電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「4機器の共通点」は変圧器・直流機・誘導機・同期機の横断理解を試す頻出テーマです。本記事では、平成29年度 A問題6を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
3つの記述はそれぞれ2機器の共通点。「減速でトルク増=直流機・誘導機」「等価回路の親戚=誘導機・変圧器」「電機子反作用=直流機・同期機」の3ペアで、空欄は連鎖的に確定します。
平成29年度 機械科目 A問題6:問題文と選択肢
3つの記述は、それぞれ2機器の共通点を述べています。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題6
電験3種 機械科目 【誘導機】 平成29年度 A問題6(要約)
a.(ア)と(イ)は、磁束一定・電源電圧(交流機では周波数も)一定のとき回転速度の変化でトルクが変化する。b. 一次巻線に負荷電流と励磁電流を重畳して流す(イ)と(ウ)は等価回路がよく似ている。c. 負荷電流が電機子巻線を流れる(ア)と(エ)は、界磁磁束と電機子反作用磁束のベクトル和の磁束に比例する誘導起電力が発生する。
(1) 誘導機・直流機・変圧器・同期機 (2) 同期機・直流機・変圧器・誘導機 (3) 直流機・誘導機・変圧器・同期機 (4) 同期機・直流機・誘導機・変圧器 (5) 直流機・誘導機・同期機・変圧器
本問は令和6年度上期 A問題7(誘導機30)でほぼそのまま再出題されました。過去問の「型」がそのまま得点になる代表例です。
出題のポイント:3つの記述=3つのペア
この問題は「2機器ずつの共通点」を3回言っているだけです。3つのペアを覚えてしまえば、番号を見ずに答えが出ます。
| 記述 | 共通点 | ペア | 根拠 |
| a | 速度が変わるとトルクが変わる | 直流機・誘導機 | どちらも減速するとトルクが増える |
| b | 一次巻線に負荷電流と励磁電流を重畳 | 誘導機・変圧器 | 交流励磁で巻線が兼用 |
| c | 電機子反作用 | 直流機・同期機 | 界磁と電機子を別に持つ |
誘導機は a と b の両方に登場し、直流機は a と c の両方に登場します。2回出てくる機器が(ア)(イ)——この重なりを使えば連鎖的に決まります。

b から入るのが最短
記述b「一次巻線に負荷電流と励磁電流を重畳して流す」——交流励磁で巻線が兼用の組ですから、誘導機と変圧器です。回転するほうが(イ)=誘導機、静止機が(ウ)=変圧器。
(イ)が誘導機と決まれば、記述aから(ア)=直流機。(ア)が直流機と決まれば、記述cから(エ)=同期機——3手で全部埋まります。


なぜ直流機と誘導機は「減速するとトルクが増える」のか
記述aは、まったく仕組みの違う2つの機械が同じ振る舞いをすると言っています。その理由を追ってみましょう。
| 直流機(他励・分巻) | 誘導機 | |
| 減速すると | 逆起電力 E=kΦN が減る | 滑り s が増える |
| 次に起きること | Ia=(V−E)/Ra が増える | 相対速度が増えて二次電流 I2 が増える |
| 結果 | T=kΦIa が増える | T が増える |
| 一言で | 「遅くなると電圧差が開いて電流が増える」 | 「遅くなると磁界を切る速さが増える」 |
どちらも「遅れることが、そのままトルクを生む原因になる」という構造です。直流機は電圧差、誘導機は相対速度——形は違いますが、「ずれ」がトルクを生むという点で同じです。
この性質は「自己安定性」と呼べるものです。負荷が重くなって減速すれば、自動的にトルクが増えて釣り合う——制御装置がなくても勝手に安定するのですから、機械として非常に扱いやすい性質です。
同期機にはこの性質がありません。速度は同期速度に固定されているので、減速という応答ができない——代わりに負荷角が開いてトルクを増やします。そして開ききると(δ>90°)脱調して止まってしまう——だから記述aに同期機は入らないのです。
★同一問題:令和6年度上期 A問題7として再出題されている
この問題は令和6年度上期 A問題7としてほぼそのまま再出題されています。ただし正解の番号は違います。
| 平成29年度 A問題6(本問) | 令和6年度上期 A問題7 | |
| (ア)〜(エ) | 直流機・誘導機・変圧器・同期機 | 直流機・誘導機・変圧器・同期機(同じ) |
| 正解の番号 | (3) | (5) |
中身は同じでも並びが違う——「答えは(3)」と番号で覚えていると、令和6年度上期で外します。覚えるべきは「直・誘・変・同」という4語の並びです。
⏱️ 本番での進め方
① 記述b から入る——(イ)(ウ)が一意に決まる。
② 3ペアを覚える:減速トルク増=直・誘、回路の親戚=誘・変、電機子反作用=直・同。
③ 2回出てくる機器が(ア)(イ)——重なりを使って連鎖的に確定。
④ 正解の番号は年度で変わる(本問(3)、令和6年度上期(5))。
記述bの「重畳して流す」とはどういう意味か
「一次巻線に負荷電流と励磁電流を重畳して流す」——やや硬い表現ですが、意味は単純です。1本の巻線に、2つの役目を持つ電流が同時に流れているということです。
変圧器も誘導機も、電源をつないだだけで(負荷がなくても)励磁電流が流れます。磁束を作らなければ何も始まらないからです。そこへ負荷をつなぐと、二次電流に対応する分が上乗せされる——これが「重畳」です。
では、なぜ同期機はこの仲間に入らないのでしょうか。同期機は界磁巻線という別の巻線に直流を流して磁束を作っているからです。電機子巻線には負荷電流しか流れておらず、励磁電流は流れていません——2つの電流が同じ巻線を共有していないのです。
直流機も同じ理由で外れます。界磁巻線と電機子巻線が物理的に分かれているので、電機子に流れるのは負荷電流だけです。だから「界磁電流と電機子電流を独立に制御できる」という直流機の長所も生まれる——記述bと、直流機の特徴は表裏一体だということになります。
記述cの「電機子反作用」は2つの機械でどう現れるか
記述cは直流機と同期機の共通点として電機子反作用を挙げています。同じ言葉ですが、現れ方は少し違います。
| 直流機 | 同期機 | |
| 反作用磁束の向き | 主磁束と直角(交差磁化) | 負荷の力率で変わる |
| 力率が遅れのとき | — | 減磁作用(主磁束を弱める) |
| 力率が進みのとき | — | 増磁作用(主磁束を強める) |
| 主な影響 | 中性軸の移動・整流の悪化・減磁 | 端子電圧の変動(電圧変動率) |
| 対策 | 補極・補償巻線 | 界磁電流の調整(自動電圧調整器) |
直流機ではブラシの位置が電流の分かれ目を決めているので、反作用磁束は必ず主磁束と直角になります。磁束の向きが傾くので中性軸がずれ、整流が悪化する——補極が必要になる理由です。
同期機では負荷の力率によって反作用の向きが変わります。遅れ力率なら主磁束を弱め、進み力率なら強める——だから同期発電機の端子電圧は負荷の力率で大きく変わるのです。同期機の電圧変動率が力率によって正にも負にもなるのは、この性質から来ています。
記述cが「界磁磁束と電機子反作用磁束のベクトル和」と書いているのは、この向きの違いを含めた表現です。単純な足し算ではなくベクトル和だからこそ、力率によって結果が変わる——言葉の選び方が正確な記述だと言えます。
💡 覚え方
「減速トルク増=直・誘、回路の親戚=誘・変、電機子反作用=直・同」。直流機は電圧差、誘導機は相対速度——どちらも「ずれ」がトルクを生むので自己安定性を持つ。同期機は速度を変えられないので負荷角で応じ、開ききると脱調する。
⚠️ よくある間違い
(ア)(イ)の順序を記述bで確認せずに決めるのが典型です。記述aだけでは「直流機と誘導機のどちらか」までしか分かりません。もう一つは(ウ)に同期機を入れること——同期機は界磁巻線で励磁するので、一次巻線に励磁電流を重畳しません。

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