今回は平成29年度 法規科目 A問題3、公害等の防止の空欄補充問題です。電技第19条は項が多く、ばい煙・絶縁油・土砂災害・PCBと守備範囲が広いのが特徴です。
4つの論点を1問で確認します。①火力設備の公害規定を変電所等に準用 ②中性点直接接地式電路の変圧器は絶縁油の流出・浸透を防止 ③急傾斜地の崩壊を助長・誘発しない ④PCB含有絶縁油の機器・電線は施設禁止。
平成29年度 法規科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題3
電験3種 法規科目 【電技省令】 平成29年度 A問題3
次の文章は、「電気設備技術基準」における公害等の防止に関する記述の一部である。
a 発電用(ア)設備に関する技術基準を定める省令の公害の防止についての規定は、変電所、開閉所若しくはこれらに準ずる場所に設置する電気設備又は電力保安通信設備に附属する電気設備について準用する。
b 中性点(イ)接地式電路に接続する変圧器を設置する箇所には、絶縁油の構外への流出及び地下への浸透を防止するための措置が施されていなければならない。
c 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律の規定により指定された急傾斜地崩壊危険区域内に施設する発電所又は変電所、開閉所若しくはこれらに準ずる場所の電気設備、電線路又は電力保安通信設備は、当該区域内の急傾斜地の崩壊(ウ)するおそれがないように施設しなければならない。
d ポリ塩化ビフェニルを含有する(エ)を使用する電気機械器具及び電線は、電路に施設してはならない。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 電気 直接 による損傷が発生 冷却材 (2) 火力 抵抗 を助長し又は誘発 絶縁油 (3) 電気 直接 を助長し又は誘発 冷却材 (4) 電気 抵抗 による損傷が発生 絶縁油 (5) 火力 直接 を助長し又は誘発 絶縁油

答えは(5):火力・直接・を助長し又は誘発・絶縁油
(ア)は「火力」——公害の規定は発電用火力設備の省令に詳しく置かれています。
(イ)は「直接」・(ウ)は「を助長し又は誘発」・(エ)は「絶縁油」です。
★4つの論点を1問で
| 項 | テーマ | 守るもの |
| ★a | ★★ばい煙・排水・騒音 | ★★大気・水・生活環境 |
| ★b | ★★絶縁油の流出防止 | ★★土壌・水質 |
| ★c | ★★急傾斜地の崩壊防止 | ★★人命・住宅 |
| ★d | ★★PCBの施設禁止 | ★★人の健康 |
いずれも電気事業法第1条の「環境の保全」から派生した規定です——目的規定を起点に整理できます。
電気の安全だけでなく、環境も守る——それがこの法体系の守備範囲です。
★なぜ火力設備の省令を準用するのか
ばい煙・排水・騒音の規定は、発電用火力設備の省令に詳しくあります——火力発電所が最も公害を出しやすいからです。
変電所や開閉所にも、非常用発電機などがあります——同じ規定を当てはめれば足りるのです。
だから「準用する」という形になっています——同じ内容を2度書かないという法令の作法です。
「発電用電気設備」という省令名は存在しません。
★急傾斜地の規定
| 内容 | |
| ★対象区域 | ★★急傾斜地崩壊危険区域(法律で指定される) |
| ★求められること | ★★崩壊を助長し又は誘発しない |
| ★対象設備 | ★★発電所・変電所等の電気設備、電線路、電力保安通信設備 |
設備自身が壊れないことではなく、周囲の地盤災害を引き起こさないことが主眼です。
電柱を立てるために斜面を削れば、崩壊のきっかけになります——それを防ぐ規定です。
「損傷が発生する」ではなく「を助長し又は誘発する」——主語が設備ではなく崩壊のほうだと気づけば選べます。
中性点直接接地式である理由
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 火力 | ★★火力 | ★電気 | ★★公害の規定は火力設備の省令にある |
| 直接 | ★★直接 | ★抵抗 | ★★直接接地は地絡電流が大きい |
| 絶縁油 | ★★絶縁油 | ★冷却材 | ★★変圧器に入っているのは絶縁油 |
直接接地すると、地絡時に大電流が流れます——変圧器が破損して絶縁油が噴出する危険が高いのです。
抵抗接地では地絡電流が抑えられるので、この規定の対象外です。
接地方式と危険の大きさが結びついている——理由から考えれば覚えられます。
PCBの施設禁止
PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含有する絶縁油を使用する電気機械器具及び電線は、電路に施設してはなりません。
「冷却材」ではなく絶縁油です——変圧器やコンデンサに入っているのは絶縁油だからです。
一度取り外したものを流用・転用して再施設することもできません——平成24年度A問題3で問われた論点です。
環境系の条文をまとめる
| 条文 | 内容 |
| ★電気事業法1条 | ★★目的に「環境の保全」 |
| ★電気事業法28条 | ★★公害の防止 |
| ★電技19条 | ★★公害等の防止(ばい煙・絶縁油・急傾斜地・PCB) |
| ★報告規則4条 | ★★絶縁油の排出・浸透の届出 |
目的規定から個別条文、そして報告義務まで一本の線でつながります。
環境系は出題頻度こそ高くありませんが、覚える量も少ない——まとめて押さえておきましょう。
ばい煙とは何か
| 物質 | 問題 |
| ★硫黄酸化物(SOx) | ★★酸性雨・呼吸器への影響 |
| ★窒素酸化物(NOx) | ★★光化学スモッグ・酸性雨 |
| ★ばいじん | ★★大気の汚れ・健康被害 |
火力発電所では、これらを除去する設備が付けられます——脱硫装置・脱硝装置・電気集じん器です。
電気集じん器は、無線設備への障害の条文にも出てきました——条文どうしが思わぬところでつながります。
非常用発電機も対象になる
変電所や開閉所にも、非常用のディーゼル発電機があります——運転すればばい煙が出ます。
だから火力設備の公害規定を準用しています——規模は小さくても、性質は同じだからです。
「準用」という法令用語の使い方を知る好例でもあります。
騒音・振動も公害
変圧器はうなり音を出します——鉄心が磁歪で振動するからです。
住宅地の変電所では、防音壁で対策します——周波数の2倍の音(100Hz・120Hz)が主成分です。
ばい煙だけでなく、音も公害として扱われます。
急傾斜地の指定
急傾斜地崩壊危険区域は、法律にもとづいて都道府県が指定します——傾斜度30度以上・高さ5m以上などが目安です。
指定された区域では、掘削や樹木の伐採が制限されます——電気設備の施設も、その一環として規制されます。
環境系の条文は、電気事業法1条の「環境の保全」から枝分かれしています——目的規定を起点に整理すると覚えやすくなります。
⏱️ 本番での進め方
① (ア)は「火力」——公害の規定は火力設備の省令にある。
② (イ)は「直接」接地——地絡電流が大きい方式。
③ (ウ)は「を助長し又は誘発」——主語は崩壊のほう。
④ (エ)は「絶縁油」。冷却材はダミー。
出題履歴——環境系の総合問題
| 年度 | 問われ方 |
| ★平成20年度 問8 | ★★PCB電気工作物の報告 |
| ★平成21年度 問4 | ★★絶縁油の流出防止と届出 |
| ★平成29年度 問3 | ★★公害等の防止(本問) |
平成21年度 A問題4は、本問のb)を掘り下げた内容です。絶縁油が漏れたときの届出まで扱っています。
平成24年度 A問題3はPCBの再施設が問われました。環境系4本セットとして押さえましょう。
💡 覚え方
電技19条=①発電用火力設備の省令の公害規定を変電所等に準用 ②中性点直接接地式電路の変圧器は絶縁油の流出・浸透を防止 ③急傾斜地の崩壊を助長し又は誘発しない ④PCB含有絶縁油の機器・電線は電路に施設禁止。
⚠️ よくある間違い
「発電用電気設備」という省令名はない——火力。「抵抗接地」ではなく直接接地。「冷却材」ではなく絶縁油。
まとめ
| (ア) | 火力(発電用火力設備の省令) |
| (イ) | 直接(中性点直接接地式電路) |
| (ウ) | を助長し又は誘発 |
| (エ) | 絶縁油(PCB含有) |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・公害防止等に関する届出(電気関係報告規則8):【法規】平成21年度 A問題4
・公害等の防止(電気事業法28):【法規】平成24年度 A問題3

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