電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「電動機の速度制御」は直流機と誘導機を横断し、二次励磁(セルビウス方式)まで踏み込む応用テーマです。本記事では、平成26年度 A問題9を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
前半は直流機の電圧制御(E=kΦN、Eは速度に比例)、後半は誘導機の滑り利用制御(一次電圧制御・二次抵抗)とその弱点(η₂=1−s が低速で低下)、そして改善策の二次励磁=滑り電力を電源に返還という一続きの物語です。
平成26年度 機械科目 A問題9:問題文と選択肢
長い問題文を3つのブロックに区切って読み解きます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題9
電験3種 機械科目 【誘導機】 平成26年度 A問題9(要約)
他励直流電動機の速度制御には、界磁電流調整のほかに電機子回路の(ア)を調整する方法がある。これは磁束一定の条件で誘導起電力が(イ)に比例している特性を利用したもの。誘導電動機では滑りを広く利用する方法として(ウ)や巻線形の二次抵抗による比例推移を利用する制御があるが、低速になるほど二次効率が(エ)する。これを改善する二次励磁という制御は、二次回路に電力変換器を接続して二次抵抗損に相当する電力を交流電源(オ)する方法である。
(1) 直流電圧・速度・一次電圧制御・低下・に返還 (2) 直流電流・速度・極数変換・増加・から供給 (3) 直流電圧・電機子電流・極数変換・低下・に返還 (4) 直流電圧・電機子電流・一次電圧制御・増加・に返還 (5) 直流電流・電機子電流・一次電圧制御・低下・から供給
出題のポイント:3つのブロックに分けて読む
この問題文は長く見えますが、話が3つに分かれています。ブロックごとに区切って読めば、どれも単独では易しいものです。
| ブロック | 内容 | 空欄 | 必要な知識 |
| ① 直流機 | 他励直流電動機の電圧制御 | (ア)(イ) | E=kΦN(磁束一定なら E∝N) |
| ② 誘導機 | 滑りを利用する制御と、その弱点 | (ウ)(エ) | η2=1−s |
| ③ 二次励磁 | 弱点をどう克服するか | (オ) | 捨てる電力を電源へ返す |

① 直流機のブロック
他励直流電動機は界磁と電機子が独立しています。界磁電流のほかに調整できるのは、電機子回路に加える直流電圧です。(ア)=直流電圧。
「電機子電流に比例」では物理が成り立ちません。誘導起電力は磁束を切る速さで決まるので、電流とは無関係です。(イ)で(3)(4)(5)が消えます。
② 誘導機のブロック:滑りを利用する制御
「滑りを広く利用する方法」と問題文が限定していることに注目してください。速度制御には4つの方式がありますが、そのうち滑りを動かすのは2つだけです。
| 方式 | 動かす変数 | 滑りを利用するか | 効率 |
| 一次電圧制御 | s | する(本問の(ウ)) | 悪い |
| 二次抵抗制御(比例推移) | s | する | 悪い |
| VVVF(周波数制御) | f | しない(同期速度を変える) | よい |
| 極数変換 | p | しない(同期速度を変える) | よい |
(ウ)=一次電圧制御。「極数変換」は同期速度そのものを変える方式なので、「滑りを利用する」という文脈に入りません。
低速にするほど滑りが大きくなり、二次効率 η2=1−s は下がります。(エ)=低下。半分の速度で回せば滑り0.5=二次入力の半分が熱です。
③ 二次励磁:捨てていた電力を回収する
滑り電力(sP2)が抵抗で熱になっているのが問題なら、熱にせずに取り出せばよい——それが二次励磁の発想です。(オ)=に返還。
「から供給」では改善になりません。電力を余分にもらったら、なおさら効率が下がります——返すからこそ効率が上がるのです。


セルビウス方式とクレーマ方式
二次励磁には、回収した電力の行き先で2つの方式があります。
| 方式 | 滑り電力をどこへ返すか | 使うもの | 特徴 |
| セルビウス方式 | 交流電源へ電気として返す | 電力変換器(インバータ) | 電気的に回収。本問の記述はこちら |
| クレーマ方式 | 主軸へ機械的に返す | 直流電動機を同軸に付ける | 機械的に回収。古典的 |
どちらも「滑りの分を捨てない」という同じ目的ですが、セルビウスは電気のまま系統へ、クレーマは軸のトルクとして戻すという違いがあります。電験3種では「二次励磁=電源に返還」という一行で十分です。
二次励磁が使われたのは、大形のポンプや送風機でした。数千kW の機械で滑り10 % を捨てれば数百kW の損失ですから、回収する装置を付けても十分に元が取れたのです。
いまはインバータが安くなり、ほとんどが周波数制御に置き換わっています。周波数制御なら滑り自体を小さいまま保てるので、「捨ててから回収する」より根本的です。二次励磁は「滑り利用制御の完成形にして、最後の姿」だったと言えます。
直流機と誘導機を同じ枠で見る
本問が直流機と誘導機を並べているのには理由があります。速度制御という観点では、両者は同じ構造を持っているのです。
| 直流機 | 誘導機 | |
| 速度の式 | N=(V−IaRa)/(kΦ) | N=(1−s)·120f/p |
| 電圧で変える | 電機子電圧制御(定トルク域) | 一次電圧制御(滑りを動かす) |
| 磁束・周波数で変える | 弱め界磁(定出力域) | VVVF(V/f 一定) |
| 抵抗で変える | 電機子直列抵抗(損失大) | 二次抵抗制御(損失大) |
「抵抗で変える方法は、どちらも損失が大きい」という共通点がはっきり出ます。抵抗は電圧を熱に変えて落とす部品なのですから、当然の帰結です。
そして両者とも、最終的には電力変換器(チョッパ・インバータ)に置き換わりました。半導体で電圧や周波数を作れば、熱にせずに済む——パワーエレクトロニクスが電動機の世界を変えたという共通の物語がここにあります。
⏱️ 本番での進め方
① 3ブロックに分けて読む:直流機/誘導機/二次励磁。
② (イ)=速度——E=kΦN。「電機子電流に比例」は物理として誤り。
③ (ウ)は「滑りを利用する」方式。極数変換は同期速度を変えるので入らない。
④ (オ)は「に返還」。もらったら効率は下がる——返すから上がる。
滑り電力は、どこで熱になるのか
「滑り利用制御は効率が悪い」とひとことで言いますが、その熱がどこで出るかは方式によって違います。そして、その違いが実用上の限界を決めています。
| 方式 | 滑り電力(sP2)はどこで熱になるか | 冷却は楽か |
| 二次抵抗制御(巻線形) | 外部の抵抗器 | 機外なので冷やしやすい |
| 一次電圧制御(かご形) | 回転子の導体そのもの | 回転しているので冷やしにくい |
| 二次励磁(セルビウス) | 熱にせず電源へ返す | そもそも発熱しない |
一次電圧制御の弱点は、まさにここです。かご形の二次回路は回転子の中に閉じているので、滑り電力は回転子の内部でしか熱にできません。回転している部品は放熱しにくいうえ、温度も測りにくい——だから一次電圧制御は小容量・軽負荷の用途に限られます。
巻線形の二次抵抗制御なら、熱は機外の抵抗器で出ます。大きな抵抗器を置いて風で冷やせばよいので、クレーンのような重負荷でも成立します。同じ「滑りを捨てる」制御でも、捨てる場所が違えば使える範囲が変わるのです。
数字で見てみましょう。定格出力11 kW の電動機を、滑り0.5(半分の速度)で運転したとすると——
二次入力の半分が熱。
出力と同じだけの熱が出ている。
出力と同量の熱です。これを回転子の中だけで処理するのは無理がある——二次励磁が発明された動機がここにあります。「捨てるな、返せ」という一言に、この分野の技術史が凝縮されています。
💡 覚え方
E=kΦN(磁束一定なら E∝N)/二次効率 η2=1−s(低速ほど損)/二次励磁は捨て電力を電源に返還——この3行で5空欄が埋まります。滑りを利用する制御は一次電圧と二次抵抗の2つだけで、VVVFと極数変換は同期速度を変える別系統。
⚠️ よくある間違い
(ウ)に「極数変換」を選ぶのが典型です。極数変換は同期速度を変える方式で、滑りを利用してはいません。もう一つは(イ)に「電機子電流」——誘導起電力は速度に比例するのであって、電流とは無関係です。

コメント