今回は令和5年度下期 法規科目 B問題11、中性点非接地方式の1線地絡電流の式と、零相変流器(ZCT)で検出される電流を求める問題です。平成23年度 B問13(電気施設管理-計算…kn16)と同系統の地絡電流の定番です。
押さえる式はIg=3ωCE=2√3πfV(C₁+C₂)。そして構外事故(もらい事故)では、ZCTが検出するのは需要設備側の対地静電容量C₂に流れる分=Ig×C₂/(C₁+C₂)=2√3πfV·C₂です。
令和5年度下期 法規科目 B問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」法規科目 B問題11
電験3種 法規科目 【電気施設管理】 令和5年度下期 B問題11
図は、線間電圧V[V]、周波数f[Hz]の中性点非接地方式の三相3線式高圧配電線路及びある需要設備の高圧地絡保護システムを簡易に示した単線図である。
(問題文と図は上の画像を参照してください。C₁=配電線路一相の全対地静電容量、C₂=需要設備一相の全対地静電容量。(b)はV=6600V、f=60Hz、C₁=2.3μF、C₂=0.02μF。)
図は、線間電圧V[V]、周波数f[Hz]の中性点非接地方式の三相3線式高圧配電線路及びある需要設備の高圧地絡保護システムを簡易に示した単線図である。高圧配電線路一相の全対地静電容量をC₁[F]、需要設備一相の全対地静電容量をC₂[F]とするとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、図示されていない負荷、線路定数及び配電用変電所の制限抵抗は無視するものとする。
(a) 図の配電線路において、遮断器が「入」の状態で地絡事故点に一線完全地絡事故が発生し地絡電流Ig[A]が流れた。このときIgの大きさを表す式として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、間欠アークによる影響等は無視するものとし、この地絡事故によって遮断器は遮断しないものとする。
(1) (2/√3)Vπf√(C₁²+C₂²) (2) 2√3Vπf√(C₁²+C₂²) (3) (2/√3)Vπf(C₁+C₂) (4) 2√3Vπf(C₁+C₂) (5) 2√3Vπf√(C₁C₂)
(b) 小問(a)の地絡電流Igは高圧配電線路側と需要設備側に分流し、需要設備側に分流した電流は零相変流器を通過して検出される。上記のような需要設備構外の事故に対しても、零相変流器が検出する電流の大きさによっては地絡継電器が不必要に動作する場合があるので注意しなければならない。地絡電流IgがC₁とC₂の比によって分流するものとしたとき、Igのうち需要設備の零相変流器で検出される電流の値[mA]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、V=6600V、f=60Hz、C₁=2.3μF、C₂=0.02μFとする。
(1)54 (2)86 (3)124 (4)152 (5)256 mA



答えは(a)(4)・(b)86mA
平成28年度 B問題13が同一問題です。そちらは式の変形を扱っています。
この記事は、GRとDGRの選択基準を数値で示します。
★(a)式の形を確認する
E=V/√3
(a)の答え
静電容量は並列なので単純に足します——√(C₁²+C₂²)は誤り。
係数は2√3——2/√3ではない。
★★(b)ZCTが検出する電流
C₂だけで決まる
(b)の答え
C₁=2.3μFは使いません——約分で消えるから。
系統がどれだけ大きくても、自分のC₂だけで決まる——すっきりした結果です。
★★GRとDGRの選択基準を数値で
| 構内のC₂ | ZCT検出電流 | GR整定0.2Aとの関係 | 選ぶべき機器 |
| ★0.02μF(本問) | ★★86mA | ★★下回る | ★★GRでも可 |
| ★0.05μF | ★★215mA | ★★★超える | ★★DGRが必要 |
| ★0.1μF | ★★431mA | ★★大きく超える | ★★DGRが必須 |
C₂が0.05μF程度でGRの整定値を超えます——これが選択の目安。
高圧ケーブル(CVT)は1kmあたり0.2〜0.5μF程度——100mでも0.02〜0.05μF。
構内ケーブルが数百mあれば、DGRが必要になります。
★もらい事故とは
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 構内事故 | ★★構内事故 | ★構外事故(もらい事故) | ★★自分の設備の地絡/他人の設備や配電線の地絡 |
| 動作すべき | ★★動作すべき | ★動作すべきでない | ★★無方向性GRは区別できない |
構外で地絡が起きても、自分の構内の対地静電容量を通って電流が流れます——それをZCTが検出。
無方向性GRはこれを地絡と誤認して開放してしまう——不必要な停電です。
自分に事故がないのに停電する——だから「もらい事故」と呼ばれます。
★DGRが方向を判別する仕組み
| 構内事故 | 構外事故 | |
| ★零相電流の向き | ★★構内→系統 | ★★系統→構内 |
| ★零相電圧との位相 | ★★ある関係 | ★★逆の関係 |
| ★DGRの動作 | ★★動作する | ★★動作しない |
電流の大きさだけでは方向がわかりません——零相電圧が必要。
だからDGRにはZPD(コンデンサ形計器用変圧器)が付きます。
現在の新設はDGR付PASが標準です。
★整定値の考え方
| 項目 | 一般的な整定値 | 理由 |
| ★地絡電流 | ★★0.2A | ★★構内の充電電流より大きく、事故電流より小さく |
| ★動作時限 | ★★0.2秒 | ★★配電用変電所より速く |
感度を上げすぎると誤動作、下げすぎると検出できません——バランス。
本問の86mAは0.2Aの半分以下——余裕があるのです。
この計算が整定の根拠になります。
周波数の影響
小さくなる
周波数が高いほど充電電流が大きくなります——ωCだから。
60Hz地域のほうがもらい事故のリスクが高い——2割ほど大きいのです。
本問は60Hz——問題文で確認します。
ケーブルの対地静電容量の目安
| ケーブル | 1kmあたりの対地静電容量 |
| ★6.6kV CVT 38mm² | ★★約0.2μF/km |
| ★6.6kV CVT 100mm² | ★★約0.45μF/km |
| ★架空電線 | ★★ケーブルの数十分の1 |
本問のC₂=0.02μFは、CVT 38mm²なら約100m分です——短い引込。
工場のように構内配線が長ければ、0.1μFを超えることもあります——DGRが必須。
ケーブル亘長からC₂を見積もれる——実務的な判断です。
地絡保護の全体像
| 段階 | 装置 | 役割 |
| ★検出 | ★★ZCT(+ZPD) | ★★零相電流(と零相電圧)を取り出す |
| ★判定 | ★★GR/DGR | ★★整定値と比較し、方向も判別する |
| ★遮断 | ★★PAS/UGS | ★★地絡電流は小さいので開閉器でも切れる |
3つの機器が連携して地絡保護が成立します。
本問の計算は「判定」の整定を決める根拠になります。
⏱️ 本番での進め方
① I_g=2√3πfV(C₁+C₂)——静電容量は並列なので足す。
② ZCTの検出電流は2√3πfV·C₂——C₁は消える。
③ C₂が0.05μF程度でGRの整定値0.2Aを超える。
④ 超えるならDGRが必要——方向判別で誤動作を防ぐ。
💡 覚え方
もらい事故の定量化=構外地絡時にZCTが検出する電流はI=2√3πfV·C₂(自分の構内の対地静電容量だけで決まり、配電線側のC₁は無関係)。これがGRの整定値(一般に0.2A)を超えると不必要動作するため、構内ケーブルが長い(C₂が大きい)場合はDGRを使う。
⚠️ よくある間違い
ZCTの検出電流にC₁は関係しない——約分で消える。静電容量を√(C₁²+C₂²)としない——並列なので単純に足す。
まとめ
| (a)式 | Ig=3ωCE=2√3πfV(C₁+C₂) →(4) |
| (b)検出 | Ig×C₂/(C₁+C₂)=2√3πfV·C₂ |
| 代入 | 2√3×π×60×6600×0.02e-6 |
| (b)値 | ≒0.0862A=86mA →(2) |
| もらい事故対策 | 地絡方向継電器(DGR) |
| 答え | (a)-(4),(b)-(2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・1線地絡電流と地絡保護協調(電気施設管理16):【法規】平成23年度 B問題13
・地絡保護協調(電気施設管理20):【法規】平成18年度 A問題9

コメント