今回は令和元年度 電力科目 A問題11、電力ケーブルの布設方式の誤り選択問題です。トラフ・マンホール・洞道・共同溝という設備名まで踏み込んだ、布設方式シリーズ(地中送電1・7)の詳細版です。
直接埋設式の性格は「安くて早いが、その後が大変」。掘削した溝にトラフを並べて埋めるので、増設のたびに掘り返しが必要で計画しにくく、事故復旧にも時間がかかる。「増設を計画しやすく復旧が容易」は長所と短所を接ぎ木した誤りです。
令和元年度 電力科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題11
電験3種 電力科目 【地中送電】 令和元年度 A問題11
我が国の電力ケーブルの布設方式に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 直接埋設式には、掘削した地面の溝に、コンクリート製トラフなどの防護物を敷き並べて、防護物内に電力ケーブルを引き入れてから埋設する方式がある。
(2) 管路式には、あらかじめ管路及びマンホールを埋設しておき、電力ケーブルをマンホールから管路に引き入れ、マンホール内で電力ケーブルを接続して布設する方式がある。
(3) 暗きょ式には、地中に洞道を構築し、床上や棚上あるいはトラフ内に電力ケーブルを引き入れて布設する方式がある。電力、電話、ガス、上下水道などの地下埋設物を共同で収容するための共同溝に電力ケーブルを布設する方式も暗きょ式に含まれる。
(4) 直接埋設式は、管路式、暗きょ式と比較して、工事期間が短く、工事費が安い。そのため、将来的な電力ケーブルの増設を計画しやすく、ケーブル線路内での事故発生に対して復旧が容易である。
(5) 管路式、暗きょ式は、直接埋設式と比較して、電力ケーブル条数が多い場合に適している。一方、管路式では、電力ケーブルを多条数布設すると送電容量が著しく低下する場合があり、その場合には電力ケーブルの熱放散が良好な暗きょ式が採用される。

誤りは(4):直接埋設式は増設も復旧も苦手
「増設を計画しやすく、復旧が容易」——安さの利点から結論が飛んでいます。
| ★直接埋設式 | ★管路式・暗きょ式 | |
| ★工事費・期間 | ★★安く短い(ここは正しい) | ★高く長い |
| ★増設 | ★★新たに掘る必要がある | ★★空いた管や棚に足すだけ |
| ★事故復旧 | ★★掘り返すので時間がかかる | ★★掘らずに交換できる |
前半の「工事期間が短く、工事費が安い」は正しい——誤りは後半だけです。
埋めてしまえば、あとから手を入れるには掘るしかありません——だから増設も復旧も苦手なのです。
安いのは最初だけ——あとの手間が大きいことになります。
だから都市部では、初期費用をかけてでも管路式や暗きょ式——長い目で見れば得だからです。
3方式の順位を押さえる
| 項目 | ★直接埋設式 | ★管路式 | ★暗きょ式 |
| ★工事費・期間 | ★★最小 | ★中 | ★★最大 |
| ★熱放散 | ★中(土) | ★★最悪(管+空気層) | ★★最良(対流) |
| ★増設 | ★★掘り直しが要る | ★★空いた管に通すだけ | ★★棚に並べるだけ |
| ★事故復旧 | ★★掘り返すので最も遅い | ★引き抜いて入れ替える | ★★入って交換できる |
| ★外傷事故 | ★★受けやすい | ★管に守られる | ★★ほとんどない |
工事費と性能が、きれいに逆順に並びます——安いものは制約が多いのです。
(5)が述べるとおり、多条数なら管路式か暗きょ式——直接埋設式は条数が増やせません。
さらに条数が多いと管路式でも熱が問題になります——そこで暗きょ式が選ばれるのです。
だから(5)は正しい記述——選ぶ順序まで正確に書かれています。
(1)〜(3) 各方式の工法
| 方式 | 工法の要点 |
| ★直接埋設式 | ★★溝を掘り、コンクリート製トラフを並べ、その中にケーブルを引き入れて埋め戻す |
| ★管路式 | ★★管路とマンホールを先に埋設し、マンホールから管路へ引き入れて接続する |
| ★暗きょ式 | ★★洞道を構築し、床上・棚上・トラフ内に引き入れる。共同溝もこれに含まれる |
トラフは、掘削事故からケーブルを守るためのもの——他工事のスコップが当たるのです。
管路式は「先に埋設しておく」のが要点——あとからケーブルだけを通すから。
共同溝は、電力・電話・ガス・上下水道をまとめて収めます——費用を分け合えるのが利点です。
(1)〜(3)は、いずれも工法を正確に述べています。
⚠️ よくある間違い
(4)の前半「工事期間が短く、工事費が安い」を見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「増設を計画しやすく、復旧が容易」。
埋めたら掘るしかない——だから増設も復旧も苦手です。
(1)のトラフを疑ってしまう——直接埋設式の標準的な工法。
(3)の共同溝を疑ってしまう——暗きょ式に含まれます。
(5)の熱放散を疑ってしまう——多条数では暗きょ式が有利で正しい。
安さと使いやすさは別——そこを結びつけた記述が誤りになります。
⏱️ 本番での進め方
①★直接埋設式は安いが、増設も復旧も苦手。
②★管路式・暗きょ式は掘らずに手を入れられる。
③★多条数なら暗きょ式(熱放散が良い)。
④★共同溝は暗きょ式に含まれる。
💡 覚え方
「埋めたら掘るしかない」——直接埋設式の弱点はここに尽きます。安いのは最初だけで、あとの手間が大きい——だから都市部では使われません。
布設方式は繰り返し出題されています——平成26年度 A問題10(地中送電:布設方式の空欄補充)、令和4年度下期 A問題10(地中送電:布設方式の比較)にもあります。
将来の増設をどう見込むか
(4)の「増設を計画しやすく」を、実務から見ましょう。
| 方式 | 増設のしかた | 準備 |
| ★直接埋設式 | ★★もう一度掘って埋める | ★★できることがない |
| ★管路式 | ★★空いている管に通す | ★★予備の管を先に埋めておく |
| ★暗きょ式 | ★★空いた棚に並べる | ★★余裕を持った断面で作る |
管路式と暗きょ式は、先に器を作っておけます——だから増設が計画しやすいのです。
予備の管を1本増やす費用は、あとから掘るより格段に安い——だから最初に多めに入れます。
直接埋設式には、その「先回り」ができません——ケーブルを直接埋めるだけだから。
だから(4)の後半は、事実と逆になっています。
コンクリート製トラフの役目
(1)に出てくる防護物を、詳しく見ましょう。
| 項目 | 内容 |
| ★形 | ★★U字形の溝にふたをかぶせる |
| ★守る相手 | ★★他工事の掘削によるケーブルの損傷 |
| ★副次的な効果 | ★土圧や車両の重量から守る |
| ★短所 | ★★熱が逃げにくくなる |
地中で最も多い事故が、他工事による外傷です——掘削機のバケットが当たるのです。
だから硬いもので覆っておきます——当たっても中まで届かないように。
その代わり、熱の逃げ道がひとつ減ります——コンクリートは土より熱を通しにくいから。
守ることと冷やすことが、ここでも相反します——地中線の設計はこの兼ね合いです。
マンホールで接続する意味
(2)の「マンホール内で接続」を、実務から見ましょう。
| 項目 | 内容 |
| ★なぜ接続が要るか | ★★ケーブルはドラム1巻き分の長さしかない |
| ★間隔 | ★★150〜250 m ごと |
| ★作業 | ★★絶縁体を段むきして接続部を組み立てる |
| ★求められること | ★★ほこりや湿気を避ける丁寧な施工 |
接続部は、ケーブルの中で最も弱い箇所になります——現場で組み立てるからです。
工場で作られた本体と違い、条件が整いません——ほこりが入れば絶縁が落ちるのです。
だから事故は接続部で起きることが多い——統計にも表れています。
接続箇所を減らせるなら、そのほうがよい——だからケーブルは長いほど有利になります。
布設方式を選ぶ順序
実務では、どういう順で考えるのでしょうか。
| 問い | 答えが「はい」なら |
| ★条数が多いか | ★★管路式か暗きょ式へ |
| ★将来の増設があるか | ★★管路式か暗きょ式へ |
| ★熱の制約が厳しいか | ★★暗きょ式へ |
| ★掘り返しが許されない場所か | ★★暗きょ式へ |
| ★どれも当てはまらない | ★★直接埋設式で足りる |
条件が厳しいほど、高価な方式に移っていきます——費用と性能の兼ね合いです。
郊外で1回線だけなら、直接埋設式で十分——掘り返しても影響が小さいから。
都心の幹線なら、迷わず暗きょ式——条数も熱も掘削制約もすべて厳しいのです。
問題文の(5)が、まさにこの選び方を述べています。
我が国で主流とされる理由
問題文が「主流」と書くのは管路式と暗きょ式です。
| 事情 | 日本での状況 |
| ★用地 | ★★道路の下しか使えない |
| ★他の埋設物 | ★★ガス・水道・通信が密集している |
| ★掘削の制約 | ★★交通量が多く、何度も掘れない |
| ★需要の伸び | ★★将来の増設を見込む必要がある |
道路の下は、すでに他の管でいっぱいです——掘るたびに調整が要るのです。
だから一度の工事で先まで備えておきます——管を多めに埋めるのがその形。
交通量の多い道路では、掘削の許可自体が難しい——夜間工事に限られることもあるのです。
こうした事情が、管路式と暗きょ式を主流にしました。
まとめ
| 誤り | (4) 直接埋設は増設計画しにくく復旧も困難 |
| 直接埋設式 | トラフ敷設・安い早い・その後が大変(1) |
| 管路式 | 管路+マンホール・接続はマンホール内(2) |
| 暗きょ式 | 洞道・共同溝も含む(3)・熱放散良好(5) |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・布設3方式の基本(地中送電1):【電力】令和7年度下期 A問題10
・管路式の熱の弱点(地中送電7):【電力】令和4年度下期 A問題10

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