今回は平成21年度 電力科目 A問題7、送電線で送られる三相有効電力の式を選ぶ問題です。この問題は令和4年度下期A問題9(送電の計算9)と文面・選択肢・答えまで完全に同一——電力系統の最重要公式が繰り返し問われている証拠です。
覚える形はP=VsVrsinδ/X(Vs・Vrは線間電圧、δは相差角、Xは1線当たりリアクタンス)。相差角δのsinで決まり、線間電圧を使うと√3が消えるのがポイントです。
平成21年度 電力科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題7
電験3種 電力科目 【送電の計算】 平成21年度 A問題7
交流三相3線式1回線の送電線路があり、受電端に遅れ力率角θ〔rad〕の負荷が接続されている。送電端の線間電圧をVs〔V〕、受電端の線間電圧をVr〔V〕、その間の相差角はδ〔rad〕である。
受電端の負荷に供給されている三相有効電力〔W〕を表す式として、正しいのは次のうちどれか。
ただし、送電端と受電端の間における電線1線当たりの誘導性リアクタンスはX〔Ω〕とし、線路の抵抗、静電容量は無視するものとする。
(1) VsVr·cosδ/X (2) √3VsVr·cosθ/X (3) VsVr·sinδ/X
(4) √3VsVr·sinδ/X (5) VsVr·cosθ/(Xsinδ)

答えは(3):VsVr sinδ / X
送電電力の式は、相差角の正弦で決まります。
力率角θではなく、相差角δが入ります——そこが最大の関門です。
δ は送電端と受電端の電圧の位相差——電圧どうしのずれです。
θ は電圧と電流の位相差——まったく別のものになります。
送れる電力を決めるのは、電圧どうしのずれのほう——だからδが入るのです。
しかも√3 が付きません——線間電圧を2つ掛けているからです。
なぜ√3 が付かないのか
相電圧で立式してから、線間電圧に直すと分かります。
★√3 も3も消える
√3 で2回割るので、分母に3が出ます——それが3倍と打ち消し合うのです。
だから最終形には3も√3 も残りません——電力損失の式と同じ構図です。
三相の式では、この約分がよく起きます——覚えておくと見通しがよいのです。
この式が示すこと
| 条件 | 送電電力 | 意味 |
| ★δ=0 | ★★ゼロ | ★★位相差がなければ電力は流れない |
| ★δ=30° | ★0.50 倍 | ★★通常の運転点 |
| ★δ=90° | ★★最大 | ★★理論上の限界 |
| ★δ>90° | ★★かえって減る | ★★脱調する |
位相差がなければ、電力はまったく流れません——意外に思えますが式のとおりです。
だから電力を送るには、わざと位相をずらします——発電機の出力を上げるとδが開くのです。
90度を超えると、送れる電力がかえって減ります——そこで同期が外れるのです。
実際は30〜40度で運用します——事故時の変動に備えた余裕です。
⚠️ よくある間違い
(1)の cosδ を選んでしまう——正弦(sin)です。δ=0で電力ゼロになる形が正しい。
(2)(5)の cosθ を選んでしまう——力率角ではなく相差角です。
(4)の√3 が付いた形を選んでしまう——線間電圧を2つ掛けるので約分されます。
δ とθ を取り違える——δ は電圧どうし、θ は電圧と電流のずれ。
δ=0を代入して確かめる——電力が0になる形が正しいのです。
⏱️ 本番での進め方
①★P=VsVr sinδ/X。相差角の正弦。
②★線間電圧なら√3 も3も付かない。
③★δ は電圧どうし、θ は電圧と電流のずれ。
④★δ=0を代入すれば正しい式か確かめられる。
💡 覚え方
「電圧のずれが電力を生む」——だからsinδです。δ=0なら電力もゼロ——その形になるかで選択肢を確かめられます。
安定度と相差角は平成24年度 A問題7(架空送電:送電容量)にもあります。
δ とθ を取り違えない
2つの角度が出てくるので、区別が要ります。
| 記号 | 何と何のずれか | 決まるもの |
| ★相差角 δ | ★★送電端電圧と受電端電圧のずれ | ★★送れる電力の大きさ |
| ★力率角 θ | ★★電圧と電流のずれ | ★★有効電力と無効電力の割合 |
δ は電圧どうしのずれです——発電機の出力を上げると開いていくのです。
θ は負荷の性質で決まります——モータが多ければ遅れるのです。
送電電力を決めるのは δ のほう——だから式に sinδ が入るのです。
問題文が両方を与えているのは、区別を問うため——θ は使わないのです。
式から安定度が見えてくる
送電電力の式は、安定度の話につながります。
| リアクタンス X | 同じ電力での δ | 安定度 |
| ★小さい(短距離) | ★★小さくて済む | ★★余裕がある |
| ★大きい(長距離) | ★★大きくなる | ★★脱調しやすい |
X が大きいほど、同じ電力を送るのにδを開く必要があります——だから長距離ほど不利なのです。
δ が90度に近づくと、余裕がなくなります——少しの変動で脱調するのです。
だから直列コンデンサで X を打ち消す方法があります——δ を小さく保てるのです。
1つの式が、安定度対策まで示している——覚える価値のある式です。
極端な場合を代入して検算する
選択肢が正しいかを、極端な場合で試せます。
| 選択肢の形 | δ=0のとき | 判定 |
| ★cosδ を含む | ★★最大値になる | ★★おかしい |
| ★★sinδ を含む | ★★ゼロになる | ★★正しい |
| ★δ を含まない | ★★変わらない | ★★おかしい |
位相差がなければ、電力は流れないはずです——そこが判定の基準になります。
cosδ なら δ=0で最大になってしまいます——物理的におかしいのです。
だから sinδ を含む形が正しい——それだけで(1)(2)(5)が消えるのです。
極端な場合を代入するのは、検算の定石——式を導けなくても選べることがあります。
送電電力を増やす3つの道すじ
式の各項が、そのまま対策に対応します。
| 動かす量 | 効き方 | 実際の手立て |
| ★電圧 V | ★★2乗で効く | ★★送電電圧の格上げ |
| ★リアクタンス X | ★★反比例 | ★★多導体化・直列コンデンサ |
| ★相差角 δ | ★sinδ で効く | ★★90度が限界で余裕がない |
Vs と Vr の積なので、電圧は2乗で効きます——だから昇圧が最も効くのです。
X を減らすには、多導体化や直列コンデンサ——リアクタンスを打ち消すのです。
δ を大きくするのは限界があります——90度で脱調するから。
だから実際は V と X で調整します——式が対策を示しているのです。
無効電力の式も押さえる
有効電力と対になる式があります。
| 量 | 式 | δ との関係 |
| ★有効電力 P | ★★(VsVr/X)sinδ | ★★δ が大きいほど増える |
| ★無効電力 Q | ★★(Vr/X)(Vs cosδ − Vr) | ★★電圧差で決まる |
有効電力は位相差、無効電力は電圧の大きさの差で決まります——役割が分かれているのです。
だから発電機の出力を上げるとδが開き、励磁を上げると電圧が上がります——別々に制御できるのです。
この分離が、電力系統の運用を成り立たせています——有効電力は周波数、無効電力は電圧で調整します。
本問は有効電力を問うています——だからsinδ の形になります。
まとめ
| 公式 | P=VsVr sinδ/X(線間電圧) |
| 相電圧版 | P=3EsEr sinδ/X |
| √3 | 線間電圧では消える |
| 主役 | 相差角δ(θではない) |
| 再出題 | R04下問9(送電の計算9)と完全同一 |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・完全同一の再出題(送電の計算9):【電力】令和4年度下期 A問題9
・%Xと送電電力(送電の計算16):【電力】平成30年度 B問題17

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