今回は令和6年度下期 電力科目 A問題2を解説します。汽力発電で熱効率の向上を図る方法として、誤っているものを選ぶ問題です。
4つは教科書どおりの向上策ですが、1つだけ主語がすり替わっています。再生サイクルで効率を上げるのは「給水温度」であって「抽気温度」ではない——ここに気付けるかどうかが勝負です。
出題のポイント:汽力発電の熱効率向上策

各設備がどの温度・圧力・熱を変えるかを区別し、給水加熱器では抽気蒸気の熱で給水温度を上げることを押さえます。
令和6年度下期 電力科目 A問題2:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2
電験3種 電力科目 【火力】 令和6年度下期 A問題2
汽力発電において、熱効率の向上を図る方法として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
高温高圧の蒸気を使用する。
復水器の真空度を高める。
再熱サイクルを利用する。
給水加熱器で抽気温度を上げる。
節炭器で排ガス温度を下げる。
正しい4つの熱効率向上策

「給水加熱器で抽気温度を上げる」——温める側と温められる側が入れ替わっています。
| ★抽気 | ★給水 | |
| 役割 | ★熱を渡す側 | ★熱をもらう側 |
| 給水加熱器での変化 | ★冷えて凝縮する | ★温度が上がる |
| 温度を決めるもの | ★タービンのどの段から抜くか | ★抽気の温度と伝熱面積 |
給水加熱器は熱交換器——抽気の熱を給水に渡す装置です。
抽気は熱を渡して冷える側——そこで温度が上がることはありません。
熱効率向上策として正しく述べるなら「給水温度を上げる」——そうすればボイラで加える熱が減ります。
給水温度には最適値がある
もし「より高温の段から抽気する」という意味に読んだとしても、上げ続ければよいわけではありません。
| 給水温度 | ボイラで加える熱 | タービンの仕事 | 効率 |
| 低い | 多い | 多い | 低い |
| ★最適 | ★ほどよく減る | ★少し減る | ★最大 |
| 高すぎる | ★大きく減る | ★大きく減る | ★下がる |
高い圧力の段から抽気すれば、給水はよく温まります——ところが、その蒸気がタービンでするはずだった仕事も失われるのです。
だから効率が最大になる給水温度が存在します——「上げれば上げるほどよい」とは言えないことになります。
実際の発電所では、複数の段から少しずつ抽気して段階的に温めます——1段で一気に温めるより効率がよいからです。
残る4つは定番の向上策
| 記述 | 策 | 効く理由 |
| (1) | 高温高圧の蒸気 | ★カルノーの T₁ が上がる |
| (2) | 復水器の真空度を高める | ★カルノーの T₂ が下がる |
| (3) | 再熱サイクル | ★熱落差が増え、湿り度も下がる |
| (5) | 節炭器で排ガス温度を下げる | ★捨てる熱を回収する |
4つとも、これまでの年度で繰り返し出てきた策——見慣れた記述です。
見慣れないものが1つ混じっていれば、そこが怪しい——この型では有効な戦略になります。
⚠️ よくある間違い
(4)を「再生サイクルのことだから正しい」と流してしまう——再生サイクル自体は正しい向上策です。
誤りは、給水加熱器が何を温めるかという点——温めるのは給水であって抽気ではありません。
(5)の「排ガス温度を下げる」を疑ってしまう——正しいのです。節炭器は熱を回収する装置ですから、通過後のガス温度は下がります。
令和元年度では、この記述が「排ガス温度を上昇させる」と逆に書かれて誤りにされています——同じ策でも書き方が違えば正誤が変わるのです。
⏱️ 本番での進め方
①★給水加熱器が上げるのは給水温度。抽気は熱を渡す側。
②仮に「高い段から抽気」と読んでも、給水温度には最適値がある。
③残る4つは定番の向上策。見慣れないものを疑う。
④(5)★節炭器を通ると排ガス温度は「下がる」。
💡 覚え方
「熱交換器では、渡す側が冷えて、もらう側が温まる」——抽気は渡す側です。だから抽気の温度が上がることはありません。
同じテーマが平成21年度 A問題3(火力:熱効率向上策)、令和元年度 A問題3(火力:熱効率向上方法)にあります。
熱交換器の基本を確認する
本問の誤りは、熱交換の向きを取り違えたものです。
| 装置 | 熱を渡す側(冷える) | 熱をもらう側(温まる) |
| ★給水加熱器 | ★抽気 | ★給水 |
| ★節炭器 | ★排ガス | ★給水 |
| ★空気予熱器 | ★排ガス | ★燃焼用空気 |
| ★復水器 | ★排気蒸気 | ★冷却水 |
どの装置も、渡す側と受け取る側がはっきり分かれています。
「〜器で〜温度を上げる」と書かれていたら、それが受け取る側かどうかを確かめる——渡す側なら誤りです。
装置名から役割を読む
「給水加熱器」は「給水を加熱する器」——名前がそのまま役割を表しています。
「空気予熱器」は「空気を予熱する器」——同じ作りです。
だから「給水加熱器で抽気温度を上げる」は、名前と矛盾している——装置名を読めば気づけます。
熱効率向上策の全体像
汽力発電の効率を上げる手立てを、系統立てて並べます。
| 方向 | 具体策 | 効く仕組み |
| ★高温側を上げる | ★蒸気の高温高圧化(USC) | ★カルノーの T₁ が上がる |
| ★低温側を下げる | ★復水器の真空度を高める | ★カルノーの T₂ が下がる |
| ★捨てる熱を拾う | ★節炭器・空気予熱器 | ★排ガスの熱を回収する |
| ★サイクルを工夫する | ★再熱・再生サイクル | ★仕事を増やし、加える熱を減らす |
4つの方向に整理できます——どの向上策も、このいずれかに当てはまるのです。
本問の(1)(2)(3)(5)が、それぞれ1つずつ対応しています——よくできた出題だと言えます。
向上策が問われる年度
| 年度 | 設問 | 誤り/正しい記述 |
| ★平成21年度 A3 | ★誤っているものを選ぶ | ★「真空度を低く」が誤り |
| ★令和元年度 A3 | ★正しいものを選ぶ | ★「真空度を高く」が正しい |
| ★令和6年度下期 A2(本問) | ★誤っているものを選ぶ | ★「抽気温度を上げる」が誤り |
3年度とも、同じ向上策の一覧から問われています——4つの方向を押さえれば、どの形でも解けるでしょう。
この1問で押さえること
給水加熱器が温めるのは給水——抽気は熱を渡して冷える側です。
「給水加熱器で抽気温度を上げる」は、温める側と温められる側が入れ替わっている——装置名を読めば矛盾に気づけます。
仮に「より高温の段から抽気する」と読んでも、給水温度には最適値がある——上げ続ければよいわけではありません。
熱交換器の見分け方をまとめる
| 装置 | 温めるもの | 熱源 |
| ★給水加熱器 | ★給水 | ★抽気 |
| ★節炭器 | ★給水 | ★排ガス |
| ★空気予熱器 | ★燃焼用空気 | ★排ガス |
| ★過熱器 | ★飽和蒸気 | ★火炉の熱 |
| ★再熱器 | ★高圧タービンの排気 | ★火炉の熱 |
装置名の前半が「温めるもの」を表しています——給水加熱器なら給水、空気予熱器なら空気。
名前を読めば役割が分かる——それがこの分野の助けになります。
例外は「節炭器」——石炭を節約する装置という由来なので、温めるものが名前に入っていません。
だから節炭器だけは「給水を温める」と別に覚える必要があります——そこが取り違えの温床にもなっています。
誤りは(4):上げる対象が逆

本問の(4)を、正しい記述に書き直してみましょう。
| 本問の記述 | ★正しい書き方 | |
| 装置 | 給水加熱器 | 給水加熱器 |
| ★何を上げるか | ★抽気温度 | ★給水温度 |
| 効く仕組み | — | ★ボイラで加える熱が減る |
「給水加熱器で給水温度を上げる」なら、正しい熱効率向上策——1語を直すだけで成立します。
冷たい水をいきなりボイラに入れると、大きな温度差で熱を渡すことになります——温度差の大きい熱の受け渡しは損失なのです。
段階的に温めておけば、その損失が減る——これが再生サイクルの本質になります。
まとめ
| (1)高温高圧の蒸気 | 熱落差が増え平均受熱温度↑→正しい |
| (2)復水器の真空度↑ | 背圧↓で熱落差増→正しい |
| (3)再熱サイクル | 効率向上+低圧タービンの湿り軽減→正しい |
| (4)抽気温度を上げる | 上げるべきは給水温度。抽気温度↑はタービン仕事が減る→誤り |
| (5)節炭器で排ガス温度↓ | 排熱を回収した結果→正しい。答えは(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・水・蒸気・燃焼ガスが通る順序(火力4):【電力】令和7年度上期 A問題3
・この年度の問題を通しで解く:電験3種 令和6年度下期 問題一覧(全4科目)

コメント