架空送電6【電験3種 電力】がいしの塩害対策に「絶縁電線」は無関係!洗浄・はっ水塗布・過絶縁が正解 令和6年度下期 A問題8 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 令和6年度下期 A問題8 塩害対策に絶縁電線は無関係!洗浄と過絶縁が正解

今回は令和6年度下期 電力科目 A問題8、送配電線路や変電所におけるがいしの塩害とその対策を問う誤り選択問題です。塩害は台風・季節風で運ばれた海塩ががいし表面に付着し、霧や小雨で溶けて導電路を作ることで起こります。

対策の柱は3つ:①絶縁を強化する(連結個数増・長幹がいし・耐塩がいし=過絶縁)②汚損を除く(活線洗浄)③ぬれても導電させない(シリコーンコンパウンド等のはっ水性物質塗布)。ここに「絶縁電線の採用」というがいしと無関係な対策を紛れ込ませたのが本問です。

出題のポイント:がいしの塩害と対策

がいしの塩害問題を解く要点図
汚損から放電へ至る流れと代表的な対策を確認します。

塩分やじんあいが湿ることで生じる表面漏れ電流と、沿面距離・洗浄・はっ水処理による対策を整理します。

目次

令和6年度下期 電力科目 A問題8:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 令和6年度下期 A問題8 問題文
令和6年度下期 電力科目 A問題8 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題8

電験3種 電力科目 【架空送電】 令和6年度下期 A問題8

 送配電線路や変電所におけるがいしの塩害とその対策に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) がいしの塩害に対する基本的な対策は、がいしの沿面距離を伸ばすことや、がいし連の直列連結個数を増やすことである。

(2) がいしの塩害発生は、海塩等の水溶性電解質物質の付着密度だけでなく、塵埃などの不溶性物質の付着密度にも影響される。

(3) がいしの塩害は、フラッシオーバ事故に至らなくても可聴雑音や電波障害の原因にもなる。

(4) がいしの塩害対策として、絶縁電線の採用やがいしの洗浄、がいし表面へのはっ水性物質の塗布等がある。

(5) がいしの塩害による地絡事故は、雷害による地絡事故と比べて再閉路に失敗する場合の割合が多い。

答え誤っている記述は (4)です。

塩害の発生と正しい対策

がいしの塩害発生と選択肢1・2・3・5の正しい理由の解説
沿面距離、付着物、局部放電、再閉路失敗の関係を整理します。

「絶縁電線の採用」——塩害対策になりません

塩害が起きる場所絶縁電線の効果
★がいしの表面★★塩分が付いて漏れ電流が流れる★★電線を絶縁しても関係ない
★電線★★そもそも裸電線★★絶縁していない

塩害はがいしの表面で起きる現象です——電線の被覆とは無関係

しかも架空送電線は裸電線です——絶縁すること自体がありません

「がいしの洗浄」「はっ水性物質の塗布」は正しい対策——そこに1つだけ違うものが混ぜてあります

正しい対策の列に、成り立たないものを1つ紛れ込ませる型——1つずつ確かめることです。

誤りは(4):架空送電線は裸電線

架空送電線は裸電線であり選択肢4が誤りであることを示す解説
送電線を絶縁被覆するのではなく、主にがいし側の耐汚損性能を高めます。
理由内容
★重量★★被覆を付けると重くなり鉄塔が大きくなる
★放熱★★裸のほうが冷えるので許容電流が大きい
★費用★何十 km も被覆すれば莫大な費用
★絶縁★★がいしと空気で足りている

電線は高い場所にあり、人が触れることはありません——だから被覆が要らないのです。

相どうしも十分に離れています——空気が絶縁物として働くことになります。

絶縁するのは、がいしのところだけで足ります——鉄塔と接する一点です。

配電線では人家に近いので絶縁電線を使います——そこが送電線との違いになります。

(5) 再閉路が失敗しやすい理由

★雷による地絡★塩害による地絡
★原因★★雷は一瞬で去る★★塩分は付いたまま残る
★再閉路★★成功しやすい★★失敗しやすい
★復旧★数秒で戻る★★洗浄するまで戻らない

再閉路とは、いったん切って数秒後につなぎ直すこと——原因が消えていれば送電を再開できます

雷は一瞬なので、切ったときにはもう去っています——だから成功率が高いのです。

塩分は付いたままなので、つなぎ直せばまた放電します——原因が残っているから。

しかも台風では広範囲で同時に起きます——大規模停電につながることになります。

⚠️ よくある間違い
(4)の「がいしの洗浄」「はっ水性物質の塗布」を見て正しいと判断する——その2つは正しいのです。誤りは「絶縁電線の採用」だけ
1つの選択肢に3つ並んでいたら、すべて確かめることです。
(1)の沿面距離と連結個数を疑ってしまう——塩害対策の基本
(2)の不溶性物質を疑ってしまう——塵埃が水分を保持して悪化させます
(3)の可聴雑音を疑ってしまう——フラッシオーバに至らなくても障害になります
(5)の再閉路を疑ってしまう——原因が残るので失敗しやすいのです。

⏱️ 本番での進め方
①★架空送電線は裸電線なので絶縁電線は塩害対策にならない。
②★塩害はがいしの表面で起きる。電線ではない。
③★塩害の再閉路は原因が残るので失敗しやすい。
④1つの選択肢に複数並んでいたら全部確かめる。

💡 覚え方
「塩害はがいし、電線は裸」——この2つを押さえれば即答できます正しい対策の列に成り立たないものを混ぜる型——塩害では繰り返し出てきます

★この問題は平成20年度 A問題10として出題されたものと実質的に同じです架空送電:塩害対策(H20))。16年を隔てての再出題です塩害と他の障害の区別は平成27年度 A問題9架空送電:がいしの塩害)にあります。

(1) 沿面距離を伸ばす方法

塩害対策の基本は、放電の経路を長くすることです

方法内容短所
★連結個数を増やす★★がいしを何個も足す★★鉄塔が高くなる
★耐塩がいし★★笠のひだを深くして沿面距離を稼ぐ★個数を増やさずに済む
★長幹がいし★★継ぎ目がなく雨で洗われやすい★機械的強度に制約

沿面距離とは、がいしの表面をたどった長さ——直線距離より長い経路です。

塩分が付くと表面が導電性を持つので、経路の長さが効きます——長いほど抵抗が大きいのです。

個数を増やせば確実ですが、鉄塔が高くなり費用が増えます——だから耐塩がいしを選ぶこともある

汚損区分A〜D に応じて設計します——等価塩分付着密度で判断するのです。

(2) 不溶性物質が悪さをする理由

塩分だけでは、実は事故に至りにくいのです

段階起きること
★塵埃や煤煙ががいし表面に積もる
★②★★スポンジのように湿気を蓄える
★③★塩分がその水分に溶けて電解質になる
★④★★乾きにくいので導電性が続く

塩分だけなら、乾けば電気を通しません——固体の食塩は絶縁物だから。

水に溶けて初めて電気を通します——だから湿気が要るのです。

塵埃があると、その湿気が保たれます——晴れていても導電性が残ることになります。

だから工業地帯では塩害が起きやすい——海から遠くても煤煙があるのです。

汚損区分Dに工業地帯が入るのは、そういう理由

(3) 可聴雑音と電波障害の出どころ

フラッシオーバに至らなくても障害になります

★塩害による雑音★コロナによる雑音
★発生場所★★がいしの表面★★電線の表面
★原因★★漏れ電流による部分放電★電界の集中
★起きやすい天候★★霧・小雨★雨天

がいし表面が濡れると、漏れ電流が流れ始めます——塩分が溶けて導電性を持つから。

電流が流れると熱で乾く部分ができます——そこに電圧が集中して小さな放電が起きる

その放電が音と電波を出します——ジージーという音の正体です。

霧や小雨のときが最も起きやすい——濡れるけれど洗い流されないから。

大雨なら塩分が流れるので、かえって起きません

はっ水性物質を塗るという対策

(4)の後半にある対策を見ましょう

項目内容
★材料★★シリコーングリースやシリコーンゴム
★しくみ★★水をはじいて水滴のまま保つ
★効果★★連続した水の膜ができない
★短所★数年で効果が落ち、塗り直しが要る

塩害は、表面に連続した水の膜ができると起きます——その膜が電流の通り道になるから。

水をはじけば、水滴が点々とするだけです——つながらないので電流が流れません

塗るだけなので、既設のがいしにも使えます——交換より安く済むのです。

ただし効果は永続しません——定期的な塗り直しが要ることになります。

だから根本的には耐塩がいしへの交換が確実

台風の前に洗っておく

がいしの洗浄は、いつ行うのでしょうか

時期ねらい効果
★★台風の接近前★★付着している塩分をあらかじめ落とす★★最も効果的
★汚損度が基準を超えたとき★定期測定にもとづく★計画的に行える
★事故のあと★復旧のために落とす★★停電が長引く

使う水は、純水に近いものでなければなりません——水道水では不純物が電気を通すから。

停電させずに噴射できるので、供給に影響しません——これを活線洗浄といいます

事故が起きてから洗うのでは遅い——その間ずっと停電が続くのです。

だから予防的に行うのが基本——気象情報を見ながら判断します

まとめ

誤り(4) 絶縁電線の採用はがいし塩害対策ではない
過絶縁沿面距離増・連結個数増(1)
汚損指標ESDD(水溶性)+NSDD(不溶性・塵埃)(2)
軽度でも可聴雑音・電波障害(3)
再閉路塩害は汚損が残り失敗が多い(5)
答え(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・がいしの設計思想(架空送電4):【電力】令和7年度上期 A問題8
・活線洗浄装置(変電47):【電力】平成18年度 A問題4

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