今回は平成19年度 電力科目 A問題3を解説します。排熱回収形コンバインドサイクル発電方式と同一出力の汽力発電方式を比較して誤っているものを選ぶ問題です。
実はこの問題、令和5年度上期 A問題2(火力11)として文面ほぼそのまま再出題されました。しかも今回は珍しく答えの番号まで同じ(3)。とはいえ番号の一致は偶然なので、毎回きちんと判定するのが安全です。
平成19年度 電力科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題3
電験3種 電力科目 【火力】 平成19年度 A問題3
排熱回収形コンバインドサイクル発電方式と同一出力の汽力発電方式とを比較した記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
コンバインドサイクル発電方式の方が、熱効率が高い。
汽力発電方式の方が、単位出力当たりの排ガス量が少ない。
コンバインドサイクル発電方式の方が、単位出力当たりの復水器の冷却水量が多い。
汽力発電方式の方が大形所内補機が多く、所内率が大きい。
コンバインドサイクル発電方式の方が、最大出力が外気温度の影響を受けやすい。

誤りは(3):冷却水量は少ない
コンバインドサイクルのほうが、復水器の冷却水量は少なくて済みます——蒸気タービンの分担が小さいからです。
| 汽力発電 | ★コンバインドサイクル | |
| 出力の内訳 | 蒸気タービンが100 % | ★ガスタービン2/3、蒸気タービン1/3 |
| 復水器を通る蒸気 | 多い | ★少ない |
| ★冷却水量 | ★多い | ★少ない(半分以下) |
同じ出力でも、蒸気タービンが受け持つのは3分の1程度——復水器で処理する蒸気もそれだけ少なくなるのです。
そのうえ熱効率が高い——捨てる熱そのものが少ないことになります。2つの理由が重なって、冷却水量は半分以下になります。
だから海水の取水設備も小さくて済む——建設費や温排水の面でも有利だと言えます。
なぜ蒸気タービンの分担が3分の1なのか
コンバインドサイクルの出力配分を確かめておきましょう。
★入熱の35 %
★入熱の13 %
★およそ4分の1〜3分の1
出力の7割以上はガスタービンが担っています——蒸気タービンは補助的な位置づけです。
だから復水器で処理する蒸気も少なくて済む——冷却水量が減る理由になります。
所内率とは
| 方式 | 所内率の目安 | 大形補機 |
| ★汽力(石炭) | ★5〜7 % | ★給水ポンプ・通風機・循環水ポンプ・微粉炭機 |
| ★コンバインド(LNG) | ★2〜3 % | ★補機が少ない |
給水ポンプだけで数万 kW を消費します——24 MPa まで加圧するのですから当然でしょう。
コンバインドは蒸気系が小さいので、その負担も小さい——石炭を扱う設備もありません。だから所内率が低く抑えられるのです。
コンバインドサイクルの構成台数
1台あたりの出力が小さいので、複数台を並べます——それが運用上の利点にもなっています。
| 汽力発電 | ★コンバインド | |
| 単機出力 | 50〜100万 kW | ★十数〜数十万 kW |
| 構成 | 1系列 | ★複数系列(多軸・単軸) |
| 部分負荷運転 | ★1台を絞るので効率が落ちる | ★運転台数を減らすので効率が落ちにくい |
汽力で出力を半分にすると、効率も大きく落ちます——蒸気条件が下がるからです。
コンバインドなら、4台のうち2台を止めればよい——動いている2台は定格で運転できることになります。
再生可能エネルギーの変動を埋める役目には、この性質が効きます——起動停止が速いことと合わせて、調整電源として重宝されるのです。
外気温度対策
(5)の弱点には、対策も用意されています。
| 方法 | 内容 |
| 吸気冷却 | 霧を噴いて気化熱で空気を冷やす |
| 吸気フィルタの管理 | 圧力損失を減らして吸い込みやすくする |
夏の昼に出力が落ちるのは、需要が最大のときに供給力が減るということ——だからこそ対策が重要になります。
比較問題として問われる形
コンバインドと汽力の比較は、繰り返し出題されています。
| 年度 | 誤りにされた項目 |
| ★平成19年度 A3(本問) | ★冷却水量が「多い」 |
| ★平成22年度 A3 | ★起動停止時間が「長い」 |
どの項目を誤りにするかが変わるだけで、比較表は同じ——6項目をまとめて覚えるのが確実です。
「熱効率は高い、排ガスは多い、冷却水は少ない、所内率は小さい、外気温度の影響は受けやすい、起動停止は速い」——この6つを唱えられるようにしておきましょう。
比較問題の5項目を整理する
この型は繰り返し出題されます——まとめて覚えてしまいましょう。
| 項目 | コンバインド | 汽力 | 理由 |
| ★熱効率 | ★高い | 低い | ★高温から始められる |
| ★排ガス量 | ★多い | ★少ない | ★空気を大量に圧縮して通す |
| ★冷却水量 | ★少ない | 多い | ★蒸気タービンの分担が小さい |
| ★所内率 | ★小さい | ★大きい | ★大形補機が少ない |
| ★外気温度の影響 | ★受けやすい | 受けにくい | ★空気を吸い込むので密度が効く |
| 起動停止時間 | ★短い | 長い | ガスタービンが速い |
「排ガス量は多いが冷却水量は少ない」——この組み合わせが覚えどころです。
ガスタービンは大量の空気を吸い込んで、そのまま排気します——だから排ガスは多いのです。
一方、水を使う部分は小さい——だから冷却水は少ないことになります。「空気は多く、水は少なく」と押さえましょう。
(5) 外気温度の影響を受けやすい理由
ガスタービンは空気を吸い込んで圧縮します——その空気の密度が温度で変わるのです。
| 外気温度 | 空気の密度 | 吸い込める質量 | 出力 |
| ★低い(冬) | ★大きい | ★多い | ★大きい |
| ★高い(夏) | ★小さい | ★少ない | ★小さい |
圧縮機は「体積」を吸い込みます——暖かい空気は薄いので、同じ体積でも質量が少ないのです。
燃やせる燃料も減り、出力が落ちる——夏に出力が下がることになります。
電力需要が最も高いのは夏の昼——まさにそのときに出力が落ちるのは悩ましい性質です。吸気を冷やす装置を備えることもあります。
⚠️ よくある間違い
(2)の排ガス量を疑ってしまう——「汽力の方が排ガス量が少ない」は正しいのです。
ガスタービンは燃焼に必要な量よりずっと多くの空気を通します——翼を冷やし、燃焼温度を抑えるためです。だから排ガスが多くなります。
(4)の所内率を疑ってしまう——汽力は給水ポンプ・通風機・循環水ポンプなど大形補機が多い。正しい記述です。
(3)と(2)を混同する——排ガスは「多い」、冷却水は「少ない」。方向が逆なので、まとめて覚えないと取り違えます。
⏱️ 本番での進め方
①★冷却水量はコンバインドのほうが少ない。
②★排ガス量は多い。「空気は多く、水は少なく」。
③(4) 汽力は大形補機が多く所内率が大きい。
④(5)★外気温度で出力が変わる。夏は下がる。
💡 覚え方
「空気は多く、水は少なく」——コンバインドの特徴を一言で表しています。蒸気タービンの分担が3分の1だから、復水器も冷却水も小さくて済むのです。
コンバインドサイクルの効率は平成25年度 A問題2(火力:コンバインドの効率式)、高効率化は平成26年度 A問題3(火力:コンバインドサイクルの高効率化)にあります。
まとめ
| (1)熱効率 | コンバインドの方が高い→正しい |
| (2)排ガス量 | 汽力の方が少ない→正しい |
| (3)冷却水量 | 蒸気タービンの分担が小さく「少ない」→誤り |
| (4)所内率 | 汽力は大形補機が多く大きい→正しい |
| (5)外気温度 | コンバインドは受けやすい→正しい。答えは(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・コンバインドと汽力の比較(火力11・本問の再出題版):【電力】令和5年度上期 A問題2
・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成19年度 問題一覧(全4科目)

コメント