今回は令和7年度下期 電力科目 A問題13、進相コンデンサで力率を改善し、変圧器容量の範囲内で増設できる負荷を求める計算問題です。改善後の力率と変圧器の定格容量から、増設負荷の皮相電力を逆算します。
ポイントは力率改善後は変圧器容量が皮相電力の上限になること。力率を0.8に改善すると、変圧器200kV·Aが運べる有効電力は200×0.8=160kW。ここから元の120kWを引いた40kWが増設できる有効電力で、増設負荷の力率0.6から皮相電力を求めます。
答えは(3):約 66.7 kV・A
力率改善後は、変圧器の容量が皮相電力の上限になります。
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★答え
| 既設負荷 | 増設負荷 | 合計 | |
| ★有効電力 | ★★120 kW | ★★40 kW | ★★160 kW |
| ★力率 | ★★0.6 | ★★0.6 | ★★0.8(コンデンサで改善後) |
| ★皮相電力 | ★★200 kV・A | ★★66.7 kV・A | ★★200 kV・A(上限) |
増設負荷の力率は0.6であって、0.8ではありません——0.8は改善後の全体の力率です。
だから40÷0.6であって、40÷0.8ではない——そこが最大の落とし穴です。
令和7年度下期 電力科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題13
電験3種 電力科目 【配電の計算】 令和7年度下期 A問題13
定格容量200kV·Aの変圧器に、出力Pが120kW、遅れ力率cosθが0.6の負荷が接続されている。変圧器の定格容量の範囲内で、この負荷と並列に遅れ力率cosθが0.6の負荷を増設すると共に、進相コンデンサを接続して遅れ力率cosθを0.8に改善したい。増設できる負荷(力率cosθが0.6)の皮相電力S'[kV·A]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 93.3 (2) 120 (3) 66.7 (4) 160 (5) 40
出題のポイント:改善後の有効電力上限から逆算する

力率改善後も変圧器の皮相電力上限は200 kV・Aです。力率0.8なら総有効電力は160 kW、既設120 kWとの差40 kWが増設負荷の有効電力です。問われる皮相電力は力率0.6で割って66.7 kV・Aとなります。
解法の原理:変圧器容量と力率から増設余力を求める

| コンデンサが変えるもの | 変えないもの | |
| ★有効電力 P | ★★変えない | ★★負荷が決める |
| ★無効電力 Q | ★★減らす | ★— |
| ★皮相電力 S | ★★減らす(Qが減るから) | ★— |
| ★力率 | ★★上げる | ★— |
コンデンサは無効電力を打ち消すだけです——有効電力は作れないのです。
けれども皮相電力が減るので、変圧器に余裕が生まれます——その余裕に負荷を増設できるのです。
これが力率改善で「送電容量が増える」という意味です——設備を増やさずに使えるのです。
本問はその効果を具体的な数字で問うています。
改善しなかったらどうなるか
| 力率0.6のまま | 力率0.8に改善 | |
| ★運べる有効電力 | ★★200×0.6=120 kW | ★★200×0.8=160 kW |
| ★増設できる有効電力 | ★★0 kW(すでに満杯) | ★★40 kW |
| ★増設できる皮相電力 | ★★0 | ★★66.7 kV・A |
力率0.6のままでは、すでに変圧器が満杯です——120÷0.6=200 kV・Aだから。
コンデンサを入れることで、40 kW 分の余裕が生まれます——変圧器を替えずに済むのです。
これが力率改善の経済的な値打ちです——設備投資を先送りできるのです。
実務でもよく行われる検討そのものです。
⚠️ よくある間違い
増設負荷の皮相を40÷0.8とする——増設負荷の力率は0.6です。
変圧器の上限を160 kV・A と考える——200 kV・A が皮相の上限です。
コンデンサで有効電力が増えると考える——増えません。
増設有効電力40 kW をそのまま答える——皮相電力を問われています。
既設と増設で力率が違うと考える——どちらも0.6です。
⏱️ 本番での進め方
①★改善後の許容有効電力=変圧器容量×改善後の力率。
②★増設有効電力=許容−既設。
③★増設皮相電力=増設有効÷その負荷の力率。
④★コンデンサは有効電力を増やさない。
💡 覚え方
「容量×改善後力率が有効電力の上限」——200×0.8=160 kWです。割るのは増設負荷自身の力率——0.6であって0.8ではないのです。
力率改善の基本計算は平成21年度 B問題17(配電の計算:力率改善)にあります。
変圧器の容量は皮相電力で決まる
| 変圧器が制限するもの | 理由 | |
| ★★皮相電力 S | ★★これが定格容量 | ★★巻線に流れる電流で決まる |
| ★有効電力 P | ★★力率次第で変わる | ★★P=S cosθ |
変圧器の巻線は、電流の大きさで発熱します——有効か無効かは関係ないのです。
だから定格は kV・A(皮相電力)で表されます——kW ではないのです。
力率が悪いと、同じ kV・A でも運べる kW が減ります——それが本問の出発点です。
無効電力がどう変わったかを見る
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93.3 kvar のコンデンサが必要になります——選択肢(1)の93.3がこれです。
問われているのは増設負荷の皮相電力なので、混同しないこと——紛らわしい選択肢です。
選択肢を1つずつ意味づける
| 選択肢 | 何を表す値か |
| ★(1) 93.3 | ★★必要な進相コンデンサの容量 |
| ★(2) 120 | ★★既設負荷の有効電力 |
| ★★(3) 66.7 | ★★正解(増設負荷の皮相電力) |
| ★(4) 160 | ★★改善後の許容有効電力 |
| ★(5) 40 | ★★増設できる有効電力 |
5つとも、計算の途中で出てくる値です——だから紛らわしいのです。
とりわけ(5)40は、最後の割り算を忘れると選んでしまいます——皮相電力を問われているのです。
何を問われているかを、計算前に確かめましょう。
力率改善で変圧器を替えずに済む
| 対策 | 費用 | 増設できる負荷 |
| ★★進相コンデンサを設置 | ★★小さい | ★★66.7 kV・A |
| ★変圧器を大きくする | ★★大きい(工事も必要) | ★★容量次第 |
| ★何もしない | ★★ゼロ | ★★増設できない |
コンデンサのほうがはるかに安く済みます——設置も簡単です。
だから増設の相談があれば、まず力率を確かめます——実務の定石です。
本問はその判断を数字で示す問題です。
皮相電力で見ると何が起きたか
| 改善前(既設のみ) | 改善後(増設込み) | |
| ★有効電力 | ★★120 kW | ★★160 kW |
| ★力率 | ★★0.6 | ★★0.8 |
| ★皮相電力 | ★★200 kV・A | ★★200 kV・A |
皮相電力は200 kV・A のまま変わっていません——変圧器は満杯のままです。
けれども中身が変わり、有効電力が40 kW 増えました——無効分が有効分に置き換わったのです。
それが力率改善の正体です——同じ容量でより多く働けるのです。
問題の解説:増設負荷の皮相電力を求める

| 段階 | すること | 本問の値 |
| ★① | ★★変圧器容量×改善後の力率 | ★★200×0.8=160 kW |
| ★② | ★★既設の有効電力を引く | ★★160−120=40 kW |
| ★③ | ★★増設負荷自身の力率で割る | ★★40÷0.6=66.7 kV·A |
3段階のうち、③で使う力率だけが違います——そこが引っかけです。
①では改善後の力率0.8、③では増設負荷の力率0.6——役割が違うのです。
どちらの力率を使うかを、毎回確かめましょう。
まとめ
| 既設 | 120kW・力率0.6(S=200kV·A) |
| 改善後の有効電力上限 | 200×0.8=160kW |
| 増設有効電力 | 160−120=40kW |
| 増設皮相電力 | 40/0.6=66.7kV·A |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
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