今回は令和6年度下期 電力科目 B問題15を解説します。出力1000MW・発電端効率41%・重油発熱量44000kJ/kgの重油専焼火力発電所について、(a)重油消費量[t/h]と(b)1日に発生する二酸化炭素の重量[t]を求める問題です。
型は火力2(令和7年度下期 B問題15)とまったく同じ。1kW·h=3600kJで熱量に揃えて効率で割れば燃料量、炭素分に44/12を掛ければ二酸化炭素です。
出題のポイント:重油消費量と二酸化炭素排出量

出力を発電端効率で割って熱入力を求め、発熱量で割って重油消費量へ換算します。1日分の炭素重量に原子量比44/12を掛け、二酸化炭素排出量を求めます。
令和6年度下期 電力科目 B問題15:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題15
電験3種 電力科目 【火力】 令和6年度下期 B問題15
重油専焼火力発電所が出力1000MWで運転しており、発電端効率が41%、重油発熱量が44000kJ/kgであるとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、重油の化学成分(重量比)は炭素85%、水素15%、炭素の原子量は12、酸素の原子量は16とする。
重油専焼火力発電所が出力1000MWで運転しており、発電端効率が41%、重油発熱量が44000kJ/kgであるとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、重油の化学成分(重量比)は炭素85%、水素15%、炭素の原子量は12、酸素の原子量は16とする。
(a) 重油消費量の値[t/h]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。(1)50 (2)80 (3)120 (4)200 (5)250 t/h
(b) 1日に発生する二酸化炭素の重量の値[t]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)9.5×10³ (2)12.8×10³ (3)15.0×10³ (4)17.6×10³ (5)28.0×10³ t
出力から1時間当たりの重油消費量を求める

出力を効率で割って入熱を出し、発熱量で割ります。
★入熱
★kW×s=kJ
★約200 t/h
毎時200トンの重油——タンクローリー10台ぶんが1時間で消える計算です。
重油消費量から1日の二酸化炭素排出量を求める

★水素15 % は CO₂ にならない
★約15.0×10³ t
重油4,800 t から二酸化炭素14,960 t——3倍以上に増えます。
増えた分は空気中の酸素——炭素と結びついて大気へ戻っていくのです。
出力から CO₂ までの5段階
この型の計算は、いつも同じ手順で進みます。
| 順 | やること | 式 |
| ① | 出力を効率で割る | ★入熱=P/η |
| ② | 時間を掛けて熱量に | ★×3600(kJ) |
| ③ | 発熱量で割る | ★燃料重量 |
| ④ | 炭素の割合を掛ける | ★×0.85 など |
| ⑤ | 44/12 倍にする | ★CO₂ の重量 |
①〜③が燃料の計算、④⑤が化学の計算——2つの部分に分かれています。
どの段階も掛けるか割るかだけ——1つでも向きを間違えると答えが変わります。
各段階で「増えるはずか、減るはずか」を確かめる——それが最も確実な検算になります。
⚠️ よくある間違い
(a)で効率を掛けてしまう——1000×0.41=410 MW として計算すると約82 t/h となり選択肢(2)の80 に近づきます。
出力を出すには、それより多くの熱が要る——だから割るのが正解です。
(b)で1日ぶんに直し忘れる——200 t のまま計算すると623 t。「1日に発生する」と問われています。
(b)で水素15 % も足してしまう——水素は H₂O になるので CO₂ には関係ありません。4800×1.0×44/12=17,600 となり選択肢(4)に一致してしまいます。
(b)で12/44 と逆にする——1,113 t となって桁が外れます。
⏱️ 本番での進め方
①(a)★効率で割る。掛けると(2)に近づく。
②(b)★炭素85 % だけを使う。水素を足すと(4)。
③(b) 1日=×24。忘れると桁が外れる。
④44/12 倍。燃えると重くなるので44が分子。
💡 覚え方
「割って、割って、掛けて、掛ける」——効率で割り、発熱量で割り、炭素比率を掛け、44/12 を掛ける。この順序を覚えておけば迷いません。
同じ型の計算が令和5年度上期 B問題15(火力:石炭火力の発電端効率とCO₂)、平成26年度 B問題17(火力:石炭火力の燃料重量とCO₂)にあります。
重油と石炭の違い
本問は重油——石炭の問題と数値がどう違うかを見ておきましょう。
| 項目 | ★重油 | 石炭 |
| 発熱量 | ★44,000 kJ/kg | 25,000〜34,000 kJ/kg |
| ★炭素 | ★85 % | 70 % 前後 |
| ★水素 | ★15 % | 5 % 前後 |
| 灰分 | ★ほぼなし | 25 % 前後 |
重油は灰分がほとんどありません——炭素と水素で100 % になるのが特徴です。
水素の割合が石炭の3倍——そのぶん同じ熱量あたりの CO₂ が少ないことになります。
発熱量も高い——だから同じ出力なら燃料の重量は少なくて済むのです。
灰の処理が要らない利点
石炭火力には集じん装置と灰処理設備が必要です——重油ならほとんど不要になります。
微粉炭機も要らない——だから所内率も低く抑えられることになります。
そのかわり燃料費は高い——だから近年はピーク用に限られているのです。
計算の各段階を確かめる
5段階のどこで向きを間違えやすいかを整理します。
| 段階 | 操作 | 結果は | 間違えると |
| ★①出力÷効率 | ★割る | ★大きくなる | ★掛けると小さくなり(2)へ |
| ②×3600 | 掛ける | 大きくなる | 桁が3つ以上ずれる |
| ③÷発熱量 | 割る | 小さくなる | 桁が外れる |
| ★④×炭素比率 | ★掛ける | ★小さくなる | ★水素も足すと(4)へ |
| ★⑤×44/12 | ★掛ける | ★大きくなる | ★逆にすると1/3以下に |
①だけが割り算で「大きくなる」段階——ここを掛け算にすると、以降がすべてずれます。
⑤は「燃えると重くなる」——44が分子だと覚えておけば迷いません。
重油200 t/h という規模
★175万トン
年間175万トンの重油——大型タンカー10隻ぶん以上になります。
だから発電所は港のそばに建てられる——燃料の受け入れが立地を決めているのです。
この1問で押さえること
(a)は出力1000 MW を効率0.41で割り、3600を掛け、発熱量で割る——約200 t/h です。
(b)は1日ぶん4,800 t のうち炭素85 % を取り出し、44/12 倍——約15.0×10³ t になります。
水素15 % は H₂O になるので CO₂ には無関係——足すと17.6×10³ t となり選択肢(4)に誘導されます。
重油と石炭の CO₂ を比べる
★重油の1.3倍
同じ熱量を得るのに、石炭は1.3倍の炭素を燃やします——そのぶん CO₂ も多いことになります。
炭素の割合が高く、発熱量が低い——2つが重なって差が生まれるのです。
まとめ
| (a)1時間の熱量 | 1000×10³kW·h×3600=3.6×10⁹kJ/h |
| (a)重油消費量 | B=3.6×10⁹/(0.41×44000)≒2.0×10⁵kg/h=200t/h→(4) |
| (b)1日の重油 | 200×24=4800t |
| (b)炭素 | 4800×0.85=4080t(水素15%はCO₂を出さない) |
| (b)CO₂ | 4080×44/12≒14960t≒15.0×10³t→(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・重油専焼火力の発電端効率と二酸化炭素発生量(火力2・同型):【電力】令和7年度下期 B問題15
・この年度の問題を通しで解く:電験3種 令和6年度下期 問題一覧(全4科目)

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