今回は平成18年度 法規科目 B問題11、架空線と地中線が混在する高圧配電線路の1線地絡電流を求める問題です。技術基準の計算のなかでも最も間違えやすい一問です。
最大の落とし穴は「電線延長」と「線路延長」の違い。架空は電線延長=こう長×3線×回線数、地中は線路延長=こう長×回線数。ここを取り違えると答えが大きくずれます。
平成18年度 法規科目 B問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 B問題11
電験3種 法規科目 【技術基準の計算】 平成18年度 B問題11
6.6kVの中性点非接地式高圧配電線路に、総容量750kV·Aの変圧器(二次側が低圧)が接続されている。この配電線路は、架空配電線路が15km(2回線)及び10km(3回線)、地中配電線路が4.5km(2回線)で、いずれも三相3線式である。変電所引出口には1秒以内に自動的に高圧電路を遮断する装置が設けられている。次の(a)及び(b)に答えよ。
なお、1線地絡電流 I₁[A]は解釈第17条の式によって求めるものとする(V:公称電圧を1.1で除した電圧[kV]、L:架空配電線路の電線延長[km]、L′:地中配電線路の線路延長[km])。
(注)平成18年度は公式問題PDFが公表されていないため、条文と過去問データに基づいて問題文を再構成しています。
なお、1線地絡電流 I₁[A]は次式によって求めるものとする。I₁ = 1 + ( (V/3)×L − 100 ) / 150 + ( (V/3)×L′ − 1 ) / 2 (V:公称電圧を1.1で除した電圧[kV]、L:架空配電線路の電線延長[km]、L′:地中配電線路の線路延長[km])
(a) この配電線路の1線地絡電流[A]の値として、最も近いのは次のうちどれか。
(1)10 (2)12 (3)13 (4)21 (5)30 A
(b) 変圧器の低圧側に施すB種接地工事の接地抵抗値[Ω]の上限として、最も近いのは次のうちどれか。
(1)12.5 (2)25 (3)40 (4)50 (5)75 Ω

答えは(a)12A・(b)50Ω
この非対称性が本問最大の急所です——架空は3倍、地中は3倍しない。
★★「電線延長」と「線路延長」の違い
| 用語 | 意味 | 三相3線式での計算 |
| ★電線延長(架空) | ★★電線そのものの総延長 | ★★こう長×3線×回線数 |
| ★線路延長(地中) | ★★線路(ルート)の長さ | ★★こう長×回線数(3倍しない) |
架空線は3本の電線が別々に張られています——だから電線の長さを数えると3倍になります。
地中線はケーブル1条に3心が収まっています——ルートの長さで数えるほうが自然です。
この違いが式のLとL′の名前に表れている——用語を読めば計算方法がわかります。
★STEP1:LとL′を計算する
15km2回線と10km3回線
★3倍しない
単位はkV
架空は2つの区間があるので、それぞれ計算して足します——15×2×3=90、10×3×3=90。
地中を3倍してしまうと27kmになり、答えが大きくずれます——用語を確認する習慣が要るのです。
★STEP2:1線地絡電流を求める
(a)の答え
3つの項を足して、最後に切り上げます——11.23→12A。
地中の項の分母が2と小さい——地中は静電容量が大きく、地絡電流への寄与が大きいのです。
9kmの地中線が、180kmの架空線より大きく効いている——ケーブルの静電容量の大きさです。
★STEP3:B種接地抵抗値
(b)の答え
問題文の「1秒以内に自動的に高圧電路を遮断する装置」——だから600/I₁です。
変圧器の総容量750kV·Aは使いません——撹乱情報です。
★なぜ地中の項の分母が小さいのか
非接地式では静電容量が地絡電流を決める
導体と遮へい層が近接しているから
ケーブルは1kmあたり0.2〜0.5μF——架空線はその数十分の1です。
だから同じ長さなら、地中のほうがずっと大きな地絡電流を生む——式の分母150と2の差がそれを表しています。
係数の大小にも物理的な意味があるのです。
回線数の扱い
| 条件 | 電線延長 |
| ★こう長15km・2回線・三相3線式 | ★★15×2×3=90km |
| ★こう長10km・3回線・三相3線式 | ★★10×3×3=90km |
| ★合計 | ★★180km |
回線数と線数を両方掛けます——2回線なら電線は6本です。
「同一母線に接続される」線路をすべて足す——1つの変電所から出る配電線全体です。
なぜ同一母線の全線路を数えるのか
地絡電流は、健全な線路の対地静電容量を通って流れます——事故点だけの問題ではないのです。
同じ母線につながる線路が長いほど、静電容量の合計が大きくなります——地絡電流も増えるのです。
だから「同一母線に接続される」すべてを数える——式の前提です。
計算の手順をまとめる
| 手順 | やること | 落とし穴 |
| ★① | ★★V=公称電圧÷1.1[kV] | ★★単位はkV |
| ★② | ★★架空の電線延長L=こう長×回線×3 | ★★3倍を忘れない |
| ★③ | ★★地中の線路延長L′=こう長×回線 | ★★★3倍しない |
| ★④ | ★★式に代入して合計、切り上げ | ★★2未満なら2 |
| ★⑤ | ★★遮断時間で150/300/600を選ぶ | ★★問題文を読む |
②と③の非対称性が、この問題の核心です——用語で見分けます。
非接地式配電線の地絡電流
3相分の対地容量を通って流れる
だから式にLとL′が入る
非接地式では、地絡電流は対地静電容量を通って流れます——線路が長いほど大きくなるのです。
解釈17条の算出式は、この物理をもとにした経験式です。
B種接地の目的
150V以下に抑えるのが原則
遮断時間で300/600に緩和される
I₁が大きいほど、許される接地抵抗は小さくなります——本問はI₁=12Aなので600/12=50Ω。
都市部の長い配電線ではI₁が大きく、施工が難しくなります。
⏱️ 本番での進め方
① 架空は「電線延長」=こう長×回線数×3。
② 地中は「線路延長」=こう長×回線数(3倍しない)。
③ Vの単位はkV——公称電圧÷1.1。
④ 地中の項の分母が小さいのはケーブルの静電容量が大きいから。
💡 覚え方
1線地絡電流の式=I₁=1+(V/3×L−100)/150+(V/3×L′−1)/2。★Lは架空配電線路の「電線延長」(こう長×回線数×3線)、L′は地中配電線路の「線路延長」(こう長×回線数、3倍しない)。算出結果は切り上げ、2未満なら2。
⚠️ よくある間違い
地中を3倍しない——「線路延長」だから。架空は3倍する——「電線延長」だから。変圧器の総容量は撹乱情報。
まとめ
| V | 6.6/1.1=6 kV |
| L(架空・電線延長) | 15×2×3+10×3×3=180 km |
| L′(地中・線路延長) | 4.5×2=9 km |
| (a)I₁ | 1+260/150+17/2=11.23→切り上げ12 A →(2) |
| 遮断時間 | 1秒以内 → 600/I₁ |
| (b)答え | 600/12=50 Ω →(4) |
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