今回は令和元年度 電力科目 A問題3を解説します。汽力発電所における熱効率向上方法として正しいものを選ぶ問題です。
★注意すべきは「正しいもの」を選ぶ形式だということ。火力5のような「誤っているもの」とは逆で、4つが誤り・1つだけ正しいという構成です。しかも誤りの4つはすべて向き(高い/低い・する/しない・増加/減少)が逆にされています。
令和元年度 電力科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題3
電験3種 電力科目 【火力】 令和元年度 A問題3
汽力発電所における熱効率向上方法として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
タービン入口蒸気として、極力、温度が低く、圧力が低いものを採用する。
復水器の真空度を高くすることで蒸気はタービン内で十分に膨張して、タービンの羽根車に大きな回転力を与える。
節炭器を設置し、排ガス温度を上昇させる。
高圧タービンから出た湿り飽和蒸気をボイラで再熱させないようにする。
高圧及び低圧のタービンから蒸気を一部取り出し、給水加熱器に導いて給水を加熱させ、復水器に捨てる熱量を増加させる。

「正しいもの」を選ぶ問題
本問は、いつもと逆——4つが誤りで、1つだけが正しいのです。
| 記述 | 書かれている内容 | 正しくは | 判定 |
| (1) | 温度が低く、圧力が低い蒸気 | ★高温・高圧 | ★誤り |
| ★(2) | ★真空度を高くする | ★そのとおり | ★正しい |
| (3) | 節炭器で排ガス温度を上昇させる | ★低下させる(熱を回収する) | ★誤り |
| (4) | 再熱させないようにする | ★再熱する | ★誤り |
| (5) | 復水器に捨てる熱量を増加させる | ★減少させる | ★誤り |
4つとも、正しい向上策の向きをひっくり返したもの——すべて「逆」になっています。
だから正しい向上策を知っていれば、逆のものを消していくだけ——残る1つが答えになります。
平成21年度とは出題が反転している
まったく同じテーマが、逆の形で問われた年度があります。
| ★平成21年度 A3 | ★令和元年度 A3(本問) | |
| 問われ方 | ★誤っているものを選ぶ | ★正しいものを選ぶ |
| 選択肢の構成 | ★4つが正しく、1つだけ逆 | ★4つが逆で、1つだけ正しい |
| 真空度の記述 | ★「低く」=誤り | ★「高く」=正しい |
| 答え | ★(2) | ★(2) |
どちらも真空度の記述が答えになっています——偶然にしてはよくできた対です。
設問の向きが違うだけで、問われている知識はまったく同じ——「誤っているもの」か「正しいもの」かを読み飛ばすと、真逆を選んでしまいます。
問題文の最後の一句は、必ず確認しましょう。
向上策の向きを整理する
| 項目 | ★効率を上げる向き | 理由 |
| タービン入口蒸気 | ★高温・高圧にする | ★カルノーの T₁ が上がる |
| 復水器の真空度 | ★高くする | ★カルノーの T₂ が下がる |
| 排ガス温度 | ★低くする | ★節炭器・空気予熱器で熱を回収する |
| 再熱 | ★行う | ★熱落差が増え、湿り度も下がる |
| 復水器に捨てる熱 | ★減らす | ★抽気した分は復水器へ行かない |
「上げるもの」と「下げるもの」を分けて覚える——入口の蒸気条件と真空度は上げ、排ガス温度と捨てる熱は下げるのです。
「真空度を上げる」と「排ガス温度を下げる」は、どちらも捨てるものを減らす方向——言い方が違うだけだと気づけば混乱しません。
⚠️ よくある間違い
「誤っているもの」と読み違えて(2)以外を選ぶ——最も避けたい失点です。
本問は「正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ」——過去問を解き慣れているほど、つい「誤っているもの」と思い込むことがあります。
(3)の「排ガス温度を上昇させる」に引っかかる——節炭器は熱を回収する装置ですから、排ガス温度は下がります。上昇させたら熱を捨てていることになります。
(5)の「復水器に捨てる熱量を増加」に引っかかる——抽気の目的は、捨てる熱を減らすこと。前半の「給水加熱器に導いて給水を加熱」は正しいので、後半だけが逆になっています。
⏱️ 本番での進め方
①★本問は「正しいもの」を選ぶ。設問の向きを必ず確認。
②4つが逆で、真空度の記述だけが正しい。
③★平成21年度は同じテーマで「誤っているもの」を選ぶ形。
④上げるのは蒸気条件と真空度、下げるのは排ガス温度と捨てる熱。
💡 覚え方
「上げるもの、下げるもの」を分けて覚える——入口は高温高圧に、出口は低圧に、捨てる熱は減らす。そして設問が「正しいもの」か「誤っているもの」か——そこを最初に確かめましょう。
同じテーマで「誤っているもの」を選ぶ問題が平成21年度 A問題3(火力:熱効率向上策)にあります。再生・再熱サイクルは平成27年度 A問題2(火力:再生サイクルと再熱サイクル)へ。
設問の向きを見分ける
電験の正誤問題には、2つの型があります。
| 型 | 選択肢の構成 | 解き方 |
| ★誤っているものを選ぶ | ★4つが正しく、1つだけ誤り | ★おかしいものを探す |
| ★正しいものを選ぶ | ★4つが誤りで、1つだけ正しい | ★確実に正しいものを見つける |
「正しいものを選ぶ」型のほうが、実は解きやすいこともあります——1つでも確信できるものがあれば、それで決まるからです。
逆に「誤っているものを選ぶ」型は、4つの正しさを確認する必要がある——知識の抜けがあると迷います。
本問は「正しいもの」型——真空度の記述に自信があれば、他を読まずに答えられます。
向きを逆にする作り方
| 元の正しい記述 | 本問での書き換え |
| 高温・高圧の蒸気を採用 | ★温度が低く、圧力が低いものを採用 |
| 節炭器で排ガス温度を低下 | ★排ガス温度を上昇させる |
| 再熱させる | ★再熱させないようにする |
| 復水器に捨てる熱量を減少 | ★増加させる |
すべて「向きを逆にする」という同じ作り方——装置名や仕組みは正しいままです。
だから知識としては、向上策の向きさえ覚えていれば足ります——上げるものか下げるものかを間違えないことが要点になります。
(2) 真空度を高くする効果を確かめる
唯一の正しい記述を、あらためて確認しておきましょう。
| 復水器の圧力 | 飽和温度 | カルノー効率(600 ℃ から) |
| 101 kPa | 100 ℃ | 57.3 % |
| ★10 kPa | ★46 ℃ | ★63.5 % |
| ★5 kPa | ★33 ℃ | ★64.9 % |
圧力を下げれば沸点も下がり、捨てる温度が下がります——それが効率の向上につながるのです。
タービン側から見れば、出口の圧力が低いほど大きく膨張できる——問題文の「十分に膨張して」がそれです。
同じことを、熱サイクルの側から見るか、タービンの側から見るか——表現が違うだけで、中身は同じになります。
真空度の限界
いくらでも下げられるわけではありません——冷却水の温度が限界を決めます。
海水より冷たくは冷やせないので、その温度の飽和圧力が下限になります。
だから同じ発電所でも、冬のほうが効率がよい——季節で効率が変わることになります。
この1問で押さえること
本問は「正しいものを選ぶ」型——4つが逆で、真空度の記述だけが正しいのです。
設問の向きを読み飛ばすと、真逆を選んでしまいます——問題文の最後の一句を必ず確認しましょう。
熱効率向上策の向き
| 上げるもの | 下げるもの |
| ★タービン入口の蒸気温度・圧力 | ★復水器の圧力(=真空度を上げる) |
| ★復水器の真空度 | ★排ガス温度(節炭器・空気予熱器で回収) |
| ★再熱の実施 | ★復水器に捨てる熱量(再生サイクル) |
「入口は高く、出口は低く」——カルノー効率 1−T₂/T₁ の T₁ を上げ、T₂ を下げるという一言に尽きます。
排ガス温度と捨てる熱は、いずれも「捨てるもの」——減らす方向が正解になります。
まとめ
| (1)入口蒸気 | 正しくは高温高圧→誤り |
| (2)復水器の真空度↑ | 背圧↓→十分に膨張→大きな回転力→正しい |
| (3)節炭器 | 排ガス温度は低下させる→誤り |
| (4)再熱 | 再熱させるのが向上策→誤り |
| (5)再生 | 復水器に捨てる熱量は減少させる→誤り。答えは(2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・汽力発電の熱効率向上対策(火力5・「誤っているもの」形式):【電力】令和6年度下期 A問題2
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