電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「巻線形誘導電動機と外部抵抗」は誘導機の物理を総合的に問う定番テーマです。本記事では、平成23年度 A問題3「二次電圧と電力配分の穴埋め問題」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
見た目は長文の穴埋めですが、使う知識は2つだけ。「二次電圧は滑りに比例(\( V_2 = sV_{2s} \))」と「黄金比 \( 1 : s : (1-s) \)」。誘導機を「回転する変圧器」として見る視点が身につく良問です。
平成23年度 機械科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題3
電験3種 機械科目 【誘導機】 平成23年度 A問題3(要約)
三相巻線形誘導電動機の二次側に外部抵抗を接続して運転する(外部抵抗は内部抵抗より十分大きく、鉄損・銅損・インダクタンスは無視)。回転子拘束時、一次電圧 V₁=200 V で二次端子電圧 V₂ₛ=140 V であった。始動後、同期速度 1 500 min⁻¹ に対し 1 200 min⁻¹ で負荷と釣り合った。
このとき二次端子電圧 V₂ は(ア)V となる。機械負荷への伝達電力を Pₘ、一次側供給電力を P₁、外部抵抗の消費電力を P₂c とすると、P₁=Pₘ+(イ)×P₂c、P₂c=(ウ)×P₁、したがって P₂c=(エ)×Pₘ となる。
(1) 112・0.8・0.8・0.25 (2) 28・1・0.2・4 (3) 28・1・0.2・0.25 (4) 112・0.8・0.8・4 (5) 112・1・0.2・0.25
出題のポイント:使う知識は2つだけ
長い問題文ですが、必要な知識は「回れば s 倍」と「黄金比」の2つです。先に滑りを出してしまえば、あとは代入するだけになります。

4つの空欄を確定する
すべての空欄がこの値から決まります。
拘束時140 V の s 倍。
損失は外部抵抗の消費だけ——エネルギー保存則そのまま。
滑りの割合が熱になる。
熱と仕事の比。


条件文が問題を単純にしている
問題文には、いくつもの「無視してよい」が並んでいます。それぞれが何を消しているのかを確認しておきましょう。
| 条件 | 何を消しているか | その結果 |
| 外部抵抗は内部抵抗より十分大きい | 二次巻線自身の抵抗 r2 | 二次銅損=外部抵抗の消費 P2c と見なせる |
| 鉄損を無視 | 励磁回路の g0 | 一次入力=二次入力(P1=P2) |
| 一次銅損を無視 | 一次抵抗 r1 | 同上 |
| インダクタンスを無視 | 漏れリアクタンス | 力率1として扱える |
これらのおかげで「一次入力=二次入力」と置けるのが決定的です。黄金比の「1」の枠に、そのまま P1 を入れられる——だから(ウ)が単純に s=0.2 になります。
実機ではこうはいきません。一次側で鉄損と一次銅損が引かれてから二次入力になるので、P2c/P1 は s より小さくなります。条件文は「理想化された誘導機」を作るための宣言だと読んでください。
外部抵抗が「二次銅損の役」を演じている
この問題の面白さは、二次銅損が機外の抵抗器で発生しているところにあります。本来は回転子の中で熱になるはずのものが、外に取り出されているのです。
| かご形(二次側が閉じている) | 本問(外部抵抗を接続) | |
| 二次銅損が出る場所 | 回転子の導体の中 | 機外の抵抗器 |
| 測れるか | 測れない(回転している) | 測れる(端子電圧と電流で) |
| 冷却 | 難しい | 容易 |
| 本問での扱い | — | P2c として直接扱える |
「外部抵抗の消費電力」という測れる量が、黄金比の s の枠にぴったり入る——これが巻線形の実験的な利点でもあります。かご形では中で何が起きているか測れませんが、巻線形なら二次側を外に引き出して観察できます。
問題文が「機械負荷への伝達電力 Pm」「外部抵抗の消費電力 P2c」と、測れる量だけで式を組ませているのも意図的でしょう。黄金比を「観測できる量の関係」として体験させる——そういう作りの問題です。
⏱️ 本番での進め方
① まず滑りを出す。4つの空欄すべてが s=0.2 から決まる。
② (イ)は1——エネルギー保存則。入力=出力+損失。
③ (ウ)は s、(エ)は s/(1−s)。分母が P1 か Pm かで変わる。
④ 検算は足し算:0.8+0.2=1 になるか確かめる。
拘束時の二次電圧140 V から読めること
問題文が最初に与えている「一次電圧200 V のとき二次端子電圧140 V」——これは回転子を押さえつけた状態で測った値です。この数字そのものに、機械の情報が含まれています。
回転子が止まっているとき、誘導機は変圧器そのものです。したがって一次と二次の電圧比は、そのまま巻線の巻数比を表しています。200 V に対して140 V ですから、二次側の巻数は一次側の0.7倍ということになります。
この電圧は、スリップリングの端子に実際に現れます。停止している巻線形誘導電動機のスリップリング間には、電源を入れた瞬間から140 V が出ている——始動抵抗器や配線は、この電圧に耐えるものでなければなりません。実務で巻線形を扱うときに、二次回路の絶縁が問われる理由がここにあります。
そして回り始めると、この電圧はみるみる下がっていきます。本問では滑り0.2 まで加速したので28 V。もし定格の滑り3 % まで加速すれば、わずか4.2 V です。始動の瞬間が最も高く、回るほど下がっていく——二次回路の設計は、いちばん厳しい「始動の瞬間」で決まります。
逆に言えば、二次電圧を測れば滑りが分かります。28 V なら滑り0.2、14 V なら滑り0.1——回転計がなくても、電圧計だけで回転速度が推定できるということです。巻線形が実験機として重宝された理由の一つでもあります。
滑り0.2 での運転は、実際にはどう使われるのか
本問の運転状態は、二次入力の20 % を熱にしながら回っている状態です。効率で言えば80 %——連続運転にはとても使えません。では何のための運転なのでしょうか。
典型的なのはクレーンや巻上機です。荷を吊り上げるとき、あるいは降ろすときに、ゆっくり動かしたい場面があります。その数十秒のあいだだけ、外部抵抗を入れて速度を落とす——短時間なら効率の悪さは問題になりません。
| 用途 | 抵抗を入れる時間 | 効率の悪さは | 理由 |
| 始動 | 数秒 | 問題にならない | すぐ短絡してしまう |
| クレーンの微速運転 | 数十秒 | 許容される | 位置決めのための一時的な運転 |
| 連続的な速度制御 | 常時 | 致命的 | 電気代も発熱も無視できない |
「短時間なら許される」というのが、二次抵抗制御の使いどころです。本問が「負荷と釣り合った」と書いているのは、その一時的な運転点を指しています。
もし連続運転するなら、捨てている20 % を回収したくなります。それが二次励磁(セルビウス方式)で、外部抵抗の代わりに電力変換器をつないで、滑り電力を電源へ返す——本問の P2c が熱ではなく電気として戻ってくると考えればよいでしょう。いまはインバータに置き換わりましたが、発想としては本問の延長線上にあります。
💡 覚え方
「回れば s 倍」で V2=sV2s、黄金比 1:(1−s):s で電力配分。損失を全部無視する条件があるので P1=P2 と置ける——だから(ウ)がそのまま s。外部抵抗の消費が二次銅損の役を演じているのが巻線形の特徴。
⚠️ よくある間違い
(ウ)と(エ)を取り違えるのが典型です。P1 を基準にするなら s、Pm を基準にするなら s/(1−s)——「何に対する比か」を毎回確認してください。もう一つは(ア)で140 V をそのまま答えること——拘束時の値であって、回転中は s 倍です。

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