今回は令和6年度上期 法規科目 A問題2、事故報告に該当しないものを選ぶ問題です。平成22年度 A問題3とほぼ同じ選択肢で、繰り返し出題されている定番です。
覚え方は「人・火・他人・系統」。人が死亡か入院、火災が半焼以上、他人の物件を壊した、系統(一般送配電事業者)に供給支障——このどれかがあれば報告。自分の負荷設備が壊れただけなら報告不要です。
令和6年度上期 法規科目 A問題2:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題2
電験3種 法規科目 【電気関係報告規則】 令和6年度上期 A問題2
「電気関係報告規則」に基づく、事故報告に関して、受電電圧6600Vの自家用電気工作物を設置する事業場における事故事例のうち、事故報告に該当しないものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 自家用電気工作物の破損事故に伴う構内1号柱の倒壊により、第三者の家屋に損傷を与えた。
(2) 保修作業員が、作業中誤って分電盤内の低圧200Vの端子に触れて感電負傷し、病院に入院した。
(3) 電圧100Vの屋内配線の漏電により火災が発生し、建屋が半焼した。
(4) 従業員が、操作を誤って高圧の誘導電動機を損壊させた。
(5) 落雷により高圧負荷開閉器が破損し、一般送配電事業者に供給支障を発生させたが、電気火災は発生せず、また、感電死傷者は出なかった。

答えは(4):誘導電動機は主要電気工作物ではない
この問題の鍵は「主要電気工作物とは何か」です——自分の設備が壊れて報告が要るのは、これに限られます。
| 肢 | 事例 | 該当する類型 |
| ★(1) | ★★1号柱倒壊で第三者の家屋に損傷 | ★★他の物件の損傷 |
| ★(2) | ★★感電負傷して病院に入院 | ★★死傷 |
| ★(3) | ★★漏電による火災で建屋が半焼 | ★★電気火災 |
| ★(4) | ★★誤操作で高圧の誘導電動機を損壊 | ★どれにも当たらない=答え |
| ★(5) | ★★落雷で開閉器破損・供給支障 | ★★供給支障 |
(4)だけが5類型のどれにも当たりません。
★主要電気工作物とは何か
| 設備 | 主要電気工作物か |
| ★発電設備(一定出力以上) | ★★該当する |
| ★変電所の主要機器(1万V以上) | ★★該当する |
| ★送電線路・配電線路 | ★★該当する |
| ★需要設備の誘導電動機 | ★該当しない |
| ★需要設備の一般機器 | ★該当しない |
主要電気工作物とは、電気の供給の根幹をなす設備です——壊れれば広い範囲に影響が及ぶものです。
需要家の負荷設備は、これに含まれません——壊れても自分が困るだけだからです。
★誘導電動機はなぜ違うのか
誘導電動機は、電気を使う側の機器です——ポンプやファンを回すためのものです。
壊れても、電気の流れそのものは止まりません——系統にも他人にも影響しないのです。
「高圧」という言葉に引きずられないことが大切です——電圧の高さと主要性は別の話です。
高圧の電動機は、大きな工場では普通に使われています——珍しい設備ではありません。
(1)は「第三者の家屋」に損傷
構内1号柱が倒れて、隣の家を壊したという事例です——他人の物件に損傷を与えています。
1号柱は構内にありますが、倒れれば構外に届きます——だから外への影響が生じるのです。
「他の物件」に他人の建物が含まれるのは明らかです——迷う余地はありません。
(3)の「半焼」という要件
| 火災の程度 | 報告 | 理由 |
| ★全焼 | ★★必要 | ★★半焼以上に当たる |
| ★半焼 | ★★必要 | ★★ちょうど要件を満たす |
| ★部分焼・ぼや | ★不要 | ★★半焼に至らない |
条文の要件は「半焼以上」です——本問はちょうど半焼なので該当します。
平成22年度の同型問題では「全焼」でした——どちらでも報告対象です。
(5)の但し書きはひっかけ
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 供給支障だけで報告 | ★★供給支障だけで報告 | ★火災・死傷がなければ不要 | ★★供給支障は独立した事由 |
| 主要電気工作物の破損 | ★★主要電気工作物の破損 | ★どの設備でも破損したら報告 | ★★主要かどうかで変わる |
| 他の物件の損傷 | ★★他の物件の損傷 | ★自分の設備の損傷 | ★★外への影響が要件 |
「電気火災は発生せず、感電死傷者は出なかった」という一文は、報告不要だと思わせるための仕掛けです。
しかし供給支障は、それだけで報告事由になります——他の被害の有無は関係ありません。
なぜ主要電気工作物だけなのか
需要家の設備が壊れるのは、日常的に起こることです——すべて報告させたら、件数が膨大になります。
行政が把握したいのは、社会に影響する事故です——だから範囲を絞っています。
「主要」という限定は、この絞り込みのためにあります。
平成22年度との違い
| 肢 | 平成22年度 | 令和6年度上期(本問) |
| ★(1) | ★★道路をふさぎ交通障害 | ★★第三者の家屋に損傷 |
| ★(2) | ★★3日間入院 | ★★病院に入院 |
| ★(3) | ★★建屋が全焼 | ★★建屋が半焼 |
| ★(5) | ★★電気事業者に供給支障 | ★★一般送配電事業者に供給支障 |
言葉が少しずつ違いますが、判定は同じです——答えはどちらも(4)でした。
「電気事業者」が「一般送配電事業者」に変わったのは、自由化後の用語に合わせたためです。
実務での判断
事故が起きたら、まず外への影響を確かめます——人・他人の物件・系統の3方向です。
どれもなければ、自分の設備の重要度を見ます——主要電気工作物かどうかです。
迷ったら報告する、という運用が一般的です——報告しなかったリスクのほうが大きいからです。
低圧の事故でも報告対象になる
(2)は低圧200Vの端子での感電です——それでも入院すれば報告対象になります。
(3)も電圧100Vの屋内配線が原因の火災です——低圧だから軽い、ということはありません。
判定は原因側の電圧ではなく、結果として何が起きたかで行います——ここを取り違えないようにしましょう。
1号柱という言葉
| 内容 | |
| ★1号柱 | ★★構内の引込点に立つ最初の電柱 |
| ★位置 | ★★敷地境界付近にあることが多い |
| ★倒れると | ★★構外の道路や隣家に届きうる |
構内にあっても、倒れれば外に影響します——だから(1)が報告対象になるのです。
設備の位置と被害の及ぶ範囲は別——この視点が判定の鍵になります。
⏱️ 本番での進め方
① 5類型のどれに当たるかを順に照合する。
② 「高圧」という語に引きずられない——電圧と主要性は別。
③ 誘導電動機は需要家の負荷設備——主要電気工作物ではない。
④ 供給支障の肢に付く但し書きはひっかけ。
この形式は今後も出る
平成22年度・令和6年度上期・令和7年度上期と、同じ形式が繰り返されています。
選択肢の言い回しは変わりますが、判定の考え方は同じです——5類型と「外への影響」で解けます。
過去問を1本解けば、他の年度も取れる——効率のよい論点です。
「一般送配電事業者」という呼び方
(5)では「一般送配電事業者に供給支障」と書かれています——自由化後の用語です。
平成22年度では「電気事業者」となっていました——2016年の制度改正で呼び名が変わったのです。
用語は変わっても、判定の中身は同じです。
出題履歴——3年で3回出た形式
| 年度 | 問われ方 |
| ★平成22年度 問3 | ★★該当しないものを選ぶ |
| ★令和6年度上期 問2 | ★★本問 |
| ★令和7年度上期 問2 | ★★同形式の別バージョン |
平成22年度 A問題3が本問の元になった問題です。選択肢の言い回しが少し違うだけです。
令和5年度上期 A問題2で事故の定義を押さえておくと、判定が確実になります。
💡 覚え方
報告すべき事故の5類型=①死傷(死亡又は入院)②電気火災(半焼以上)③他の物件への損傷 ④主要電気工作物の破損 ⑤一般送配電事業者等への供給支障。誘導電動機・変圧器などの一般の需要設備機器の損壊のみは対象外。
⚠️ よくある間違い
「高圧の機器が壊れた=報告」ではない。供給支障は火災・死傷がなくても報告が必要。低圧200Vでも入院すれば報告対象。
まとめ
| (1) | 報告対象(第三者の家屋に損傷) |
| (2) | 報告対象(感電し入院) |
| (3) | 報告対象(半焼) |
| (4) | 該当しない(誘導電動機の損壊のみ) |
| (5) | 報告対象(供給支障) |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
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