今回は平成22年度 法規科目 A問題2、「自家用電気工作物」という同じ言葉が電気事業法と電気工事士法で意味が違うという、混乱しやすい論点を扱う問題です。
電気工事士法の自家用は電気事業法の自家用から「大きいもの・専門性の高いもの」を差し引いた残り。差し引くのは発電所・変電所・最大電力500kW以上の需要設備・送電線路・保安通信設備。だから電気工事士の出番は500kW未満の需要設備が中心になるのです。
答えは(1):最大電力500kW以上・送電線路・保安通信設備
電気工事士法の自家用は、電気事業法の自家用からの引き算です——大きいもの・専門性の高いものを差し引いた残りです。
だから第一種電気工事士の範囲が「500kW未満」になります——この定義から自動的に決まるのです。
「契約電力」ではなく「最大電力」である点にも注意しましょう。
平成22年度 法規科目 A問題2:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題2
電験3種 法規科目 【電気工事士法】 平成22年度 A問題2
自家用電気工作物について、「電気事業法」と「電気工事士法」において、定義が異なっている。
電気工事士法に基づく「自家用電気工作物」とは、電気事業法に規定する自家用電気工作物から、発電所、変電所、(ア)の需要設備、(イ)〔発電所相互間、変電所相互間又は発電所と変電所との間の電線路(専ら通信の用に供するものを除く。)及びこれに附属する開閉所その他の電気工作物をいう。〕及び(ウ)を除いたものをいう。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (1) 最大電力500kW以上 送電線路 保安通信設備 (2) 最大電力500kW未満 配電線路 保安通信設備 (3) 最大電力2 000kW以上 送電線路 小出力発電設備 (4) 契約電力500kW以上 配電線路 非常用予備発電設備 (5) 契約電力2 000kW以上 送電線路 非常用予備発電設備

★引き算されるもの5つ
| 除かれるもの | なぜ除くのか |
| ★発電所 | ★★主任技術者の監督が行き届く前提 |
| ★変電所 | ★★同上 |
| ★最大電力500kW以上の需要設備 | ★★規模が大きく専門的な体制がある |
| ★送電線路 | ★★特殊な技術と体制が必要 |
| ★保安通信設備 | ★★通信設備で技能の性質が違う |
いずれも「電気工事士の資格制度になじまないもの」です——別の仕組みで保安が担保されているのです。
残るのは、町のビルや工場の受電設備が中心になります——電気工事士の主戦場です。
★2つの法律で言葉の意味が違う
| 電気事業法の自家用 | 電気工事士法の自家用 | |
| ★範囲 | ★★電気事業用でも一般用でもないもの全部 | ★★そこから5つを引いた残り |
| ★500kW以上の需要設備 | ★★含む | ★含まない |
| ★目的 | ★★設備の保安規制 | ★★工事の資格規制 |
同じ言葉でも、法律が違えば意味が違うことがあります——法規で混乱しやすい典型例です。
どちらの法律の話かを、常に意識して読みましょう。
なぜ500kW以上を除くのか
最大電力500kW以上の需要設備には、常勤の主任技術者が置かれるのが普通です。
その監督のもとで工事が行われるので、作業者の資格まで法律で縛る必要が薄いのです。
逆に500kW未満では、外部委託などで日常的な監督が薄くなります——だから作業者の資格で担保するという設計です。
「最大電力」と「契約電力」
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 最大電力 | ★★最大電力 | ★契約電力 | ★★実際に使った最大の電力 |
| 500kW以上を除く | ★★500kW以上を除く | ★500kW未満を除く | ★★残るのが500kW未満 |
| 送電線路 | ★★送電線路 | ★配電線路 | ★★発電所・変電所どうしを結ぶ線路 |
契約電力は電力会社との約束の数字、最大電力は実績の数字です——条文が使っているのは最大電力です。
「500kW未満を除く」と読み違えると、意味が正反対になります——残るのはどちらかを確かめましょう。
問題文に定義が書いてある
(イ)の括弧内には「発電所相互間、変電所相互間又は発電所と変電所との間の電線路…」と書かれています。
これは電気事業法施行規則の送電線路の定義そのものです——問題文が答えを教えてくれているのです。
配電線路なら「需要設備との間」と書かれるはずです——定義文を読めば区別できます。
保安通信設備とは
送電線や変電所の運転情報、保護リレーの信号を送る通信設備です——電力設備に附属していますが、性格は通信です。
扱う技能が電気工事とは違うので、資格制度の対象から外されています。
電気事業法では電気工作物ですが、電気工事士法では外れる——これも2つの法律の違いの表れです。
第一種電気工事士の範囲との関係
| 内容 | |
| ★定義 | ★★電気工事士法の自家用=電気事業法の自家用−5つ |
| ★帰結 | ★★第一種は最大電力500kW未満の自家用まで |
| ★覚え方 | ★★範囲は定義から自動的に決まる |
「第一種は500kW未満」を丸暗記するより、定義から導けるようにしておくほうが確実です。
本問は、その導き方そのものを問うています。
実務ではどう効いてくるか
500kW以上の工場では、電気工事士でなくても工事ができます——主任技術者の監督下で行われるからです。
ただし実際には、有資格者が施工するのが一般的です——法律が求めていなくても、品質のためにです。
法律の下限と、現場の慣行は別だと知っておきましょう。
500kW以上の設備は誰が工事するのか
電気工事士法の対象外なので、資格の縛りはありません——ただし無秩序というわけではありません。
電気主任技術者の監督のもとで、施工の計画と検査が行われます——電気事業法の側で保安が担保されているのです。
規制の空白ではなく、担い手が変わるだけ——2つの法律で役割を分担していると理解しましょう。
⏱️ 本番での進め方
① (ア)は「最大電力500kW以上」——契約電力ではない。
② (イ)は括弧内の定義を読む——送電線路そのものが書いてある。
③ (ウ)は保安通信設備。通信は技能の性質が違うので除かれる。
④ 第一種が500kW未満なのは、この定義から来ている。
用語が法律ごとに違う例
| 用語 | 法律による違い |
| ★自家用電気工作物 | ★★電気事業法と電気工事士法で範囲が違う |
| ★需要設備/電気使用場所 | ★★施行規則と電技で使い分けられる |
| ★調査/検査 | ★★一般用は調査、事業用は検査 |
似た言葉でも、法律が違えば意味が変わります——どの法律の問題かを最初に確かめる癖をつけましょう。
本問はその代表例です。
定義を問う問題は地味ですが、他の問題を解く土台になります——ここを飛ばさないことが大切です。
出題履歴——2つの法律の違いは狙われる
| 年度 | 問われ方 |
| ★平成22年度 問2 | ★★電気工事士法の自家用の定義(本問) |
| ★平成27年度 問1 | ★★電気事業法の自家用の5類型 |
| ★令和6年度下期 問2 | ★★資格と作業範囲 |
平成27年度 A問題1は電気事業法の自家用を扱っています。2本を並べると、同じ言葉の意味の違いがはっきりします。
法規では、法律ごとの用語の違いがよく問われます——どの法律の話かを見失わないことです。
💡 覚え方
電気工事士法の自家用=電気事業法の自家用から①発電所 ②変電所 ③最大電力500kW以上の需要設備 ④送電線路 ⑤保安通信設備を除いたもの。だから第一種電気工事士の範囲は最大電力500kW未満の自家用。
⚠️ よくある間違い
「契約電力」ではなく最大電力。「500kW未満」を除くのではなく500kW以上を除く(残るのが500kW未満)。除かれるのは配電線路ではなく送電線路。
まとめ
| (ア) | 最大電力500kW以上(の需要設備) |
| (イ) | 送電線路 |
| (ウ) | 保安通信設備 |
| 他に除くもの | 発電所・変電所 |
| 帰結 | 第一種電気工事士は500kW未満の自家用 |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・資格と作業範囲(電気工事士法1):【法規】令和6年度下期 A問題2
・自家用電気工作物の該当(電気事業法21):【法規】平成27年度 A問題1

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