今回は平成21年度 電力科目 A問題3を解説します。汽力発電所における熱効率の向上を図る方法として、誤っているものを選ぶ問題です。
この問題、実は令和元年度 A問題3(火力24)の前身で、選択肢の構成がほぼ同じ。あちらは「正しいもの」を選ばせて答えが(2)、こちらは「誤っているもの」で真空度の向きを逆にした(2)が答え——設問の向きまで含めて対で覚えると得します。
平成21年度 電力科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題3
電験3種 電力科目 【火力】 平成21年度 A問題3
汽力発電所における、熱効率の向上を図る方法として、誤っているのは次のうちどれか。
タービン入口の蒸気として、高温・高圧のものを採用する。
復水器の真空度を低くすることで蒸気はタービン内で十分に膨張して、タービンの羽根車に大きな回転力を与える。
節炭器を設置し、排ガスエネルギーを回収する。
高圧タービンから出た湿り飽和蒸気をボイラで再熱し、再び高温の乾き飽和蒸気として低圧タービンに用いる。
高圧及び低圧のタービンから蒸気を一部取り出し、給水加熱器に導いて給水を加熱する。

誤りは(2):真空度は高くする
「真空度を低くすることで蒸気は十分に膨張して」——向きが逆です。
| 真空度 | 復水器の圧力 | タービン内の膨張 | 熱効率 |
| ★高い | ★低い | ★十分に膨張できる | ★向上 |
| 低い | 高い | 膨張しきれない | 低下 |
出口の圧力が低いほど、蒸気は大きく膨張できます——それだけ多くの仕事を取り出せるのです。
記述の後半「十分に膨張して大きな回転力を与える」は正しい——その原因が「真空度を低く」となっているのが誤りです。
結論は合っているのに理由が逆——この形の誤りは見落としやすいので注意しましょう。
蒸気条件の高温高圧化
(1)の「高温・高圧」を、具体的な数字で見ておきましょう。
| 区分 | 蒸気圧力 | 蒸気温度 | 熱効率 |
| 亜臨界圧 | 16〜19 MPa | 538 ℃ | 38〜40 % |
| ★超臨界圧(SC) | ★22.1 MPa 超 | 566 ℃ | 41 % 前後 |
| ★超々臨界圧(USC) | ★24〜25 MPa | ★600 ℃ 以上 | ★43 % 前後 |
臨界圧(22.1 MPa)を超えると、水と蒸気の区別がなくなります——沸騰という現象が起きないのです。
だからドラムが不要になり、貫流ボイラが使われます——1本の管を通る間に、水がそのまま蒸気に変わることになります。
温度を上げるほど効率は上がりますが、材料が追いつきません——600 ℃ 級が現在の実用上限です。
節炭器と空気予熱器の位置づけ
(3)の節炭器は、煙道の余熱を回収する装置——捨てるはずの熱を拾うという点で、再生サイクルと似た発想です。
違うのは、拾う相手が「排ガス」か「蒸気」か——節炭器は排ガスから、再生サイクルは抽気から熱をもらいます。
再生サイクルはなぜ効率を上げるのか
(5)の抽気は、一見すると損に見えます——タービンで使えるはずの蒸気を取り出してしまうのですから。
| 抽気なし | ★抽気あり | |
| タービンの仕事 | 大きい | ★少し減る |
| 給水の温度 | 低い | ★高い |
| ボイラで加える熱 | 多い | ★少なくて済む |
| 効率 | — | ★向上する |
分子(仕事)が少し減っても、分母(加えた熱)がそれ以上減る——だから効率が上がるのです。
冷たい水をいきなりボイラに入れると、そこで大きな温度差が生じます——温度差の大きい熱の受け渡しは、損失になるのです。
抽気で段階的に温めておけば、その損失が減る——大型機では6〜8段の給水加熱器が使われます。
再熱サイクルが湿り度を下げる
(4)の再熱は、効率だけでなく機器の保護にも効きます。
タービンの後段では、蒸気が膨張して温度が下がり、水滴ができます——その水滴が高速で翼に当たると、表面が削られるのです。
湿り度は12 % 程度が限度——それを超えないように、途中で温め直すことになります。
結果として熱落差も増えるので、効率も上がる——一石二鳥の工夫だと言えます。
正誤判定の進め方
5つとも熱効率向上策——向きが逆になっているものを探します。
| 記述 | 策 | 判定 |
| (1) | 高温・高圧の蒸気 | 正しい |
| ★(2) | ★復水器の真空度を低く | ★誤り(高く) |
| (3) | 節炭器で排熱回収 | 正しい |
| (4) | 再熱サイクル | 正しい |
| (5) | 再生サイクル | 正しい |
(1)(3)(4)(5)は、教科書に載っている向上策そのもの——言い回しも素直です。
(2)だけが「低くする」という下向きの操作——ほかがすべて「上げる・回収する・加熱する」とプラス方向なのに、1つだけ逆を向いています。
そこに目を留められれば、知識を思い出す前に候補が絞れます。
向上策どうしの関係
5つの策は、独立に効くわけではありません——互いに関係しています。
たとえば蒸気を高温にすると、タービン出口の湿り度が下がります——再熱の必要性が減るのです。
逆に高圧にすると湿り度は上がる——再熱がいっそう重要になることになります。
だから高温高圧化と再熱はセットで進んできた——単独の工夫ではなく、組み合わせて成り立つのです。
熱効率向上策の一覧
本問の5つは、いずれも代表的な向上策——まとめて押さえましょう。
| 策 | やること | なぜ効くか |
| ★(1) 高温・高圧化 | ★タービン入口の蒸気条件を上げる | ★カルノーの T₁ が上がる |
| ★(2) 真空度を高く | ★復水器の圧力を下げる | ★カルノーの T₂ が下がる |
| ★(3) 節炭器 | ★煙道の排熱で給水を温める | ★捨てる熱を減らす |
| ★(4) 再熱サイクル | ★高圧タービンの出口蒸気を温め直す | ★湿り度を下げ、熱落差を増やす |
| ★(5) 再生サイクル | ★抽気で給水を加熱する | ★ボイラで加える熱を減らす |
(1)(2)はカルノー効率の上下限を広げる策——1−T₂/T₁ で T₁ を上げ、T₂ を下げるのです。
(3)(5)は「捨てるはずの熱を拾う」策——煙道から拾うのが節炭器、タービンから拾うのが再生になります。
(4)は少し性格が違う——湿り蒸気による翼の傷み(エロージョン)を防ぎつつ、仕事を増やすのです。
再熱と再生の違い
| ★再熱サイクル | ★再生サイクル | |
| 取り出す蒸気 | ★高圧タービンの排気(全量) | ★途中段からの抽気(一部) |
| 行き先 | ★ボイラの再熱器へ戻す | ★給水加熱器へ送る |
| ねらい | ★温め直して再びタービンで使う | ★給水を温めてボイラの負担を減らす |
再熱は「戻して使う」、再生は「途中で分けて使う」——まったく別の工夫です。
現在の大型機は両方を採用しています——再熱再生サイクルと呼ばれる形になります。
⚠️ よくある間違い
(2)の後半だけを読んで正しいと判断する——「十分に膨張して大きな回転力を与える」は正しいのです。
誤りは前半の「真空度を低くする」——1文の中で、原因が逆で結果が正しいという形になっています。
「真空度」という言葉の向きに注意——真空度が高い=圧力が低い。「圧力を低く」なら正しいのですが、「真空度を低く」は逆です。
(4)の「湿り飽和蒸気」を疑ってしまう——高圧タービンを出た蒸気は湿っているのが実際です。それを再熱するのですから、正しい記述になります。
⏱️ 本番での進め方
①★真空度は「高く」。低くするのは圧力のほう。
②結論が正しくても、理由が逆なら誤り。
③向上策は5つ:高温高圧・真空度・節炭器・再熱・再生。
④★(1)(2)はカルノー、(3)(5)は排熱回収、(4)は湿り度対策。
💡 覚え方
「上を上げて、下を下げて、捨てる熱を拾う」——熱効率向上策はこの3方向です。真空度は高く、圧力は低く——言葉が逆向きになる点に毎回注意しましょう。
復水器の真空度は平成23年度 A問題3(火力:復水器の一般的説明)、節炭器は令和5年度上期 A問題3(火力:節炭器と空気予熱器)にあります。
まとめ
| (1)入口蒸気 | 高温・高圧を採用→正しい |
| (2)真空度 | 高くするのが正しい(低くは逆)→誤り |
| (3)節炭器 | 排ガスエネルギーを回収→正しい |
| (4)再熱 | 湿り飽和蒸気を再熱して低圧タービンへ→正しい |
| (5)再生 | 抽気で給水加熱→正しい。答えは(2) |
▼あわせて解きたい関連問題
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