今回は令和6年度下期 電力科目 A問題3を解説します。汽力発電所の蒸気タービンについて、衝動タービンと反動タービンそれぞれの動作原理と適用圧力の空欄を補充する問題です。
切り分けは「どこで蒸気が膨張(圧力降下)するか」の一点。衝動タービンはノズルの中だけで膨張するので羽根の出入口の圧力は等しい。反動タービンはランナ(回転羽根)の中でも膨張し、その反動力も使います。水車のペルトン/フランシスと同じ発想です。
出題のポイント:蒸気タービンの分類

衝動タービンはノズルで圧力を落とし、反動タービンは回転羽根内でも膨張します。圧力低下の場所から空欄を順に決めます。
令和6年度下期 電力科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題3
電験3種 電力科目 【火力】 令和6年度下期 A問題3
次の文章は、汽力発電所における蒸気タービンの分類に関する記述である。衝動タービンは、高温・高圧の蒸気が羽根に衝突するときに生ずる衝動力によってランナを回転させるもので、タービンのノズルを通る間に蒸気の圧力が(ア)し、高速度となってノズルから噴出する。この噴出した蒸気を前面の羽根に衝突させることにより、ランナを回転させる。羽根を通過する蒸気の通路の断面積が一様であり、羽根の出入口の蒸気の圧力は(イ)。衝動タービンは蒸気の圧力が(ウ)のものに適する。
反動タービンは、衝動力と蒸気が回転羽根を離れるときの反動力を利用するもので、固定羽根で膨張させた蒸気を羽根に衝突させてランナを回転させるとともに、ランナの内部で蒸気を(エ)させ、排気するときの反動力を利用してランナを回転させる。反動タービンは、蒸気の圧力が(オ)のものに適する。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 上昇 等しい 高圧 膨張 中低圧 (2) 上昇 異なる 中低圧 凝縮 高圧 (3) 上昇 等しい 中低圧 膨張 高圧 (4) 降下 異なる 中低圧 凝縮 高圧 (5) 降下 等しい 高圧 膨張 中低圧
衝動・反動タービンの違い

衝動タービンと反動タービンの違いは、この一点に尽きます。
| ★衝動タービン | ★反動タービン | |
| 圧力が下がる場所 | ★ノズル(固定部)だけ | ★ノズルと回転羽根の両方 |
| 羽根の出入口の圧力 | ★等しい | ★異なる |
| 羽根の通路断面積 | ★一様 | ★出口へ向かって狭まる |
| 回す力 | ★衝動力のみ | ★衝動力+反動力 |
| 適する蒸気圧力 | ★高圧 | ★中低圧 |
衝動タービンは、ノズルで圧力を全部速度に変えてしまいます——羽根に当たるときは、もう圧力差がないのです。
だから羽根の出入口で圧力は等しい——通路の断面積も一様でよいことになります。
反動タービンは、羽根の中でも膨張させます——出口へ向かって通路が狭くなり、蒸気が加速するのです。その噴き出す反動で羽根が押される——ロケットと同じ原理になります。
5つの空欄と選択肢照合

タービンは何段にも分かれています——場所によって形式を変えるのです。
| 段 | 蒸気の状態 | 採用される形式 | 理由 |
| ★高圧段 | ★高圧・小体積 | ★衝動タービン | ★大きな圧力差を1段で処理できる |
| ★中低圧段 | ★低圧・大体積 | ★反動タービン | ★効率がよい |
高圧側は圧力差が大きい——反動式だと羽根の前後で圧力差が生じ、軸方向に押される力(スラスト)が大きくなるのです。
衝動式なら羽根の前後で圧力が等しい——スラストが小さくて済むことになります。
中低圧側は蒸気の体積が大きく、流速も落ちます——反動式のほうが効率よくエネルギーを取り出せるのです。
だから実際の蒸気タービンは、高圧段が衝動、低圧段が反動——両方を組み合わせた構成になっています。
水車との対応
| 蒸気タービン | 水車 | |
| ★衝動 | ★衝動タービン(カーチス・ラトー) | ★ペルトン水車 |
| ★反動 | ★反動タービン(パーソンス) | ★フランシス・カプラン水車 |
水を蒸気に置き換えただけで、原理は同じ——水力で学んだことがそのまま使えます。
ペルトンは噴流が当たる衝撃で回る——衝動タービンと同じ。フランシスは羽根の中で圧力が下がる——反動タービンと同じです。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「上昇」としてしまう——選択肢(1)(2)(3)がそれです。
ノズルは圧力を速度に変える装置——圧力は下がるのです。問題文も「高速度となってノズルから噴出する」と続いています。
(ウ)(オ)を逆にしてしまう——選択肢(2)(3)(4)。衝動が高圧、反動が中低圧です。
(エ)を「凝縮」としてしまう——選択肢(2)(4)。ランナの中で蒸気が水になっては困ります。膨張させて加速させるのです。
(ア)と(ウ)の2欄で確定できます。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)★ノズルでは圧力が降下し、速度に変わる。
②(イ)★衝動タービンは羽根の出入口で圧力が等しい。
③(ウ)(オ)★衝動=高圧側、反動=中低圧側。
④★ペルトン=衝動、フランシス=反動と対応させて覚える。
💡 覚え方
「衝動はノズルだけ、反動は羽根でも下がる」——圧力が落ちる場所の違いです。羽根の出入口で圧力が等しければ衝動——これが判定の決め手になります。
水車の衝動と反動は平成22年度 A問題1(水力:衝動水車は位置水頭を速度水頭に)、令和元年度 A問題2(水力:水車の構造と特徴)にあります。
反動度という指標
衝動と反動は、実は連続的につながっています——その割合を表すのが反動度です。
| 反動度 | 形式 | 特徴 |
| ★0 | ★純衝動タービン | ★羽根では圧力が下がらない |
| 0.1〜0.2 | わずかな反動を持つ衝動形 | 実際の衝動タービンはこの程度 |
| ★0.5 | ★反動タービン | ★固定羽根と回転羽根で半分ずつ |
実際の衝動タービンも、わずかに反動度を持たせます——羽根の中で少し加速させたほうが効率がよいからです。
本問は理想的な純衝動として説明しています——だから「羽根の出入口の圧力は等しい」となるのです。
段落構成と速度複式・圧力複式
| 方式 | やること | ねらい |
| ★速度複式(カーチス) | ★1つのノズルの速度を、複数の羽根列で少しずつ受け止める | ★1段で大きな熱落差を処理できる |
| ★圧力複式(ラトー) | ★ノズルと羽根の組を何段も並べる | ★1段あたりの圧力差を小さくする |
1段で全部の圧力差を処理すると、蒸気の速度が音速を超えてしまいます——効率が落ちるので、段に分けるのです。
大型の蒸気タービンは数十段——1段ずつ少しずつエネルギーを取り出していくことになります。
蒸気タービンの分類はほかにもある
衝動・反動は「羽根の形」による分類——ほかの切り口も押さえておきましょう。
| 分類の軸 | 種類 | 内容 |
| ★蒸気の使い方 | ★復水タービン | ★排気を復水器で真空にする(発電用の標準) |
| 背圧タービン | 排気を工場の蒸気として使う | |
| 抽気復水タービン | 途中で蒸気を取り出しつつ、残りを復水する | |
| ★蒸気の流れ | 軸流タービン | 軸方向に流れる(発電用はすべてこれ) |
| ★軸の数 | 単軸/二軸 | 高圧・中圧・低圧を1本にまとめるか分けるか |
発電所で使うのは復水タービン——排気を真空にして熱落差を稼ぐためです。
工場では背圧タービンも使われます——発電しつつ、排気の蒸気を製造工程で使うのです。熱も電気も無駄にしない仕組み(コージェネレーション)になります。
低圧段が最も大きくなる
蒸気は膨張するほど体積が増えます——だから後段ほど翼が長くなるのです。
最終段の翼は1 m を超えることもあります——先端の速度は音速に迫ることになります。
それでも足りないときは、低圧タービンを2つに分けて蒸気を分流させる——複流排気と呼ばれる構成です。
空欄の絞り込み手順
5つの空欄がありますが、2つで確定します。
| 確定させる欄 | 正しい語 | 残る選択肢 |
| (ア) | 降下 | ★(4)(5) |
| (イ) | 等しい | ★(5)に確定 |
(ア)は「ノズルを通る間に圧力が〜し、高速度となって噴出」——速度になる分、圧力は降下します。これで3つ落ちます。
(イ)は「羽根の通路の断面積が一様」という前提付き——断面積が変わらないなら速度も変わらず、圧力も変わりません。等しい です。
2手で確定——(ウ)(エ)(オ)は確認に使えます。
まとめ
| (ア) | ノズル内で圧力が降下し高速噴流に |
| (イ) | 衝動タービンは羽根の出入口の圧力が等しい |
| (ウ) | 衝動タービンは高圧部に適する |
| (エ) | 反動タービンはランナ内部でも蒸気を膨張させる |
| (オ) | 反動タービンは中低圧部に適する→(5) |
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