一定。端子電圧Vも一定なので、負荷電力 P=√3·V·I·cosφ は力率cosφに比例。P1/P2=cosφ1/cosφ2 の関係から cosφ2 を求めます。
平成30年度 電力科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題13
電験3種 電力科目 【配電の計算】 平成30年度 A問題13
三相3線式高圧配電線で力率cosφ1=0.76(遅れ)、負荷電力P1[kW]の三相平衡負荷に電力を供給している。三相平衡負荷の電力がP2[kW]、力率がcosφ2(遅れ)に変化したが線路損失は変わらなかった。P1がP2の0.8倍であったとき、負荷電力が変化した後の力率cosφ2(遅れ)の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、負荷の端子電圧は変わらないものとする。
(1) 0.61 (2) 0.68 (3) 0.85 (4) 0.90 (5) 0.95

答えは(5):0.95
比の立て方を間違えないことが、この問題の要です。
★
★
★条件を代入
★答え
「P₁ が P₂ の0.8倍」なので、P₁/P₂=0.8 です——分母と分子を取り違えないこと。
掛けるのではなく割ります——0.76×0.8 では答えが合わないのです。
電力が増えたのだから、力率も上がっているはずです——0.76より大きい値になると見当がつきます。
「AがBの何倍」を式にする練習
| 問題文の言い方 | 式にすると | 間違えやすい形 |
| ★★P₁ が P₂ の0.8倍 | ★★P₁=0.8 P₂ つまり P₁/P₂=0.8 | ★★P₂/P₁=0.8 としてしまう |
| ★P₂ が P₁ の1.25倍 | ★★P₂/P₁=1.25(同じことを逆から言った形) | ★— |
「AがBの何倍」なら、A÷B がその倍率です——前に来たほうが分子。
本問はP₁が先に来ているので、P₁が分子です——P₁/P₂=0.8。
0.8は1より小さいので、P₁のほうが小さいと分かります——つまり電力は増えたのです。
だから力率も上がる、と見当をつけられます——選択肢を絞る手がかりになります。
答えの見当をつけてから計算する
| 段階 | 分かること | 選択肢の絞り込み |
| ★① | ★★電力が増えた(P₂>P₁) | ★★力率は0.76より大きい |
| ★② | ★★(1)0.61 と(2)0.68 が消える | ★★残るは(3)(4)(5) |
| ★③ | ★★0.76÷0.8 を計算する | ★★0.95 に決まる |
計算する前に、増えるか減るかを考えます——それだけで選択肢が半分に減るのです。
もし計算を間違えて0.61を出しても、おかしいと気づけます——検算の代わりになるのです。
逆数を取ってしまう誤りも、この段階で防げます——0.8÷0.76=1.05 は力率になりえないから。
力率は1を超えません——これも大事な確かめです。
⚠️ よくある間違い
0.76×0.8=0.61 とする——割り算です。
P₂/P₁=0.8 と読む——P₁ が分子です。
損失一定を電力一定と読む——電流一定です。
力率が1を超える答えを出す——ありえません。
電力が減ったと考える——P₁が0.8倍なので増えています。
⏱️ 本番での進め方
①★損失一定=電流一定。電力は力率に比例。
②★「AがBの何倍」は A÷B。
③★cosφ₂=cosφ₁÷(P₁/P₂)。
④★計算前に増減の向きを見当づける。
💡 覚え方
「前に来たほうが分子」——P₁がP₂の0.8倍ならP₁/P₂=0.8です。電力が増えれば力率も上がる——先に向きを決めると間違えません。
★同型の問題が令和7年度上期 A問題13(配電の計算:損失一定と負荷電力)にあります。そちらは電力の比を問うています。
損失一定という条件が使われる問題
| 問われ方 | 使う関係 |
| ★電力の比を求める | ★★W₂/W₁=cosθ₂/cosθ₁ |
| ★★変化後の力率を求める | ★★cosφ₂=cosφ₁÷(P₁/P₂) |
| ★変化後の電力を求める | ★★P₂=P₁×(cosφ₂/cosφ₁) |
どれも同じ1つの関係式から出てきます——P ∝ cosφです。
何を求めるかによって、式を変形するだけ——覚えるのは1つで足りるのです。
本問は2番目の型にあたります。
力率0.76と0.95で無効電力はどう変わるか
| 力率 | sinφ | 同じ電流での無効分 |
| ★0.76 | ★★0.650 | ★★0.650 I |
| ★★0.95 | ★★0.312 | ★★0.312 I |
無効分が半分以下に減っています——その分が有効分に回ったのです。
力率0.95は、実務でも目標とされる値です——これ以上は費用に見合わないのです。
同じ電流でどれだけ多く送れるか
★
| 変化前 | 変化後 | |
| ★力率 | ★★0.76 | ★★0.95 |
| ★負荷電力 | ★★P₁ | ★★1.25 P₁ |
| ★線電流 | ★★同じ | ★★同じ |
| ★線路損失 | ★★同じ | ★★同じ |
P₁ が P₂ の0.8倍ということは、P₂ は P₁ の1.25倍です——1÷0.8=1.25。
設備を増やさずに25%多く送れるようになりました——力率改善の効果です。
力率の値から sinφ を出す
★
★
力率が1に近づくほど、sinφ は急に小さくなります——2乗して引くからです。
0.95でも sinφ は0.312あります——無効電力がゼロではないのです。
計算結果を式に戻して確かめる
★条件と一致
答えを式に戻すと、0.8になって条件と合います——これで検算完了です。
もし0.61を選んでいたら、0.76÷0.61=1.25 となり条件と合いません——すぐ気づけるのです。
比の問題は、戻して確かめるのが速いのです。
力率改善の実務上の目標
| 力率 | 扱い |
| ★0.85未満 | ★★電気料金が割増になる |
| ★★0.85以上(遅れ) | ★★割引が受けられる |
| ★1.0に近い | ★★損失も電圧降下も最小 |
| ★進み側 | ★★軽負荷時に電圧が上がり不利 |
力率0.95は、割引を受けつつ進み側に行きすぎない値です——だから目標にされるのです。
本問の変化後の力率がちょうど0.95なのは、その実務感覚に合っています。
数字に現実味があるかどうかも、検算の手がかりになります。
まとめ
| 損失一定 | 3I²R一定→I一定 |
| 電力 | P=√3·V·I·cosφ∝cosφ |
| 比 | P1/P2=0.8=cosφ1/cosφ2 |
| cosφ2 | 0.76/0.8=0.95 |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・損失一定と力率(配電計算5):【電力】令和7年度上期 A問題13
・損失一定と負荷電力(配電計算3):【電力】令和7年度下期 B問題16

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