今回は平成28年度 電力科目 A問題7、遮断器について誤っているものを選ぶ問題です。アークの消弧、SF₆ガスの環境問題、高電圧系統での使い分け、そして直流遮断の難しさ——遮断器の基本が一通り確認できます。
決め手は電流零点。交流は1サイクルに2回、電流が0になる瞬間(電流零点)があり、そこでアークを消せます。ところが直流は電流零点がないのでアークが自然に消えず、遮断は交流より困難。「容易」とする記述が誤りです。
平成28年度 電力科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題7
電験3種 電力科目 【変電】 平成28年度 A問題7
遮断器に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
遮断器は、送電線路の運転・停止、故障電流の遮断などに用いられる。
遮断器では一般的に、電流遮断時にアークが発生する。ガス遮断器では圧縮ガスを吹き付けることで、アークを早く消弧することができる。
ガス遮断器で用いられる六ふっ化硫黄(SF₆)ガスは温室効果ガスであるため、使用量の削減や回収が求められている。
電圧が高い系統では、真空遮断器に比べてガス遮断器が広く使われている。
直流電流には電流零点がないため、交流電流に比べ電流の遮断が容易である。

誤りは(5):直流の遮断は難しい
「電流零点がないため、交流に比べ遮断が容易」——理由は正しいのに結論が逆です。
| ★交流 | ★直流 | |
| ★電流零点 | ★1周期に2回ある | ★ない |
| ★アークの消え方 | ★零点で自然に消える | ★自然には消えない |
| ★遮断の難易 | ★比較的容易 | ★★困難 |
交流は50 Hz なら1秒間に100回、電流がゼロになります——その瞬間にアークが消えるのです。
遮断器の仕事は、消えた瞬間に絶縁を回復させること——自分でアークを消す必要はありません。
直流には零点がないので、アークが流れ続けます——強制的に消さなければならないのです。
問題文の前半「電流零点がない」は正しい事実——そこから導く結論が逆になっています。
直流遮断器はどうやって切るのか
零点がないなら、人工的に作ればよい——それが基本的な発想です。
| 方式 | しくみ |
| ★転流方式 | ★コンデンサとリアクトルで振動電流を重ね、電流を一瞬ゼロにする |
| ★半導体方式 | ★半導体素子で電流を別の経路へ移してから切る |
| ★抵抗投入 | ★抵抗を挿入して電流を減らしていく |
いずれも交流遮断器より複雑で高価になります——だから直流送電の弱点とされます。
直流送電が2端子(2地点間)に限られてきたのも、この理由——事故時に切り分けられないからです。
近年、実用的な直流遮断器が開発されつつあります——多端子の直流送電網が現実味を帯びてきました。
(1)〜(4) 遮断器の基本
(2)(3) アークをどう消すか
| 遮断器 | 消弧の方法 | 用途 |
| ★ガス遮断器(GCB) | ★SF6ガスを吹き付ける | ★超高圧・高電圧 |
| ★真空遮断器(VCB) | ★真空中でアークが拡散する | ★高圧(6.6〜77 kV) |
| 空気遮断器(ABB) | 圧縮空気を吹き付ける | 旧式・騒音が大きい |
| 油遮断器(OCB) | 油の分解ガスで消弧する | 旧式・火災の恐れ |
SF6は空気の約100倍の消弧能力を持ちます——だから高電圧に向くのです。
真空遮断器は構造が簡単で保守が楽——けれども高電圧では絶縁距離が確保しにくい。
だから(5)の前提「電圧が高い系統ではガス遮断器」は正しい——(4)のSF6の環境問題も正しい記述です。
⚠️ よくある間違い
(5)の前半「直流電流には電流零点がない」を見て正しいと判断する——事実としては正しいのです。
誤りは「遮断が容易」という結論——零点がないから困難になります。
(2)の「アークが発生する」を疑ってしまう——電流を切れば必ずアークが出ます。
(3)の「圧縮ガスを吹き付ける」を疑ってしまう——ガス遮断器の原理そのものです。
(4)のSF6の温室効果を疑ってしまう——CO₂の約23,900倍で回収が義務。
前半が正しく後半が誤りという形は頻出——最後まで読むことです。
⏱️ 本番での進め方
①★直流は電流零点がないので遮断が困難。容易ではない。
②★交流は1周期に2回ゼロになり、そこでアークが消える。
③★直流遮断器は人工的に零点を作る。
④高電圧はガス遮断器、高圧は真空遮断器。
💡 覚え方
「ゼロを通るから切れる」——交流の遮断はそこに頼っています。直流にはその助けがない——だから難しいのです。
GISに納まる遮断器は平成24年度 A問題6(変電:ガス絶縁開閉装置)にあります。
遮断器と断路器の役割分担
(1)の「運転・停止」を、機器ごとに見ましょう。
| 機器 | 切れる電流 | 役割 |
| ★遮断器(CB) | ★負荷電流・短絡電流 | ★事故時に回路を切る |
| ★負荷開閉器(LBS) | ★負荷電流のみ | ★通常の入切 |
| ★断路器(DS) | ★切れない(無電流のみ) | ★点検時に確実に切り離す |
短絡電流は定格の数十倍に達します——それを切れるのは遮断器だけです。
だから遮断器には「遮断容量」という定格があります——切れる短絡容量の上限になります。
遮断容量の決め方
系統の短絡容量より大きい遮断容量が必要です——切れなければ機器が壊れます。
系統が大きくなるほど短絡容量も増える——だから遮断器も更新が要ることになります。
%X を大きく設計するのは、この短絡容量を抑えるため——変圧器と遮断器の設計は連動しています。
要点をもう一度
誤りは(5)の結論だけです。
| 記述 | 内容 | 正誤 |
| (1) | 遮断器の用途 | 正 |
| (2) | アークの発生 | 正 |
| (3) | ガス遮断器の消弧 | 正 |
| (4) | SF6の温室効果 | 正 |
| ★(5) | ★直流の遮断が容易 | ★誤(困難) |
前半の「電流零点がない」は正しい事実——そこから導く結論が逆です。
零点がないから難しい——因果を逆にした典型的な引っかけになります。
交流遮断の実際
| 段階 | 起きること |
| ★① | ★接点が開き、アークが発生する |
| ★② | ★半サイクル以内に電流零点が来る |
| ★③ | ★その瞬間にアークが消える |
| ★④ | ★消弧媒体が絶縁を回復させる |
④で回復が間に合わないと再点弧します——だから消弧能力が重要なのです。
SF6が空気の約100倍というのは、この回復の速さ——高電圧ほど厳しくなることになります。
真空遮断器のしくみ
(5)で比較された真空遮断器を見ておきましょう。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★真空バルブ内で接点が開く |
| ★② | ★接点から金属蒸気が出てアークになる |
| ★③ | ★電流零点で蒸気が急速に拡散する |
| ★④ | ★真空なので絶縁がただちに回復する |
真空には電離するものがありません——だから絶縁回復が速いのです。
消弧媒体を吹き付ける必要がなく、機構が簡単——保守がほとんど要りません。
ただし真空の絶縁耐力は、距離を伸ばしても比例して上がりません——だから超高圧には向かないのです。
そこがガス遮断器との分かれ目——問題文の(5)前提が正しい理由になります。
遮断器に求められる時間
| 項目 | 時間の目安 |
| ★動作時間 | ★2〜3サイクル(40〜60 ms) |
| ★継電器の判定 | ★1サイクル程度 |
| ★合計 | ★0.1秒前後 |
短絡が続けば機器も系統も傷みます——だから0.1秒以内に切るのです。
直流送電が2端子中心だった理由
(5)の遮断の難しさが、系統の形を決めてきました。
| ★2端子(点対点) | ★多端子(直流網) | |
| ★構成 | ★変換所を両端に1つずつ | ★3か所以上をつなぐ |
| ★事故時 | ★変換器を止めれば電流が消える | ★事故区間だけ切り離す必要がある |
| ★直流遮断器 | ★不要 | ★必要 |
2端子なら、変換器の制御で電流をゼロにできます——遮断器がなくても止められるのです。
多端子では、事故区間だけを切り離さなければなりません——全体を止めては意味がないから。
だから直流遮断器の実用化が待たれていました——洋上風力の集約に必要だからです。
近年、半導体と機械接点を組み合わせた方式が実用段階に入りました——数ミリ秒で遮断できます。
まとめ
| (1)用途 | 運転・停止・故障電流の遮断→正しい |
| (2)消弧 | ガス遮断器は圧縮ガスでアーク消弧→正しい |
| (3)SF₆ | 温室効果ガスで削減・回収→正しい |
| (4)使い分け | 高電圧系はガス遮断器→正しい |
| (5)直流遮断 | 電流零点がなく困難(容易は誤り)→答え |
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